リバースモーゲージとは?仕組みやメリット・デメリットを詳しく解説

2022/08/26最終更新

最近ニュースなどでもよく話題に上がる老後資金に関する問題について、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。そんななか、注目を集めているのが「リバースモーゲージ」。自宅に住み続けながら、その自宅を担保に老後資金を借りることができるという商品です。

老後の生活をさらに豊かにしたいという方にもお勧めできる商品なので、担保となる住宅があるなら長い老後生活を送るための資金源として検討するのも一つの方法です。

また、自宅の老朽化や相続などの問題により、高齢になってからの住み替えやリフォームを検討している人もいらっしゃると思います。その場合は「リバースモーゲージ型住宅ローン」という選択もあります。

ここではそれぞれの仕組みについてご説明します。メリットだけでなくデメリットもあるため、しっかりと理解したうえで検討してみてください。

私が書きました
主なキャリア

生命保険会社にて15年勤務したあと、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。

  • りそなグループが監修しています

リバースモーゲージとは?まずは覚えておきたい基礎知識

まず、リバースモーゲージの仕組みを解説します。リバースモーゲージとは、自宅を担保に生活資金を借入れし、自らの持ち家に継続して住み続け、借入人が死亡したときに担保となっていた不動産を処分し、借入金を返済する仕組みです。いわば、高齢者向けの貸付制度といえるでしょう。

直訳すると「リバース=逆」「モーゲージ=抵当・抵当権」という意味です。住宅ローンは、一括で受け取った融資額を月々返済していき、最終的に借入残高がなくなるのが一般的です。しかし、リバースモーゲージは毎月、あるいは一括で借入れた分の残高を最後にまとめて返済する仕組みです。そうしたことから、「リバース=逆」という名称がつけられています。

リバースモーゲージは、各都道府県の社会福祉協議会や金融機関が取扱いをしていることが特徴です。どこのリバースモーゲージを利用するかによって、借入金の使途や貸付限度額、対象となる物件が異なります。

例えば、金融機関が取扱うリバースモーゲージには、「住宅金融支援機構と提携して貸付を行うもの」「金融機関独自で行うもの」などがあります。金融機関が取扱うリバースモーゲージでは借入人が生存中に毎月利息分のみを支払い、元金は借入人の死亡後に相続人が自宅を売却することなどにより一括で返済します。

一方、社会福祉協議会が取扱うリバースモーゲージでは、借入人の死亡などの理由で契約が終了したときに、相続人が借入元金および利息の返済をすることが必要です。どちらの場合も毎月の支払額を抑えることができるため、老後の生活での限られた資金を有効に活用することが期待できます。

老後の生活は、年金収入で日々の生活費をやりくりする方が多いでしょう。しかし、定年退職後に住宅ローンの支払いが残っている場合、住宅ローンの返済が困難になるという不安があります。そこで、考えられるのが、住宅ローンからリバースモーゲージへの借換えです。

「元金+利息」の返済から「利息のみ」の返済に変わるため、月々の返済金額を減額させることも期待できます。金融機関にもよりますが、融資額は1億円程度を上限としていることが多いので、あらゆる活用を検討できるでしょう。なお、自宅を資産として残したい場合は、借入期間中に元金を返済することもできます。

60代になったら考えたい「お金のセカンドライフ」

リバースモーゲージのメリット・デメリット

リバースモーゲージの利用を検討する前には、メリットとデメリットをきちんと確認しておくことが大切です。リバースモーゲージのおもなメリット・デメリットには次のようなものがあります。

リバースモーゲージのメリット
  1. 1.金融機関が取扱うリバースモーゲージは、毎月の支払いは利息のみであるため、老後生活中の支出を減らすことができる(通常の住宅ローンは、毎月の返済が元金+利息)。ただし、社会福祉協議会が取扱うリバースモーゲージは、借入人の死亡などの契約終了時に元利金を返還する
  2. 2.元金の返済は、借入人が死亡した際に現金一括または、自宅の売却のいずれかを選べる(借入人の生存中に繰上返済することも可能)
  3. 3.住宅や土地を担保にして、自宅に住み続けながら老後資金の借入れができる
  4. 4.借入人が死亡した場合、配偶者が契約を引き継げるようにしている金融機関が多いため、配偶者の居住に関するリスクを回避できる
  5. 5.退職金や預貯金などのまとまった資金を残しておくことで、居住環境を確保しながら老後資金の減少を遅らせることができる
リバースモーゲージのデメリット
  1. 1.長生きすればするほど、最初に設定された融資限度額まで資金を使ってしまうリスクがある(借入期間は一般的に借入人の死亡時までの期間)
  2. 2.生存中に土地・建物の価値が下落すれば、融資限度額の見直しがされるリスクがある
  3. 3.変動金利のみのため、金利変動リスクがある

リースバックとの違いとは

リースバックとは、居住している物件を売却して代金を受け取ったあとも、同じ物件に住み続けられるサービスのことです。売却した物件は、リース(賃貸)の扱いとなるため、家賃を支払って住み続けられます。

一方、リバースモーゲージは、不動産の所有権を持ったまま担保にして借入れする点で、リースバックと異なります。さらに、リースバックは代金が一括で支払われますが、リバースモーゲージは、上限金額に応じて定期的な借入れが可能です。

リバースモーゲージの資金用途とは

リバースモーゲージを取扱う機関によっては、資金用途が限定されるものもありますが、おもな資金用途には、次のようなものがあります。

  1. 1.老後の生活資金や医療・介護費用
  2. 2.老人ホームの入居一時金
  3. 3.自宅のリフォーム費用
  4. 4.住宅ローンの残債の支払い
  5. 5.趣味やレジャーへの活用
  6. 6.子どもへの生前贈与

このうち、地方自治体の社会福祉協議会が提供しているリバースモーゲージは、自立支援を目的としているため、老後の生活資金のみにしか利用できません。一方、住宅金融支援機構が提供するリバースモーゲージでは、住まいに関する5つ(本人が居住する住宅の建設・購入、リフォーム、高齢者向け住宅への入居一時金、住宅ローンの借換え、子世帯などの住宅資金)の用途のみで、生活資金としては利用できません。

金融機関が独自で提供しているリバースモーゲージ商品は、事業用資金および投資目的以外なら原則自由とするものが多い傾向にあります。しかし、近年は金融機関が独自で提供している新しいタイプのリバースモーゲージとして、「リバースモーゲージ型住宅ローン」の取扱いが増えてきています。次に、「リバースモーゲージ型住宅ローン」について詳しく見ていきましょう。

リバースモーゲージ型住宅ローンとは?
メリット・デメリットと注意点

リバースモーゲージ型住宅ローンが一体どのような商品なのか、以下では概要やメリット・デメリット、注意点を紹介します。

概要

リバースモーゲージ型住宅ローンとは、社会福祉協議会や住宅金融支援機構のリバースモーゲージの仕組みをベースとしながら、借入条件や使い勝手の面でより幅を広げた商品のことです。

社会福祉協議会が取扱うリバースモーゲージは、その住居に住む人全員が原則として65歳以上で(※)あることが条件の一つです。

(※)東京都社会福祉協議会「不動産担保型生活資金貸付のごあんない」

一方、金融機関にもよりますが、リバースモーゲージ型住宅ローンは一般的に55歳あるいは60歳以上の人を対象にしている商品です。しかし、なかにはりそなのように、50歳から申込みができるところもあります。

また、金融機関の商品は、使途の面でも幅広い用途に対応しているのが特徴です。老後の生活資金はもちろん、住みかえ資金としても利用できるため、セカンドライフを考えるうえで使い勝手がよいでしょう。例えば、「子どもが巣立ち、シニア夫婦2人だけになったあとの家は広すぎるため、もう少し狭いマンションに住みかえをしたい」ということにも利用できます。

ほかに、「子どもはマイホームを購入しているので、自宅を継ぐものがいない。自分が死んだあとの家はどう処分すれば良いかわからない」といった場合も活用可能です。

このように住宅ローンの一面もありながら、生存中は利息だけを毎月返済し、死亡したあとに元金を返済するリバースモーゲージのメリットをあわせ持つのが特徴です。

メリット・デメリット

リバースモーゲージ型住宅ローンを利用すれば、死亡時に自宅を売却して借入金を清算するだけで良いため、老後の生活にもゆとりが生まれやすくなります。住宅ローンの一面もありながら、生存中は利息だけを毎月返済し、死亡したあとに元金を返済するリバースモーゲージのメリットをあわせ持っているためです。

ただし、リバースモーゲージを利用することで、老後の暮らしを充実させることができますが、その反面「相続人への負担が気になる」という人が多いのも事実です。担保となる物件の価値が下がれば、自宅を売却しても返済しきれないリスクもあり、その場合には相続人が残りの債務を返済しなければなりません。

金融機関にもよりますが、リバースモーゲージ型住宅ローンには「リコース型」と「ノンリコース型」の2種があります。「リコース型」は、モーゲージローンの残債を相続人が負担しなければならないタイプとなり、一方「ノンリコース型」は、相続人がモーゲージローンの残債を返済する必要がないタイプです。

そのため、一般的にノンリコース型のほうが金利は高めです。生存中の利息負担は、ノンリコース型のほうがリコース型よりも高くなる傾向がありますが、相続人のことを考えるとノンリコース型は選択肢の一つといえます。

6つの注意点

リバースモーゲージ型住宅ローンでは、以下の6つの注意点についても押さえておきましょう。

  1. 1.利用できる物件のエリアに制限がある場合が多い
  2. 2.変動金利のため月々の利息返済額が変わりやすい(返済額が増えれば家計を圧迫するリスクがある)
  3. 3.団体信用生命保険に加入できない(通常の住宅ローンでは加入できるが、リバースモーゲージ型住宅ローンは対象外)
  4. 4.担保となる不動産価値の動向によっては途中での返済が必要になる可能性がある
  5. 5.存命中に契約期限を迎えて、元金と利息を一括で返済しなければならないケースがある
  6. 6.マンションはリバースモーゲージに適用できる可能性が低い

このなかで最も気を付けておきたいのが、4の「途中で返済が必要になるかもしれない」というリスクです。

金融機関にもよりますが、多くの場合、貸付限度額は担保評価額の50~60%(※)と低めに設定されており、数年ごとに評価の見直しが行われます。それにあわせて貸付限度額の見直しも行われますが、このとき万が一、それまでの借入額が貸付限度額を上回ることになれば、上回った分あるいは残高すべての返済が必要です。

こういったリスクを最小限に抑えるためには、あらかじめ限度額上限まで借入れしないよう注意しましょう。

また、5の「存命中に元金と利息を一括で返済するケース」がある点にも、気を付けましょう。なぜなら、リバースモーゲージ型住宅ローンのなかには、長期返済のリスクを抑えるために、契約期限が設けられたローンもあるためです。

本来、リバースモーゲージ型住宅ローンは契約者が亡くなったあとに、不動産の売却代金で元金を返済する仕組みです。しかし、契約期限が設けられていると、契約者の生存中に、元金と利息を一括で返済しなければならない可能性があります。

そのようなリスクを回避するには、契約終了日が「契約者が亡くなった日」に設定されているローンを選ぶと、生存中に一括返済せずに済みます。

さらに、6の「マンションはリバースモーゲージに適用しづらい」ことにも注意しましょう。というのも、リバースモーゲージ型住宅ローンで担保されるのは、土地の評価額がメインとなるためです。

マンションのように、部屋ごとに所有者が異なる「区分所有建物」の場合は、そもそも所有者ごとの土地の持分が少なくなります。さらに、建物に対する所有権と、土地に対する持分所有権を別々に処分できないため、リバースモーゲージを適用しづらいのです。

(※)住宅金融支援機構「60歳からの住宅ローン【リ・バース60】」

リバースモーゲージ型住宅ローンはこんな人におすすめ

老後資金に不安がある人だけでなく、「自分が希望する老後生活を過ごしたい」という人に「リバースモーゲージ型住宅ローン」はおすすめです。特に次のような方は、リバースモーゲージ型住宅ローンの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

老後の資金に不安がある人

資産価値の高い自宅があり、住むところには困らない一方で、預貯金が少なく老後に使えるお金に不安があるという人もいるかもしれません。

例えば、社会福祉協議会のリバースモーゲージは、世帯員の収入が市区町村民税の非課税世帯程度の低所得であることが条件で、利用できない人も多いようです。そのため、自宅に住み続けながら生活資金を増やしたい、老後資金が不安だという人にはリバースモーゲージ型住宅ローンが向いています。

老後の資金はあるが、いざというときのためにとっておきたい人

老後資金は準備できているけれども、いざというときに備えて余裕資金を持っておきたいという人もいるでしょう。「旅行など余暇を楽しみたい」「病気や介護が必要になるときのために資金を確保しておきたい」など理由はさまざまです。リバースモーゲージ型住宅ローンを利用することで、老後資金の減少を抑えることができます。

相続人がいない、自宅を残さず生活を充実させたい人

相続人がいない人や自宅を残す必要がない人は、リバースモーゲージ型住宅ローンを利用して、リタイア生活の充実を重視してもよいでしょう。

ただし、1人でも子どもがいる場合は、リバースモーゲージを利用する前に必ず同意を得るようにしてください。
なぜなら、リバースモーゲージ型住宅ローンを利用すると、債務者の死後は自宅などの売却で一括返済する必要があるためです。仮に子どもが同居している場合、居住物件を失ってしまうおそれがあります。 

住宅ローンの残債の返済が辛い人

前述したように、リバースモーゲージ型住宅ローンは住宅ローンからの借換えも可能です。特に、定年退職後にも住宅ローンが残る人や退職金で一括返済を考えている人は、借換えることで月の返済額を減らしたり、退職金を老後資金として確保できます。

なお、申込み対象年齢が50歳以上などに設定されているリバースモーゲージ型住宅ローンを選べば、その分、家計の見直しに早い段階で取りかかれます。

このように、住宅ローンから借換えることで、老後生活の支出減少分を生活費の補てんや余暇などに充てられるのです。

最終的に老人ホームなどで暮らすことを考えている人

子どもが遠くに離れているなどの理由で、自宅で暮らすよりも世話をしてくれる人がいる老人ホームで暮らしたいという人もいるかもしれません。しかし、一般的に老人ホームの入居費用は高めです。リバースモーゲージ型住宅ローンを利用すれば、まとまった資金を入居費用の一時金に充てることもできます。

また、入居のために自宅を売る人もいますが、年に何度かは家族が集まれるよう自宅は残しておきたいと考える人もいるのではないでしょうか。他にもさまざまな理由がありますが、「自分の生存中は自宅を手放したくない」「ゆくゆくは老人ホームで暮らそうと考えている」という人には適しているでしょう。

できるだけ長く、生き生きとした老後を過ごせるのが理想ですが、少子高齢化の社会の状況を踏まえると、長生きが資金面でリスクとなり得ることも懸念されています。リバースモーゲージ型住宅ローンの仕組みやメリット・デメリットをしっかりと把握したうえで、充実した老後の生活のために賢い活用を検討してみてはいかがでしょうか。

リバースモーゲージ型住宅ローンでよくある質問

ここからは、リバースモーゲージ型住宅ローンでよくある質問を、2つ紹介します。

残債務は子どもに引き継がれる?

ノンリコース型のリバースモーゲージ型住宅ローンであれば、契約者もしくは契約を引き継いだ配偶者が亡くなった際も、お子さまに残債務は引き継がれません。

そのうえ、担保に入れた不動産の売却額が、元金に対して不足していた場合も、お子さまには請求がいきません。売却代金が元金を上回っていた場合、お子さまに売却代金の一部が残ります。

ただし、不足分の返済が不要になる場合には、一時所得が発生し、売却代金の一部が残る場合には、譲渡所得がかかることには注意が必要です。

利息はいつまで支払う?

利息の支払いは、生涯にわたって続きます。ただし、通常の住宅ローンとは違い、生存中に元金を返済する必要はないため、月々の支払い額を抑えることができます。資金に余力を残したまま家計を管理できる点はメリットといえるでしょう。

また、生存中に契約期限を迎える可能性がある商品を避ければ、元本の返済や自宅の売却を、ご契約者の存命中に求められる心配もありません。

まとめ

まず、相続人がいる場合、リバースモーゲージ利用に際しては相続人の同意をきちんと得ることが大切です。

自宅に住み続けながらお金を借入れし、自分の死後に自宅を売却するなどの方法で返済をするリバースモーゲージが最近注目されています。老後生活資金はもちろん、いざというときの医療費や介護費用、余暇を楽しむための費用など、資金に余裕を持たせておくことが安心につながるでしょう。

りそなのリバースモーゲージ型住宅ローンは、対象が「満50歳以上」という早いタイミングから利用できること、よくデメリットとしてあげられる「土地・建物の価値評価の見直しによる返済」がないことが特徴です。

老後の生活資金に不安がある方は、比較的早いタイミングから住宅ローンをリバースモーゲージ型住宅ローンに借換えることで、家計の見直しなど幅広く検討できます。「自宅はあるけど老後資金が不安」という方は、一度窓口で住宅ローン・保険の見直しや、リバースモーゲージ型住宅ローンなどについて相談してみてはいかがでしょうか。

スマホでカンタンマイホームToDoリストスマホでカンタンマイホームToDoリスト

本記事は2022年8月時点の情報に基づいて作成しておりますが、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。

目次に戻る

  • Line
  • このページのURLをコピーする

関連記事