企業型DCやiDeCo(イデコ)を中途解約するには?転職時の手続きも解説
2023/02/15最終更新
確定拠出年金は、企業型(企業型DC)も個人型(iDeCo(イデコ))も、老後資金づくりに適した制度です。しかし、原則として60歳になるまで資金を引き出すことはできません。
加入中にどうしてもまとまったお金が必要になって解約したい場合、「確定拠出年金の中途解約の条件は?」と疑問を持つ方もいらっしゃいます。あるいは企業型DCに加入しているものの転職の予定がある方は、「転職先に企業型DCがない場合はどうする?」と、気になることもあるかもしれません。
確定拠出年金の中途解約は、複数の条件を満たす必要があるため、安易には行えません。また、転職する際に移換の手続きを放置した場合は、デメリットが発生するため、期限内に移換手続きを済ませることが大切です。
この記事では、確定拠出年金の中途解約の条件や、転職先に企業型DCがない場合の対処法を解説します。併せて、企業型DCの加入資格を喪失した方が、確定拠出年金の移換手続きを放置した場合のデメリットについても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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元銀行員。若年層から高年層まで幅広い資産運用の提案を行なう。メディアを通じて、より多くのお客様に金融の知識を伝えたい気持ちが強くなり、退職を決意。
現在は、編集者として金融機関を中心にウェブコンテンツの編集・執筆業務に従事している。
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確定拠出年金の中途解約には3通りある
確定拠出年金の中途解約には、「脱退一時金」「障害給付金」「死亡一時金」を受け取る3つの方法があります。
「脱退一時金」を受け取るケース
結論から述べると、確定拠出年金は中途脱退して「脱退一時金」をもらうことが可能です。
しかし、脱退一時金が支給されるためには、一定の要件を満たす必要があります。どのような条件があるか、みてみましょう。
企業型DCの場合
まず、企業型DCの脱退要件を見てみましょう。
個人別管理資産額が1.5万円以下の場合、下記(1)~(3)全てに該当することが必要です。
- (1)企業型DC加入者、企業型DC運用指図者、iDeCo加入者及びiDeCo運用指図者でないこと
- (2)個人別管理資産の額が1.5万円以下であること
- (3)最後に企業型DCの資格を喪失した日の翌月から6ヶ月を経過していないこと
個人別管理資産額が1.5万円を超える場合、下記(1)~(7)全てに該当することが必要です。
- (1)企業型DC加入者、企業型DC運用指図者、iDeCo加入者及びiDeCo運用指図者でないこと
- (2)最後に企業型DCの資格を喪失した日の翌月から6ヶ月を経過していないこと
- (3)60歳未満であること
- (4)国民年金保険料免除者、外国籍の海外居住者等のiDeCoに加入できない者であること
- (5)日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でないこと
- (6)障害給付金の受給権者でないこと
- (7)企業型DCの加入者及びiDeCoの加入者として掛金を拠出した期間が5年以内であること
又は個人別管理資産の額が25万円以下であること
iDeCo(イデコ)の場合
次に、iDeCo(イデコ)から脱退一時金の支給を受けるためには、以下(1)~(7)の要件をすべて満たす必要があります。
- (1)60歳未満であること
- (2)企業型年金加入者でないこと
- (3)国民年金保険料免除者や外国籍海外居住者等のiDeCoに加入できない者であること
- (4)日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でないこと
- (5)通算拠出期間(※)が1ヶ月以上5年以下、または個人別管理資産額が25万円以下であること
- (6)障害給付金の受給権者でないこと
- (7)最後に企業型確定拠出年金加入者又はiDeCo加入者の資格を喪失した日から起算して2年を経過していないこと
- ※掛金を拠出していない期間は含みません。「退職一時金」や「企業年金(注)」から確定拠出年金へ移換があった場合、それらの期間も含みます。
(注)企業年金とは、「厚生年金基金」、「確定給付企業年金」および「適格退職年金」をいいます。
ただし、2016年12月までに資格喪失された方についてはこちら
〔2016年12月以前の脱退要件〕
- (1)個人型年金に加入できない方(加入資格がない方※1)が以下①~⑥の要件をすべて満たす場合
- ①60歳未満であること
- ②企業型確定拠出年金加入者でないこと
- ③掛金の通算拠出期間が3年以下(※2)または年金資産額が50万円以下であること
- ④確定拠出年金の障害給付金の受給権者でないこと
- ⑤企業型または個人型の確定拠出年金の加入者資格を、最後に喪失した日から2年を経過していないこと
- ⑥企業型確定拠出年金の加入者資格を喪失したときに.脱退一時金の支給を受けていないこと
- (2)個人型年金に加入できる方(加入資格がある方)で、以下の①~⑤の要件をすぺて満たす場合
- ①継続個人型年金運用指図者(企業型年金加入者の資格喪失後、企業型年金運用指図者又は個人型年金加入者となることなく個人型年金運用指図者となった者(※3)で、その申出をした日から起算して2年経過している者)であること(但し、申出時から継続して個人型年金の加入資格のある者に限る)
- ②確定拠出年金の障害給付金の受給権者ではないこと
- ③通算拠出期間が3年以下(※2)、または年金資産額が25万円以下であること
- ④継続個人型年金運用指図者となった日から2年以内であること(※4)
- ⑤企業型確定拠出年金の加入者資格を喪失したときに.脱退一時金の支給を受けていないこと
- ※1公務員、専業主婦(主夫)、企業年金制度のある会社員など。
- ※2掛金がない期間は含みません。「退職一時金」や「企業年金(注)」から確定拠出年金へ移換があった場合、それらの期間も含みます。
- ※3施行日(2014年1月1日)以前に運用指図者となった場合も対象となります。
- ※4施行日において既に継続個人型年金運用指図者である者の場合は、施行日から2年以内。
(注)企業年金とは、「厚生年金基金」、「確定給付企業年金」および「適格退職年金」をいいます。
上記を見ると、現役世代で健康な人の場合、脱退一時金を受け取ることのできる人はほとんどいないことが分かるでしょう。
iDeCoの加入資格について詳しくはりそな銀行「個人型確定拠出年金制度について」をご参照ください。
なお、保険商品で運用している場合は、中途解約となる際に元本割れする可能性もあることに注意しましょう。
「障害給付金」を受け取るケース
障害給付金は、加入者または、加入者であった方が75歳に達する前日までに「国民年金法第30条第2項に規定する障害等級に該当する程度の状態である場合」に請求できます。
受給権者になる条件は、以下のとおりです。
- 1.障害基礎年金の受給者(1級および2級の者に限る)
- 2.身体障害者手帳(1級~3級までの者に限る)の交付を受けていること
- 3.療育手帳(重度の者に限る)の交付を受けていること
- 4.精神障害者保健福祉手帳(1級および2級の者に限る)の交付を受けていること
障害給付金の受取方法には以下3つの方法があり、税金はかかりません。
- 年金受取
- 一時金受取
- 年金受取と一時金受取の併用
「死亡一時金」を受け取るケース
死亡一時金は、加入者または加入者であった方が死亡した際、遺族が受け取る給付金です。死亡一時金の手続きでは、「加入者等死亡届」などを金融機関へ提出します。また、記録関連運営管理機関に「死亡一時金裁定請求書」などの提出も必要です。
遺族の受取人となる親族は、以下のとおり優先順位が定められています。
- 第1順位:指定受取人
- 第2順位:配偶者(死亡の当時、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)
- 第3順位:子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順で、死亡した人の収入によって生計を維持していた人
- 第4順位:第3順位の人以外で、死亡した人の収入によって生計を維持していた親族
- 第5順位:子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順で、第3順位の人に該当しない人
遺族が受け取る死亡一時金の金額は、加入者の保有資産額や中途解約のタイミングによって異なります。受取方法は一時金のみに限られ、死亡一時金は「みなし相続財産」となるため、相続税が課されます。
企業型DCの「ある会社」から「ない会社」へ転職したら?
次に、企業型DCに加入していたものの、転職先に企業型DCがない人は、どうすればよいのでしょうか。
この場合は、6か月以内にiDeCo(イデコ)の口座を開設して、企業型DCの資産を移しましょう。iDeCo(イデコ)の加入者になったり、運用指図者になったりすることで、将来の年金額を増やすことができます。※
加入者とは掛金を拠出する人を指し、運用指図者はiDeCo(イデコ)への拠出はしないものの、運用の指図だけを行う人のことです。
iDeCo(イデコ)に加入する際は、自分で金融機関(運営管理機関)を選択します。
企業型DCに加入していた人の中には、以前と同じ金融機関を選ばなければならないのでは?と思っている人もいるようです。
しかし実は、どこの金融機関を選ぶのも加入者の自由です。
金融機関によって、取り扱う運用商品や手数料、サービスは大きく異なります。
なお、企業型DCからiDeCo(イデコ)への移換手続きでは、金融機関に「個人別管理資産移換依頼書」や「個人型年金加入申出書」などの提出が必要です。また、移換手続きが完了するまでには、およそ1ヵ月から2ヵ月の時間がかかります。
りそな銀行のiDeCoについてはこちら- ※転職先の確定給付企業年金(DB)に移換できる場合もあります。転職先の担当部署にご確認ください。
また、2022年5月1日以降に企業型DCの加入資格を喪失した場合、通算企業年金(企業年金連合会が退職者等向けに運用する年金の1つ)に移換することもできます。申出方法については、企業年⾦連合会にご確認ください。
企業型DCの手続きを放置した場合のデメリットは?
退職や転職などをしたにもかかわらず、6カ月以内にiDeCo(イデコ)へ資産を移換せず、脱退一時金も受け取らないで手続きを放置した場合はどうなるのでしょうか。
その場合、運用していた資産は現金化されて国民年金基金連合会に自動的に移換されてしまいます。これを「自動移換」といいます。
運用指図ができず資産を増やせなくなる
国民年金基金連合会に自動移換されると、年金原資は現金化され、拠出や運用指図ができなくなるため、資産を増やせなくなります。
手数料が差し引かれる
自動移換されると、以下のような手数料が発生します。
- 自動移換されるときの手数料:4,348円(特定運営管理機関3,300円・国民年金基金連合会1,048円)
- 自動移換中に毎月支払う管理手数料(自動移換4ヵ月後から):52円(特定運営管理機関)
- 自動移換後に企業型DCに資産を移換する際の手数料: 1,100円(特定運営管理機関)
- 自動移換後にiDeCo(イデコ)に資産を移換する際の手数料:3,929円(特定運営管理期間1,100円・国民年金基金連合会2,829円)
など
受取時期が遅くなる可能性がある
自動移換の状態は、確定拠出年金の通算加入者等期間としてカウントされません。通算加入者等期間が10年に満たないと、受け取り開始時期が60歳より遅くなる可能性があります。
いずれにしても、給付の請求をするためには、iDeCo(イデコ)に加入して口座を開設し、国民年金基金連合会に資産移換の手続きをしなければなりません。
税制優遇額が低くなる
確定拠出年金を年金受取にすると雑所得として「公的年金等控除」、一時金受取の場合は「退職所得控除」が適用されます。国民年金基金連合会へ自動移換されると、その間「退職所得控除」の計算に勤続年数が算入されないため、税制優遇の額が減ってしまいます。
iDeCo(イデコ)の金融機関を変更したくなったらどうする?
iDeCo(イデコ)では、一度選んだ金融機関はできれば変更しない方がよいのですが、場合によっては変更したいと思うこともあるでしょう。そうした場合、金融機関の変更は可能です。
変更の際は、変更先の新しい金融機関に「加入者等運営管理機関変更届」(様式K-004号)を提出します。加入中(変更前)の金融機関への連絡は必要ありません。
ただし、金融機関を変更するときは、運用中の資産が一度現金化されます。
投資信託などの値動きのある商品や保険などの商品で運用していた場合は、中途解約により元本割れする可能性もあります。
また、移換には数か月程度時間がかかります。金融機関によっては、他の金融機関に移換するときに手数料を徴収するところもありますので、頻繁な変更は好ましくないことを覚えておきましょう。
iDeCo(イデコ)は無理のない範囲で続けよう
iDeCo(イデコ)は、無理のない範囲で継続させることが重要です。iDeCo(イデコ)に関する知っておきたいポイントを2つ解説します。
掛金を減額するには
iDeCo(イデコ)の掛金の変更が可能なのは、1年に1回です。掛金を変更する場合は、金融機関に「加入者掛金額変更届」を提出します。掛金の下限は5,000円で、1,000円単位で変更可能です。
拠出を停止するには
iDeCo(イデコ)の拠出を停止する場合は、金融機関に「加入者資格喪失届」を提出します。再開する場合は、再度金融機関に書類の提出が必要です。
まとめ
確定拠出年金の中途解約は厳格な要件をクリアする必要があるほか、金融機関の変更には手間と時間がかかります。
できれば、一度加入したら、最後まで長く続けるのが最も良い方法です。
また、確定拠出年金では、管理手数料や信託報酬が毎月差し引かれますので、資金を追加投入せず放置しておくと、どんどん資産が目減りしてしまいます。
企業型DCからiDeCo(イデコ)への資産移換は、すみやかに行うようにしましょう。
最後に、掛金の払込が難しくなったら、掛金の減額や一時停止もできます。無理のない範囲で確定拠出年金を続けましょう。
りそなでは、転職時の企業型DCからiDeCo(イデコ)への移換手続き、iDeCo(イデコ)の加入方法や商品選択、加入後のお悩みなどに関するご相談を、万全なサポート体制で対応しています。
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- ※当記事は2023年2月15日現在の税制・関係法令などに基づき記載しております。今後、税務の取扱いなどが変わる場合もございますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。