iDeCo(イデコ)の所得控除の効果はどのくらい?税制優遇金額のシミュレーション
2023/09/07最終更新
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、老後の資産形成ができるだけでなく、税制優遇の手厚い魅力的な制度です。iDeCo(イデコ)の加入を迷っている方のなかには、「どれくらいの税制優遇が受けられる?」といった疑問を持つ方もいるかもしれません。
iDeCo(イデコ)は、年間の掛金や課税所得が多いほど税制面におけるメリットが大きくなります。ただし、掛金には一定の上限があり、また、自身の状況に応じて軽減税額は異なります。
今回は、iDeCo(イデコ)で受けられる税制優遇の具体的な内容、課税所得金額や職業(国民年金の被保険者区分)等による負担額の軽減について解説します。
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元銀行員。若年層から高年層まで幅広い資産運用の提案を行なう。メディアを通じて、より多くのお客様に金融の知識を伝えたい気持ちが強くなり、退職を決意。
現在は、編集者として金融機関を中心にウェブコンテンツの編集・執筆業務に従事している。
- ※りそなグループが監修しています
iDeCo(イデコ)の仕組みをおさらい
iDeCo(イデコ)は、国民年金や厚生年金とは別に、老後資金に備えることを目的とする任意の私的年金制度の一つです。毎月の掛金を自分自身で運用しながら積立てていき、原則60歳以降に受取る仕組みとなっています。
毎月いくら積立てるか、どのように運用するか、どのように受取るか、すべて自分自身で決めることができる制度です。運用する金融商品には、投資信託や定期預金などがありますが、加入する運営管理機関(金融機関等)によって異なります。
【課税所得別】iDeCo(イデコ)の掛金所得控除によって軽減される税負担額
iDeCo(イデコ)に加入して掛金を支払うと、どれくらい所得税や住民税の負担が軽減されるのかを見る前に、税金の仕組みを理解しておきましょう。
税金を理解するうえで重要なのが「累進課税制度」です。累進課税とは、所得が多い人ほど税金が重くなる仕組みで、所得税の税率は、一部例外を除くと、5%から45%の7段階に区分されています。
以下の表は、iDeCo(イデコ)に加入した場合の所得税・住民税負担軽減額となります。
【表1】iDeCo(イデコ)に加入した場合の所得税・住民税負担軽減額
横スクロールできます。
課税所得 | 税率 | 年間掛金 | |||
---|---|---|---|---|---|
所得税 | 住民税 | 14万4,000円の場合 | 27万6,000円の場合 | 81万6,000円の場合 | |
195万円未満 | 5% | 10% | 2万1,600円 | 4万1,400円 | 12万2,400円 |
195万円以上~ 330万円未満 |
10% | 2万8,800円 | 5万5,200円 | 16万3,200円 | |
330万円以上~ 695万円未満 |
20% | 4万3,200円 | 8万2,800円 | 24万4,800円 | |
695万円以上~ 900万円未満 |
23% | 4万7,520円 | 9万1,080円 | 26万9,280円 | |
900万円以上~ 1,800万円未満 |
33% | 6万1,920円 | 11万8,680円 | 35万880円 | |
1,800万円以上~ 4,000万円未満 |
40% | 7万2,000円 | 13万8,000円 | 40万8,000円 | |
4,000万円以上 | 45% | 7万9,200円 | 15万1,800円 | 44万8,800円 |
iDeCoの掛金額は、職業(国民年金の被保険者区分)等により上限が異なりますが、表からも明らかなように、課税所得が多い人ほど、iDeCo(イデコ)の所得控除のメリットを享受できることが分かります。
- ※所得税・住民税の軽減効果は、ご本人の課税所得・掛金額により異なります。第3号被保険者など課税所得がゼロの方の場合、所得税・住民税の軽減効果はありませんので、ご注意ください。
【職業別】iDeCo(イデコ)の所得控除で軽減される税額
iDeCo(イデコ)の掛金は、職業(国民年金の被保険者区分)、および企業年金の加入の有無で掛金の上限額が定められています。
自営業者の掛金上限が高く設定されていますが、その理由は、会社員や公務員のように厚生年金保険の加入がない自営業者は、自分で老後の資金形成をする必要性がより高いからです。
具体的な例で見てみましょう。課税所得が同じ300万円の会社員(Aさん)と自営業者(Bさん)、公務員(Cさん)とで比べてみました。
【表2】課税所得が同じ会社員・自営業者・公務員の所得税・住民税負担軽減額の比較
横スクロールできます。
会社員のAさん | 自営業のBさん | 公務員のCさん | |
---|---|---|---|
支払った掛金 (年間の支払い額) |
月2万3,000円 (27万6,000円) |
月6万8,000円 (81万6,000円) |
月1万2,000円 (14万4,000円) |
1年間の税負担軽減額 | 5万5,200円 | 16万3,200円 | 2万8,800円 |
10年間の税負担軽減額 | 55万2,000円 | 163万2,000円 | 28万8,000円 |
20年間の税負担軽減額 | 110万4,000円 | 326万4,000円 | 57万6,000円 |
- ※課税所得300万円、所得税率10%、住民税率10%として算出
この表では、年間の拠出額を、Aさんは企業年金のないサラリーマンの上限額である27万6,000円、Bさんは自営業者の上限額である81万6,000円、Cさんは公務員の上限額である14万4,000円としています(手数料等は考慮していません)。
課税所得が300万円の場合、適用される税率は20%(所得税率10%・住民税率10%)です。そのため、Aさんの税負担軽減額は年間5万5,200円(=27万6,000円×20%)、Bさんの税負担軽減額は年間16万3,200円(=81万6,000円×20%)、Cさんの税負担軽減額は年間2万8,800円(=14万4,000円×20%)となります。課税所得が同じであれば、年間の掛金額が多ければ多いほど、税制優遇も大きくなります。
iDeCo(イデコ)で受けられる3つの税制優遇
iDeCoには、以下のような3つの税制メリットがあります。
- (1)掛金は全額所得控除となり、所得税と住民税の負担が軽減される
- (2)利息・配当・売却益などの運用益は全額非課税
- (3)年金または一時金を受取るときも各種控除が適用される
(1)の掛金にかかる所得控除のメリットについては前章でお伝えしましたので、ここからは(2)と(3)の税制メリットについて詳しく解説します。
運用益は非課税
金融商品の運用で利益が出ると、税金が20.315%課せられますが、iDeCo(イデコ)の運用益には税金がかかりません。
積み立てたお金を受け取るときも控除が適用される
iDeCo(イデコ)で拠出した資金は、「年金」または「一時金」で受け取ります。運営管理機関によっては、併用可能です。
年金で受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」が適用され、どちらも一定額までは非課税で受け取れます。
iDeCo(イデコ)で所得控除を受けるための手続き
次に、iDeCo(イデコ)で所得控除を受けるための手続方法を、職業別に解説します。
会社員や公務員の場合
会社員や公務員は、一般的に年末調整で申告します。申告手順を見てみましょう。
- 1.国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が郵送される
- 2.勤務先で配布される「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入する
- 3.上記2つの書類を勤務先に提出する
勤務先によって提出期限や手続き方法が異なるため、確認しておきましょう。
小規模企業共済等掛金払込証明書」の到着が遅れ、年末調整に間に合わなかった方は、自営業の方と同じく確定申告で手続きします。
自営業者の場合
自営業者は、確定申告で手続きをします。
- 1.国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が郵送される
- 2.「小規模企業共済等掛金払込証明書」に記載されている払込金額を確定申告書に記入する
- 3.「小規模企業共済等掛金払込証明書」を確定申告書に添付して税務署に提出する
iDeCo(イデコ)で控除されたお金はどのように戻ってくる?
iDeCo(イデコ)で所得控除を受けると、所得税や住民税を軽減できます。
所得税は現金で還付される
年末調整した場合の所得税の受取方法は、勤務先によって異なります。還付時期の目安は、12月中または翌年の1月中です。確定申告した場合は、4月~5月頃を目安に、確定申告書に記入した指定口座に入金されます。
住民税は翌年分に反映される
住民税は現金で還付されず、翌年の住民税に反映されます。
いくら軽減されたかは、年末調整した場合は「住民税決定通知書」で確認可能です。確定申告した場合は「納付書」や「納税通知書」で確認後、記載されている期限までに住民税を納付します。
専業主婦(夫)には掛金については税制優遇なし!?ただし運用時はおトク
iDeCo(イデコ)は、専業主婦(夫)も加入できます。
しかし、専業主婦(夫)でもともと所得税や住民税を支払っていない場合には、iDeCo(イデコ)に掛金を拠出しても、所得控除の効果はゼロです。
それでも、運用益が非課税というメリットがあります。
また、専業主婦(夫)には退職金がないので、自分名義の老後資産ができることには大きな意義があります。
iDeCo(イデコ)は自分で老後に備える優れた仕組み
iDeCo(イデコ)には、「掛金・運用益・受取金」の3つに対する税制優遇があります。
掛金は、職業(国民年金の被保険者区分)、および会社での企業年金の加入の有無によって異なり、掛金が大きいほど税制優遇も大きくなります。
iDeCo(イデコ)の掛金には、所得控除の「小規模企業共済等掛金控除」が適用され、所得税や住民税が軽減されます。所得控除を受ける際の手続きは、会社員や公務員、自営業者によって異なるため、確認しましょう。
また、どれくらい税制優遇が受けられるのかを知りたい方は、下記のシミュレーションを活用してみてください。
- ※当記事は2023年9月7日現在の税制・関係法令などに基づき記載しております。今後、税務の取り扱いなどが変わる場合もございますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。