定年後、安心して暮らせる老後の住まいとは?持ち家・賃貸、戸建て・マンションのメリット・デメリット
定年後は趣味に生きるなど、老後のライフスタイルに合った住まいを考えたいところです。「子どもの家と近いマンションに住み替えたい」「老後のためにリフォームしたいけど費用面が不安」「子供から家はいらないと言われているがどう処分するのがいいか」といったお悩みや、住みかえるとしても「持ち家と賃貸ならどちらが良いのか」「戸建てとマンションならどちらが良いのか」と迷っている方も多いのではないでしょうか。
老後の住まいの選び方や、定年後の住宅ローンで気を付けたいポイント、最近よく耳にする「リバースモーゲージ」についても解説します。ぜひ、セカンドライフを安心して過ごせる理想の住まいを選ぶ際の参考にしてください。
- 私が書きました
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- 主なキャリア
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銀行に20年以上勤務し、融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。在籍中に1級ファイナンシャル・プランニング技能士及び特定社会保険労務士を取得し、退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は労働基準監督署で企業の労務相談や個人の労働相談を受けつつ、セミナー講師など幅広く活動中。
- ※りそなグループが監修しています
老後・定年後は持ち家と賃貸どちらがよいのか?
「持ち家」「賃貸」は、どちらもメリットとデメリットがあります。「夫婦のみで生活するのか」「子どもと同居しているのか」によっても考え方が変わるため、それぞれのメリット・デメリットについてしっかりと把握しておくことが重要です。
「持ち家」を老後の住まいにするメリット・デメリット
まずは、老後の住まいとして持ち家を選択する場合のメリット・デメリットから見ていきましょう。
持ち家のメリット |
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持ち家は、住み慣れた家で安心して暮らせることが一番のメリットです。リフォームをして趣味の部屋を作ったり、趣味や経験を活かして事業をおこなったりして第2の人生を歩む方もたくさんいます。住宅ローンの返済が終わっていれば、いざというときに家を担保にしてお金を借りることも検討できるでしょう。
また、持ち家を選ぶ人のなかには、「子どもに資産を残したい」という気持ちから購入を決める方もいるようです。子どもと同居するなら二世帯住宅の建築、子どもの家に移るなら賃貸物件として貸出しするなど資産形成にもつながります。
持ち家のデメリット |
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持ち家は、将来建物の経年劣化に伴い維持修繕の費用が必要です。一般的に、水回りに関する設備の寿命は15~25年、屋根や外壁の防水などは10~20年※でメンテナンスが必要になります。
- ※国土交通省「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」
また、家賃はかかりませんが毎年固定資産税の支払いがあり、住宅ローンの返済が残っていると金銭面での負担は大きくなるでしょう。不動産価格の下落によるリスクがあることや、相続税対策が必要なことも忘れてはいけません。
「賃貸」を老後の住まいにするメリット・デメリット
次に、老後の住まいとして賃貸を選択する場合のメリット・デメリットを見ていきます。
賃貸のメリット |
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持ち家ではないため引越しがしやすく、仕事や家族の都合・収入状況に合わせた柔軟な対応が可能です。修繕費用やリフォーム費用など大きな工事費用の心配もなく、家賃負担はありますが毎年の固定資産税の支払いはありません。駅から近いなど立地条件がよければ、利便性の良さも加わります。
賃貸のデメリット |
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家賃を支払い続けても自分のものにはなりません。そのため、資産として何も残らないのが大きなデメリットだといえるでしょう。また、契約者が高齢になるほど借りにくくなる傾向があります。
老後・定年後は戸建てとマンションどちらが良いのか?
戸建てまたはマンションを購入して老後の住まいとする場合も、それぞれにメリットとデメリットがあります。これは、老後に「夫婦2人で生活するのか」「二世帯同居か」という状況によっても異なるでしょう。
「戸建て」を老後の住まいにするメリット・デメリット
戸建てを購入し、老後の住まいとする場合のメリット・デメリットを解説していきます。
戸建てのメリット |
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老後も、住み慣れた家に住み続けたいと考える方は多いのではないでしょうか。戸建てなら広さがあり、自由に使える傾向があるため、誰にも気兼ねなく生活することができます。
戸建てのデメリット |
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階段や段差があると老後のバリアフリー工事が必要になり、改修費用が必要です。また、部屋数が多い場合や勝手口などがある場合、一部の窓・扉の戸締りを忘れてしまう可能性が高くなるため、出かけるときや寝るときなどは特に防犯対策の必要があります。
「マンション」を老後の住まいにするメリット・デメリット
一方、マンションを老後の住まいにする場合には、次のようなメリット・デメリットがあります。
マンションのメリット |
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外壁や屋根のメンテナンスはマンションの管理会社がおこなうため気にする必要がなく、工事費用がからないことも大きなメリットです。
マンションのデメリット |
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毎年の固定資産税の支払いに加え、毎月の修繕費積立金や管理費などの費用がかかることはデメリットとなります。
老後・定年後の住宅ローンとリフォームローンで気を付けること
老後に備えて、これから戸建て・マンションを購入したり、すでに所有している持ち家の増改築をしたり、という人もいるでしょう。その際、住宅ローンやリフォームローンを利用する人が多いと思いますが、気を付けておきたい点があります。
たとえば、住宅ローンやリフォームローンが現在の収入で審査されることなどです。大手銀行や都市銀行をいくつかリサーチしたところ、一般的に返済期間は長くても住宅ローンなら35年、リフォームローンなら10~15年程度です。多くの金融機関で、住宅ローンは最終返済時の年齢は80歳前後、リフォームローンは75歳前後としています。
仮に50歳くらいで住宅ローンを組んだとすれば、80歳まで30年あります。定年後、年金のみの収入となった場合、50歳のころに組んだローンの返済が可能でしょうか。現在の貯蓄額や退職金、定年後も働き収入の見込みがあるのかをよく考えて住宅ローンを組む必要があります。老後の少なくなった収入で返済が可能かどうか、年金収入のみになった状態のことまでよく考えて計画しなければなりません。
住宅ローンを組む際の注意点
そのほかにも、住宅ローンを組む際には次のようなことに気を付けましょう。
購入後の維持費
住宅購入後には、固定資産税や都市計画税、火災保険料・地震保険料などがかかります。さらに、マンションであれば修繕積立金や管理費、駐車場代など毎月かかる費用があること、戸建てなら突発的に必要となる修繕費用なども考慮して、住宅ローンを組む際に計画する必要があります。
返済期間
年金収入で住宅ローンの返済をしていくのは現実的ではありません。そのため、退職金で繰上返済を検討する必要があります。
金利タイプ
現在の低金利のメリットを活かして変動金利を選択し、収入があるうちにできるだけ貯蓄を増やすことも方法の一つです。また、計画的な返済をするなら全期間固定金利を選択するのも良いでしょう。
なかには、住宅ローンを2口に分けて変動金利、固定金利選択型・全期間を組み合わせる金利ミックスタイプの住宅ローンが組める金融機関もあります。一部内入れや繰上完済をするタイミングもよく考え、長い目で見た返済計画を立てることが必要です。
親子リレー返済も検討
親子二世代型の住宅ローンの活用も効果的です。最終返済時年齢を子どもに合わせることで、35年の住宅ローンを組むことができます。二世帯住宅を購入する場合に、おすすめの方法です。
老後資金づくりとして注目を集める
「リバースモーゲージ型住宅ローン」とは?
近年、老後資金の不足に備える手段として「リバースモーゲージ型住宅ローン」が注目されています。
これは、「リバースモーゲージ」という融資制度の仕組みをベースとした住宅ローンですが、「リバースモーゲージ」と「リバースモーゲージ型住宅ローン」の違いがわからないという人もいることでしょう。まずは、両者の違いについて見ていきましょう。
リバースモーゲージとは
リバースモーゲージとは、自宅を担保にして住み続けながら金融機関から老後資金を借りる融資制度のことです。老後の資金を借り、死亡後に自宅を売却した代金で一括して返済をする仕組みとなり、生きている間の返済は利息のみの支払いとなります。詳しくは下記を参考にしてみてください。
リバースモーゲージ型住宅ローンとは
リバースモーゲージ型住宅ローンとは、前述の通りリバースモーゲージの仕組みがベースとなっている住宅ローンです。セカンドライフの資金が有効活用できることから、注目を集めています。
リバースモーゲージ型住宅ローンには、次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット |
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デメリット |
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「リバースモーゲージ型住宅ローン」は、いざというときのために、手元の資金を残しておきたい人や、子どもがいないなど自宅を相続させる必要がない人に向いています。「便利な地域に引越ししたい」「老後のセカンドライフを楽しみたい」など、さまざまなニーズにこたえてくれます。
50代で老後の住まいを買うときのポイントを押さえておこう
住宅ローンはおおむね20~40代に組むのが一般的ですが、50歳になってから老後を視野に入れた家を買いたいというニーズもあるでしょう。
たとえば、老後は夫婦2人で自由に生活を楽しみたいと考えている人もいるのではないでしょうか。最近耳にする、地方に家を買って田舎暮らしをするというのもその一つといえます。ただし、50代で老後の住まいを購入するときには、気を付けたいポイントが大きく分けて4つあります。
賃貸か購入か
賃貸は、ライフスタイルの変化に応じて住まいを移れますが、高齢になると審査が通りづらくなる傾向があります。自宅を購入すれば、リフォームや改築など自由度が高く、ローン返済が終われば資産となる反面、簡単に住みかえることが難しいという特徴があります。自分のライフスタイルに合った住まいを選びましょう。
ローン審査について
年齢が高くなっている分、ある程度の制限が出てくる可能性があります。老後の収入で返済が間違いなくできるかどうか、先々のことまで考えて検討する必要があります。
新築か中古かでチェックすべき住宅設備について
新築は物件の価格が割高ですが、設備面が充実しています。一方、中古は物件価格が抑えられていますが、すでに老朽化しているのでリフォーム費用や修繕費がかかる傾向があり、場合によっては建てかえも検討しなければなりません。
老後の生活を考えると、バリアフリー工事の必要性や、2階建て・3階建てでもエレベーターの有無・設置スペースの確保などはチェックすべきポイントです。そのほか、以下のような内容も押さえておきましょう。
- ドアや雨戸の開け閉めのしやすさ
- 手すりや床の段差
- 車いすを想定した部屋や廊下の広さ
- 浴室の床の滑りやすさ
- トイレの広さなど水回りの環境
- 商業施設・病院・公共交通機関にアクセスしやすい立地か
住みかえについて
住みかえの場合、現在の家の住宅ローンがまだ残っている状態であれば、その住宅ローン返済についても検討しなければなりません。残っている住宅ローンを返済する資金も上乗せして、資金計画を練る必要があります。
住宅ローンは基本的に満80歳未満で完済するように決められている場合が多く、50代での借入れでは、借入期間が長くとれないことや、継続的な収入がどこまで続くか等注意しなければならないことが多いのも事実です。
まとめ
老後・定年後の住まいは持ち家か賃貸か、戸建てかマンションか、いずれを選ぶにしても、メリットとデメリットがあります。家族構成やライフスタイルによって選び方は異なるため、どちらが良いとは一概にはいえず、自分に合った住まい選びが大切です。
50代で住まいを買うなら、収入が減少したときのことも考慮してローンを組む必要があります。購入後の維持費を含めた資金計画を作り、返済期間・金利タイプの選び方をよく検討しましょう。手元にまとまったお金を残したままローンが組めるリバースモーゲージ型住宅ローンも方法の一つです。
また、一般的な住宅ローンだけでなく、リバースモーゲージ型住宅ローンや二世帯住宅型、女性向け住宅ローンなど、選択できる種類も盛りだくさんです。
銀行によっては、来店時間の事前予約が可能な店舗や、土日営業している店舗、平日夜遅くまで営業している店舗を設置している場合がありますので、ご予定に合わせて一度相談してみることをオススメします。専門家があなたのライフスタイルに合った、すてきなプランをきっと見つけてくれることでしょう。
本記事は2019年9月時点の情報に基づいて作成しておりますが、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。
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