iDeCoの掛金の上限額はいくら?拠出額を決めるときの注意点とは
2024/07/26最終更新
iDeCoに興味はあるものの、掛金の上限額がわからなくて拠出額をいくらにするか迷っている方もいるのではないでしょうか。
iDeCoの上限額は職種によって異なるため、ご自身の上限額を確認したうえで生活状況なども考慮し、総合的に拠出額を決めることが大切です。
今回は、iDeCoの掛金の上限額や2024年12月の制度改正による掛金拠出限度額の引上げ、掛金の額を決定するうえで押さえておきたいポイントを解説します。これからiDeCoをはじめる方や、既にiDeCoを運用中の方は、ぜひ参考にしてください。
- 私が書きました
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- 主なキャリア
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生命保険会社にて15年勤務したあと、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。
- ※りそなグループが監修しています
iDeCoの掛金の上限額
iDeCo(イデコ)は、自身で拠出した掛金を自ら運用して積み立てる仕組みの私的年金制度です。
原則は60歳以降に老齢給付金を受け取ることができ、一定の要件を満たす場合は、65歳まで拠出ができます。厚生年金や国民年金を補完する老後資金の準備方法として、拠出時(※課税所得のある方のみ)・運用時・受取り時において税制面で優遇されます。
iDeCoでは、毎月拠出できる掛金額に上限があります。上限となる金額は、個人の属性によって異なるので、下表にまとめました。まずは、ご自身がどこに属するかを確かめ、掛金の上限を把握しておきましょう。(以下は2024年7月現在の制度内容に基づくものです。)
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国民年金の加入状況 | 具体例 | 掛金の拠出額の上限 |
---|---|---|
第1号被保険者 | 自営業者等 | 月額6.8万円 (年額81.6万円) |
第2号被保険者 | 企業年金に加入していない会社員※1 | 月額2.3万円 (年額27.6万円) |
企業型DCのみに加入している会社員※2 | 月額2.0万円 (年額24万円) |
|
上記以外の会社員※2 | 月額1.2万円 (年額14.4万円) |
|
公務員 | 月額1.2万円 (年額14.4万円) |
|
第3号被保険者 | 専業主婦(夫)など | 月額2.3万円 (年額27.6万円) |
任意加入被保険者 | 60歳までに老齢基礎年金の受給資格を満たしていない場合などで60歳以降も国民年金に加入している方など | 月額6.8万円 (年額81.6万円) |
- ※1企業年金には、企業型確定拠出年金(企業型DC)、確定給付企業年金(DB)、厚生年金基金、石炭鉱業年金基金、私立学校教職員共済があります。
- ※2企業型DCのみに加入している人は「月額5.5万円―月の企業型DCの事業主掛金」(月額2万円が上限)まで、企業型DCとDB等の他制度に加入している人は「月額2.75万円―各月の企業型DCの事業主掛金」(月額1.2万円が上限)まで、iDeCoの掛金を拠出できます。2024年12月からiDeCoの掛金上限額は、「月額5.5万円―(各月の企業型DCの事業主掛金+DB 等の他制度掛金相当額)」(月額2万円が上限)に統一されます。制度の加入状況により、iDeCoの拠出限度額が変動する可能性があります。
- 加入条件と掛金の上限額について、詳しくはこちら
iDeCoの上限額は
職業によって異なる
iDeCoの掛金の下限額は月額5,000円です。少額から手軽にはじめられることは、iDeCoのメリットの一つといえます。
一方で上限額は、職業や他に加入している年金制度などによって異なるため、以下で職業別に詳しく説明します。
自営業者や個人事業主の上限額
自営業者や個人事業主などの第1号被保険者の場合、iDeCoの拠出限度額は月額6.8万円(年額81.6万円)です。これはiDeCoの月額掛金のほかに、国民年金基金や国民年金付加保険料を合わせての上限金額となります。
自営業者や個人事業主は、会社員のように厚生年金や退職金が用意されていません。そのため、老後資金対策に利用できるように、他の職業に比べて上限額が高めに設定されています。
会社員の上限額
会社員は、国民年金の第2号被保険者に該当します。iDeCoでは、企業型DC(企業型確定拠出年金)やDB(確定給付企業年金)など、企業年金の加入状況によって拠出限度額が月額1.2万円~2.3万円と変わります。
なお、転職や離職時には、それまで加入していた企業年金の運用資産をiDeCoに移換することも可能です。ライフスタイルの変化にも柔軟な対応ができることは、老後資金を準備するうえで大きなメリットの一つといえます。
公務員の上限額
公務員も国民年金の第2号被保険者に該当し、iDeCoの拠出限度額は月額1.2万円(年額14.4万円)です。
専業主婦(夫)の上限額
国民年金の第3号被保険者である専業主婦(夫)の場合、iDeCoの拠出限度額は月額2.3万円(年額27.6万円)です。
ただし「ご自身の収入がない」「所得税がかからないほど収入が少ない」という場合は、掛金が所得控除になるメリットを享受できません。
ですが、国民年金にプラスして、運用益非課税で年金資産を準備できることから、現在10万人を超える専業主婦(夫)の方がiDeCoにご加入されています。
2024年12月の
制度改正でiDeCoの
上限額はどう変わる?
ここまで、職業別にiDeCoの拠出限度額を紹介してきましたが、制度改正によって一部加入者の掛金拠出限度額が2024年12月から変更になります。
引上げの対象となるのは、企業型DCやDBに加入している会社員および公務員です。現在、企業型DCやDB等の他制度に加入している場合、iDeCoに拠出できる金額は以下のように算出されています。
- 企業型DCのみに加入している場合:月額5.5万円-各月の企業型DCの事業主掛金額(iDeCoの拠出限度額は2万円)
- 企業型DCとDB等の他制度に加入している場合:月額2.75万円-各月の企業型DCの事業主掛金額(iDeCoの拠出限度額は1.2万円)
これが2024年12月からは、企業年金に加入する会社員や公務員のiDeCoの拠出限度額(月額)が一律で以下のように算出されます。
月額5.5万円−(各月の企業型DCの事業主掛金額+DB等の他制度掛金相当額)
※月額2万円を上限とする。
これにより、DB等の他制度に加入する第2号被保険者がiDeCoを併用する場合は、iDeCoの拠出限度額が1.2万円から最大2万円に引上げられます。
制度改正により限度額が引上げるようになったことには、iDeCo加入対象者の拡大が関係しています。iDeCoは過去にも何度か改正されており、例えば2017年1月からは公務員や専業主婦(夫)などが、2022年10月からは企業型DCに加入する会社員が企業型規約の内容に関係なく加入できるようになりました。
そして、iDeCoの加入対象者が拡大したことにより、企業型DCやDB等の他年金制度に加入している会社員等のあいだの公平を図る必要性も高まったため、拠出限度額のルールが見直されることになりました。
企業型DC・iDeCoの
掛金合計額が上限を
超えたらどうなる?
iDeCoには掛金の上限額があり、企業型DCにも加入している場合には、2つの制度を合算した掛金の上限額も決められています。
iDeCoと企業型DCの掛金の合計額が合算の上限額を超える場合、iDeCoの掛金額が自動減額されます。自動減額の結果、iDeCoの掛金拠出可能額が5,000円未満となる方は掛金が停止されてしまうので注意が必要です。企業型DCとiDeCo、それぞれの掛金額をきちんと確認するようにしましょう。
企業型DCとの合算額超過によるiDeCoの掛金停止について詳しくはこちら
iDeCoの掛金の設定方法
iDeCo掛金の設定方法と変更方法を解説します。
掛金の設定方法は
月払いと年払いの2通り
iDeCoの掛金は月々定額の拠出が基本ですが、年1回以上、任意の月にまとめての拠出も可能です(企業型DCに加入している場合は、毎月定額のみとなります)。収入に余裕がある月にまとめて掛金額を拠出したい場合などには、年単位での拠出を活用してみましょう。
ただし、年単位での拠出をしたい場合は、書類の提出などの手続きが必要です。拠出期間や限度額にも詳細なルールがあるため、年払いを選択する前に確認しておきましょう。詳しくはこちら
また2024年12月の制度改正に伴い、年単位での拠出が可能な方は第1号被保険者、企業型DC、DB等の他制度のいずれにも加入していない国民年金第2号被保険者、国民年金第3号被保険者の3区分となります。併せてご確認ください。
運用途中に掛金を
変更するには?
掛金額を増やして運用の幅を広げたり、掛金額を減らして生活費を確保したりするなど、運用途中で掛金を変更したい場合もあるかもしれません。そのような場合にも対応できるよう、掛金の変更方法を知っておきましょう。
設定した掛金額は1年に1回変更できます。掛金を変更したい場合は、「加入者掛金額変更届」を運営管理機関に提出してください。変更のたびに書類提出が必要となるため、変更内容は慎重に検討しましょう。
掛金額の変更手続きについて詳しくはこちら
掛金の拠出を
休止することも可能
掛金拠出の停止には回数制限がないため、必要な手続きを行うことで可能です。生活状況が急に変化して掛金を拠出できなくなった場合は、拠出をストップすることも検討しましょう。ただし、引き続き口座管理手数料は必要となるほか、拠出停止期間中は退職所得控除年数の算出の計算に含まれないことにはご留意ください。
掛金拠出の再開についても、加入手続きを行えばいつでもできるため、「余裕ができたら再開する」といった柔軟な対応も可能です。安心してiDeCoに取り組みましょう。iDeCoは、老後の資産形成のための制度です。長期的な目線を持ち、運用方針等に合わせて柔軟に対応してください。
iDeCoの掛金の額を
決める際の注意点
ご自身の掛金の上限を把握したら、実際に拠出する掛金の額を決めましょう。このときの注意点を説明します。
原則60歳までは
資産を引出せない
iDeCoは、老後資金の準備が目的の制度です。そのため、60歳までは原則として資産を引出すことができません。家庭の収支バランスを考慮して、ある程度余裕のある状態で取り組める掛金額を検討するようにしましょう。
- お子さんが大学などに進学して、教育費がかかる。
- 住宅ローンの支払いが大きい。
- 家族が病気になって介護が必要になった。
など、一度に多額の支出が生じる可能性もあります。これらの可能性に備え、ある程度自由になる資金を作っておくのも大事です。
手数料が必要となる
iDeCoの各種手数料は、加入者負担です。各種手数料は、掛金や運用資産から差し引かれ、掛金額が少ない場合は十分な資産形成が行えない可能性もあります。このような点を考慮して、掛金を決めることが大切です。
必要となる主な手数料は、以下のとおりです。
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手数料 | 支払い先 | 金額 |
---|---|---|
加入・移換時手数料 | 国民年金基金連合会 | 2,829円(初回のみ) |
口座管理手数料 | 国民年金基金連合会 | 納付1回あたり105円(月額) |
事務委託先金融機関 | 66円(月額) | |
運営管理機関手数料 | 運営管理機関 | 金融機関によって異なる |
なお、上記のうち運営管理機関手数料については発生しない金融機関もあります。りそなiDeCo(運営管理機関手数料無料型)でも、残高や期間に関わらず運用管理手数料はずっと無料です。
毎月のコストを抑えたい場合には、運営管理機関手数料を無料にしている金融機関の選択をおすすめします。
iDeCoを活用した
資産運用の
3つのポイント
繰り返しになりますが、iDeCoは60歳まで掛金を引出せません。そのため、60歳になる前に必要なお金を得るための資産運用としては向いていないでしょう。このことも踏まえたうえで、掛金額も含めたiDeCoの資産運用のポイントを考えてみました。次の3点を意識してください。
- 1.iDeCoを使う場合、ご自身の立場で拠出できる上限額を知り、現在の状況ならいくらまで無理なく拠出できるかを考えましょう。
- 2.掛金額の見直しも含め、定期的に運用プランの見直しを行いましょう。
- 3.ご自身、ご家族の必要に応じて、NISAなど、短期的な資産運用に向いている方法も組み合わせて資産運用に取り組みましょう。
また、iDeCoを含めた資産運用を行う際は、ご自身で情報収集をすることが大切ですが、金融機関の窓口・ファイナンシャルプランナーなどの専門家にアドバイスを仰ぐのも有効です。気軽に相談してみましょう。
まとめ
iDeCoの掛金には下限額と上限額があり、下限額は職業に関わらず一定ですが、上限額は職業等によって変わります。さらに、制度改正によって2024年12月からは、DB等の他制度とiDeCoを併用する場合のiDeCo掛金の上限額が引上げられます。上限額を把握し、上手に制度を活用して老後資産形成を行いましょう。
iDeCoで拠出した掛金は原則として60歳になるまで引出せません。掛金額を設定する際は、ご自身の生活に支障が出ない範囲におさめるようにし、生活状況に合わせて掛金額を変更することもご検討ください。
iDeCoでは、生活状況の変化にともない拠出を停止した場合でも、余裕ができたら再開するといった柔軟な対応が可能です。これにより、安心してiDeCoに取り組めるでしょう。
りそなでは、iDeCoのご加入時はもちろん、ご加入後の相談・お悩みもしっかりサポートします。ぜひ、りそなでのiDeCoを検討してみてください。
りそなでのiDeCo加入は、ご自宅から好きな時に行えるオンライン申込みが便利です。また、りそなのサイト内にはiDeCoの基礎や運用に関するコラムも充実していますので、コラムも参考にしながら運用を進めてみてください。
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当記事は2024年7月26日現在の税制・関係法令などに基づき記載しております。今後、税務の取扱いなどが変わる場合もございますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。