住宅ローン控除(減税)制度の概要と計算方法、手続きの流れを徹底解説

2022/08/26最終更新

マイホームは一生の買い物です。これからの新生活が楽しみな反面、住宅ローンとしてお金を借りることに、プレッシャーを感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは、住宅ローンへの不安を軽減するために知っておきたい、住宅ローン控除(減税)について説明します。控除額の計算方法や、手続きの流れも解説するため、参考にしてみてください。

私が書きました
主なキャリア

生命保険会社にて15年勤務したあと、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。

  • りそなグループが監修しています

住宅ローン控除(減税)の概要

まずは、住宅ローン控除の概要について見ていきましょう。

住宅ローン残高に応じて所得税が控除される制度

住宅ローン控除の正式名称は「住宅借入金等特別控除」です。いくつかの条件はありますが、個人が住宅ローンを利用した際に、所得税の控除が受けられます。

所得税から控除しきれない場合、翌年度の住民税からも税金が控除される仕組みです。この制度は、新築住宅の購入はもちろん、中古住宅の購入やリフォームなど居住用の住宅で利用できます。

2022年税制改正のポイント

住宅ローン控除は以前からありますが、2022年に一部内容が変更されました。ここでは、どのような部分が改正されたのかを見ていきましょう。

ちなみに、2022年より前に住宅ローン控除の適用を受けている方は、以前の控除率や条件が適用されるため、間違えないように気を付けてください。

環境に配慮した住宅を優遇

2022年に改正された住宅ローン控除では、環境に配慮した住宅を優遇する内容となりました。

昨今、国内外でサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)、つまり、持続可能な社会に向けたビジネスやライフスタイルの変化が求められています。政府も、環境性能の高い住宅を普及することを大きな目的として掲げています。

具体的には、長期優良住宅や低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅に対して、一般の住宅よりも高い借入限度額が設定されました。それぞれの住宅には、太陽光発電や高効率給湯器の設置、断熱性能を満たし消費エネルギーを抑えるなどの条件があります。一方、2024年以降に建築確認を受ける新築住宅などで、一定の省エネ基準適合を満たさない場合は、住宅ローン控除の対象外です。

近年では、政府だけではなく民間でも、持続可能な社会に向けた住宅普及を後押しする企業が増えてきました。例えば、りそなでは、環境配慮型住宅向けの特別金利プラン、通称「SX金利プラン」を用意し、環境に配慮した住宅に対して、低金利で住宅ローンが利用できる仕組みを作っています。

控除率0.7%、最長13年間

2022年の改正では、控除額と控除期間も改正されました。以前は控除率1%、控除期間10年間(特例措置で13年間)でしたが、2022年以降に住宅ローン控除が適用される方は、控除率0.7%、控除期間13年間(既存住宅および増改築は10年間)です。

控除率が下げられた理由には、長期にわたる低金利があります。控除率1%の時代では、低金利ゆえにローンにかかる利息以上の控除が受けられてしまうケースがありました。住宅ローン減税の本来の趣旨である、税負担の軽減という域を超える状況を是正するため、引下げられたといわれています。

控除率が下がったとはいえ、最長13年間も控除が受けられるため、住宅ローンを組む方にとってメリットの大きい制度であることには変わりありません。

【住宅の種類別】住宅ローン控除(減税)の適用条件

住宅ローン控除の適用を受けるには、一定の条件を満たさなくてはいけません。条件は、取得する住宅が新築なのか中古なのか、増改築のようなリフォームなのかで内容が異なります。

2022年以降、新たに住宅ローン控除の適用を受ける場合の、それぞれの適用条件を見ていきましょう。

新築住宅の場合の適用条件

新築住宅を購入する場合には、次の条件を満たさなければいけません。

  1. 1.減税を受けようとする人自身が、住宅の引渡し日または工事の完了から6ヵ月以内に居住すること
  2. 2.特別控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること
  3. 3.対象となる住宅の床面積が50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上が自身の居住用であること
    • ただし、合計所得金額1,000万円以下の場合で、2023年末までに建築確認を受けた新築住宅の場合は住宅の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満
  4. 4.対象となる住宅に対して10年以上にわたるローンがあること
  5. 5.居住用にした年とその年の前後2年ずつを合わせた計5年間に、居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の課税の特例といった適用を受けていないこと

なお、算出方法の違いによって、売買契約書と登記簿上では床面積が異なる場合があります。床面積は登記簿上の数字で判断されるため、住宅ローン控除の適用を受ける際には注意しましょう。

買取再販の場合の適用条件

買取再販とは、業者が既存住宅を買い取り、リフォームして販売された物件です。買取再販の場合は、新築住宅の適用条件に加えて、次の条件をクリアしなければいけません。

  1. 1.宅地建物取引業者から住宅を取得していること
  2. 2.宅地建物取引業者が住宅を取得し、リフォームを行ない再度販売するまでが2年以内であること
  3. 3.取得時点で、新築日から10年経過した住宅であること
  4. 4.建物価格に対し、リフォームの工事費用が20%以上を占めること
  5. 5.大規模修繕や耐震基準に適合するための工事、バリアフリー改修、省エネ改修など、対象となる工事が行われていること

買取再販で住宅ローン控除を受ける際は、リフォーム費用や工事内容に細かい条件があります。購入を検討する際は、事前に販売業者に住宅ローン控除の条件を満たした物件なのかを確認しましょう。

中古住宅の場合の適用条件

中古住宅の場合は、新築住宅の適用条件に加えて、次のいずれかの条件をクリアしなければいけません。

  1. 1.1982年1月1日以降に建築された住宅であること
  2. 2.現行の耐震基準に適合していること

1981年以前の中古住宅には、耐震基準を示す耐震基準適合証明書などが必要です。

リフォーム、増築の適用条件

リフォームや増築の場合は新築住宅の適用条件に加えて、次のいずれかの工事に該当することが条件です。

  1. 1.増改築、建築基準法に規定する大規模な修繕または大規模な模様替え(壁・柱・床・はり・屋根または階段のいずれか1つ以上)の工事
  2. 2.マンションの専有部分の床、階段または壁の過半について行う一定の修繕・模様替えの工事
  3. 3.家屋・マンションの専有部分のうちリビング、キッチン、浴室、トイレ、洗面所、納戸、玄関または廊下の一室の床、または壁の全部について行う修繕・模様替えの工事
  4. 4.耐震改修工事(現行の耐震基準への適合)
  5. 5.一定のバリアフリー改修工事
  6. 6.一定の省エネ改修工事 

なお、これらの工事費用の額は100万円を超えなければなりません。一つの工事に要した金額で判定されるため、2回に分けて改修工事を行った場合には注意が必要です。

リフォームや増築の適用条件は複雑であり、新築や中古住宅の購入時に比べて注意すべき点がたくさんあります。自宅のリフォームに際し、住宅ローン控除の利用を検討する場合には、早めに専門家に相談するとよいでしょう。

住宅ローン控除(減税)の対象となる
ローン等の条件チェックも忘れずに

住宅ローン控除では、先ほど紹介した以外にも、ローンに関しての適用条件があります。すべての条件を満たす必要があるため、きちんと確認しておきましょう。

控除対象となる住宅ローンの条件

住宅ローン控除を受けるには、先述した所得金額2,000万円以下であること、返済期間が10年以上であること以外に、次の条件を満たす必要があります。

  • 自己居住用の住宅とその敷地取得のための借入れで、一体として借入れられていること
  • 借入れは次の6つのいずれかからであること
  1. 1.銀行
  2. 2.農協・信用金庫・信用組合
  3. 3.住宅金融支援機構
  4. 4.地方公共団体
  5. 5.各種公務員共済組合
  6. 6.勤務先(市場金利を換算して定められた0.2%以上の金利、2016年12月31日以前に居住用とした場合は1%以上であること)

ただし、親族や知人などの個人、親族の会社や自身が役員となっている企業からの借入金は対象となりません。

他の特例との関係も要チェック

ここまでの条件を満たしていても、他の特例との兼ね合いで、住宅ローン控除が適用できないケースもあります。例えば、住宅にまつわる所得税控除には、特定居住用財産の買換え特例や3,000万円特別控除がありますが、これらが適用された場合には原則として住宅ローン控除は利用できません。

そもそも、住宅ローン控除は課税されるべき所得税がなければ利用できません。住宅にかかる税制度は条件や手続き方法が複雑なため、不明な点は税理士などの専門家に確認してみるとよいでしょう。

住宅ローン控除(減税)で一体いくら税金が戻ってくるの?

実際に、住宅ローン控除が適用されると、どれくらいの税金が軽減できるのでしょうか。ここでは、具体的な控除額を見ていきましょう。 

住宅ごとの最大控除額

住宅ごとの最大控除額は、住宅の性能や適用される年によって異なります。

住宅の種類 居住開始年 借入限度額 控除率 控除期間 最大控除額
年間 合計
新築住宅・買取再販  長期優良住宅・低炭素住宅 2022年~2023年 5,000万円 0.70% 13年 35万円 455万円
2024年~2025年 4,500万円 31.5万円 409.5万円
ZEH水準省エネ住宅 2022年~2023年 4,500万円 31.5万円 409.5万円
2024年~2025年 3,500万円 24.5万円 318.5万円
省エネ基準適合住宅 2022年~2023年 4,000万円 28万円 364万円
2024年~2025年 3,000万円 21万円 273万円
その他の住宅 2022年~2023年 3,000万円 21万円 273万円
2024年~2025年 住宅ローン控除は適用されません
既存住宅 長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅 2022年~2025年 3,000万円 0.70% 10年 21万円 210万円
その他の住宅 2,000万円 14万円 140万円
リフォーム  2,000万円 14万円 140万円

一見複雑そうですが、ご自身が購入する住宅の種類や入居時期がわかれば、計算自体はシンプルです。また、最大控除額の合計はあくまでも目安です。実際には、通常ローン残高が毎年減っていくため、控除額も年々変化します。

これから住宅ローンの利用を検討する方は、まずは金融機関のホームページから借入れシミュレーションを行い、各年末の残高状況を調べてみましょう。

なお、住宅ローン控除は、本来払うべき所得税から直接引くことができる税額控除です。本来の所得税額が住宅ローン控除可能額より少ない場合は、控除可能額すべてを利用できません。

残った部分は翌年の住民税から控除されますが、住民税の控除額にも上限があり、最高9.75万円と決まっています。所得税や住民税の上限を超える控除は受けられないことを覚えておきましょう。

住宅ローン控除(減税)の計算方法

毎年、下記の2つのうちいずれか低い金額が、所得税や住民税から控除されます。

  • 年末時点の住宅ローン残高(※)×0.7%
    • 住宅の取得等の対価の額または費用の額(注)の方が少ないときは、その取得等の対価の額または費用の額
      注:所定の補助金や贈与等の金額が控除される場合があります。詳しくは管轄の税務署までお問合せください。
  • 1年間の最大控除額

例えば、長期優良住宅や低炭素住宅の新築で2023年入居の場合、1年間の最大控除額は35万円です。

しかし仮に、年末時点での住宅ローン残高が4,500万円だった場合、残高から計算した控除額の上限は4,500万×0.7%=31.5万円になります。35万円よりも低いため、実際に控除が受けられるのは31.5万円までです。

いくら戻るか調べるならシミュレーションを行う

控除可能額の考え方を把握したうえで、納めるべき所得税や住民税の金額を当てはめると、実際に控除される金額が見えてきます。

一例を挙げて計算してみましょう。計算に用いる条件は次のとおりとします。

  • 長期優良住宅の新築に2023年入居
  • 年末時点の住宅ローン残高:3,000万円
  • 住宅の取得金額:3,500万円
  • 本来納めるべき所得税:7万円
  • 翌年の住民税:16万円

まずは、年間の控除可能な金額を求めてみましょう。長期優良住宅や低炭素住宅の新築で2023年入居の場合、最大控除額は次のとおりです。

借入限度額5,000万円×控除率0.7%=35万円

一方、住宅ローン残高を基準とした場合、以下の計算で求められます。
年末時点の住宅ローン残高3,000万円×控除率0.7%=21万円

つまり、35万円よりも低い21万円が、実際に控除可能な金額です。

次に、所得税と住民税を見てみましょう。本来納めるべき所得税7万円よりも、控除額21万円のほうが大きいため、所得税の納付は不要です。所得税から控除しきれなかった14万円分は、翌年の住民税から控除されます。

しかし、住民税からの控除額は最高9.75万円と決まっているため、実際に控除される金額は次のとおりです。
所得税7万円+住民税9.75万円=合計16.75万円

同じように、2年目以降も計算できるため、気になる方は試算してみましょう。

住宅ローン控除(減税)の手続き方法と注意点

住宅ローン控除の適用を受けるには、条件を満たすだけではなく、確定申告や年末調整が必要です。ここでは、1年目と2年目以降の手続き方法や、注意点を見ていきましょう。

1年目の手続き方法

住宅ローン控除の適用を受ける1年目は、確定申告が必要です。確定申告とは、1年分の所得や税金について、翌年の2月16日~3月15日に税務署に申告し、税金の過不足を確認・清算するための手続きです。

住宅ローン控除の1年目は、入居した年の翌年に手続きします。次の必要書類を申告書に添付し、納税地の税務署長に提出しましょう。

確定申告時の必要書類
書類 入手先
確定申告書 国税庁ホームページや最寄りの税務署
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書 国税庁ホームページや最寄りの税務署
住宅ローンの借入残高証明書 借入れした金融機関
勤務先の源泉徴収票 勤務先
土地建物の登記簿謄本 法務局の窓口またはオンライン申請システム 
建築請負契約書または売買契約書のコピー 工務店や不動産会社
  • 2022年入居の方までは確定申告で必要ですが、2023年以降入居の方は提出不要となります。
マイナンバーカード(本人確認書類) 市区町村役場
住宅性能を示す書類(あれば) 工務店や不動産会社

書類は、税務署やローンを借入れした金融機関、不動産会社、法務局などから入手しましょう。確定申告書や住宅借入金等特別控除額の計算明細書は、指定の用紙をもとに、ご自身で記入して作成する必要があります。

確定申告の流れ

確定申告は、毎年2月16日~3月15日の申告期間中、住んでいる地域を管轄する税務署で手続き可能です。書類一式を用意すれば、税務署への持参や郵送でできるほか、インターネットでも申告できます。

インターネットで手続きする場合、必要書類を手元に揃えて、国税庁の確定申告書作成コーナーにアクセスします。指示にしたがって入力を進めれば、計算も自動で行ってくれるため便利です。 

確定申告の方法がわからない、記入方法を詳しく知りたいなどの場合は、税務署に直接相談することも可能です。

なお、住宅ローン控除を受けるためだけで申告する場合には、居住した年の翌年1月1日以降であれば、1回目の申告は2月16日を待たずにできます。

2年目以降の手続き方法と注意点

住宅ローン控除の手続き自体は毎年必要ですが、毎年確定申告する必要はありません。会社員の場合、2年目以降は会社で行う年末調整の際に、住宅ローン控除の手続きが可能です。年末調整の時期に、税務署から届く書類や銀行の残高証明書などの必要書類を、勤務先に提出しましょう。

ただし、フリーランスや個人事業主など源泉徴収制度の対象とならない人は、1年目と同様、確定申告が必要です。住宅ローン控除の申請に必要な書類を添付し、税務署に提出しましょう。

手続きを忘れたら還付申告を

1回住宅ローン控除の適用を受けたからといって、2年目以降も自動的に控除が受けられるわけではありません。とはいえ、うっかり手続きを忘れてしまう可能性もあります。

万が一、確定申告や年末調整を忘れた場合には、還付申告が可能です。住宅ローン控除などの還付を受けるためであれば、忘れても後日手続きできます。期限が決まっているため、申告を忘れていたことに気付いたら、速やかに税務署に相談して還付申告してください。

まとめ

住宅ローン控除を利用すれば、住宅ローンの負担も大きく軽減されます。住宅購入の際には、住宅ローンの返済額だけではなく、控除金額も含めてシミュレーションを立てることが重要です。

とはいえ、住宅ローン控除を受けるための条件や控除額の計算方法は、複雑でわかりづらいものです。また、住宅ローンの手続きや必要書類、審査のスケジュールなど不安なこともあるでしょう。

最近では、多くの銀行が休日相談会という名前で土日に相談を受け付けています。りそなでも、土・日・祝日や平日17時以降も相談できる店舗を用意しています。りそなの口座をお持ちでない方でも気軽に相談できるため、一度相談してみてはいかがでしょうか。

具体的な税制に関する手続き方法については、税理士法上、ご案内いたしかねますので、お近くの税務署にお問合せください。

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本記事は2022年8月時点の情報に基づいて作成しておりますが、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。

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