親が認知症になったら…代表的なお金の管理方法とよくある金銭トラブル

2023/03/01最終更新

親が認知症になったら…代表的なお金の管理方法とよくある金銭トラブル

認知症になると資金管理を自ら行うことが難しくなり、思わぬ金銭トラブルが発生する可能性があります。

例えば、自分の親が認知症を発症して金銭トラブルに発展する可能性もあるかもしれません。このような事態を避けるためには、成年後見人制度などを利用し、認知症になった本人に代わって資金管理を行えるよう準備しておくことが大切です。

そこで本記事では、認知症によって発生するトラブルの例を紹介しつつ、家族が認知症になった場合や、その前に利用できるおすすめの制度や仕組みを解説します。

私が書きました
主なキャリア

生命保険会社にて15年勤務したあと、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。

  • りそなグループが監修しています

認知症の高齢者によくあるお金のトラブル例

まずは、認知症の高齢者によくあるお金のトラブルにどのようなものがあるかを知っておきましょう。

金銭管理が正しくできなくなる

計画性や判断能力が低下するため、年金支給と同時にすべて使ってしまうなど、家計に必要なお金を使いこむ傾向があります。また、欲求のコントロールができず、高額な商品を次々購入することもあるのです。

高齢者を狙った悪徳商法や特殊詐欺に遭う

高齢者の消費者トラブルは、増加傾向です。国民生活センターによると、架空請求や通信販売、訪問販売、電話勧誘販売によるトラブルが多い傾向で、家族が気づかないうちに繰り返し被害に遭うこともあります。

お金を盗られたと思い込んでしまう

お金を払う必要がなくても、そのことを理解できなくなり、財布を持っていないことが不安になる傾向にあります。そのため、家族や知人がお金を盗んだと思い込んでしまう「物盗られ妄想」が起こりやすくなります。

家族内の1人が金銭を管理することで、親族間でトラブルになる

親族間の揉めごとに派生することもあります。例えば、認知症になった当人のお金を管理している者のお金の使い道などをめぐる争いが起こりやすい傾向にあります。

医療・介護費用を家族が自己資金で立て替えざるを得ない場合もある

銀行の本人確認手続き煩雑化により、家族でも預金を引出すことが難しくなっています。銀行は、原則家族であっても本人以外からの預金引出には応じてくれません。

そのため、本人の預金が引出せなければ、家族が医療費や介護費の立て替えをせざるを得ません。介護の種類や認知症の進行度などによって異なりますが、2021年度の介護費用として必要となる平均額は一時金で74万円、月々8.3万円という調査データがあります。

同年の平均的な介護期間は、5年1ヵ月(61ヵ月)となっており、単純計算すると74万円+8.3万円×61ヵ月で約580万円の費用が必要です。

認知症の家族の金銭管理を行う際の注意点とやってはいけないこと

金銭トラブルを避けるためとはいえ、家族が金銭管理をするうえで「注意しておきたいこと」「やってはいけないこと」もあります。

無理やりお金や財布を取り上げない

お金の使い方や管理の仕方を見て、認知症の兆候を感じたとしても、本人はうまく金銭管理できていると思い込んでいるかもしれません。そのような状態で親自身がお金を管理する権利を奪ってしまうと、自尊心を奪うことにもなります。

家族に対する不信感が生じて、今後の資金管理にも影響を及ぼす可能性があるため、小銭を入れた財布くらいは持てるような気遣いも必要でしょう。

家族全体が認知症への理解を深め、接し方に気をつける

相手が認知症でも、頭ごなしの否定や家族の常識を押しつける行動は控えたいものです。本人の希望をいかに実現させてあげられるか検討し、接し方に気を配りましょう。

認知症の症状や進行は、人それぞれに異なることを家族全体が周知したうえで、症状への理解を深めておくことがスムーズな手続きにつながります。

もしもの場合に備えて家族全体で話し合いをする

判断能力が低下した場合、日常生活や医療・介護などのお金の管理をどうするか、事前に家族全員で対策を練っておきましょう。

早い段階から家族全体で対応しておくことで、急に症状が発症・進行した場合でも対処しやすくなります。

認知症の家族のお金・預金の管理方法~成年後見制度とは?

認知症になった際には「成年後見制度」を利用することもできます。

成年後見制度とは?

認知症などで判断能力が不十分になり、契約締結や財産管理を行えない人を守るための制度で、「法定後見」と「任意後見」の2つに分けられます。

  • 法定後見:すでに判断能力が不十分な場合に、家庭裁判所に選任された後見人等が財産を管理するもの
  • 任意後見:本人の判断能力があるうちに、将来への備えとして後見人等となる人を自ら事前に決めておくもの

法定後見制度の手続きの流れ

申立てから後見登記までの流れは次のようになります。

  • 家庭裁判所へ申立て
  • 審理:各種書類の調査や申立人・本人・後見人候補の調査、また親族の意向照会など
  • 審判:鑑定や調査の終了後,家庭裁判所により成年後見等の開始の審判、成年後見人等の選任
  • 審判確定:審判の内容は申立人、本人、成年後見人等に書面で通知
  • 法務局に後見登記

成年後見制度利用の注意点

金銭トラブルを防止するうえで成年後見制度は有効ですが、注意点もあります。

  • 後見人等は行った職務の内容を毎年あるいは随時に家庭裁判所に報告する義務がある
  • 弁護士や司法書士など家族以外が後見人等に選任されても異議申立てができない
  • いったん後見人等がつくと、家族の意向で後見人等を交代、除外することが難しい
  • 財産の管理は後見人等の権限となり、家族や本人の意向が反映されにくい
  • 申立てには概ね10万円超の費用がかかり、申立人が支払わなければならない
  • 後見人等には報酬を払う必要があることが多い

報酬は、被後見人等の財産から支払われます。管理財産が多い場合は、基本報酬も増えていく傾向です。その対策も考えておく必要があるでしょう。

《主な費用》
申立手数料及び後見登記手数料 3,400円分(内訳:800円分+2,600円分)
送達・送付費用

後見申立て:3,270円分

保佐・補助申立て:4,210円分

鑑定費用 10万~20万円程度

参照:東京家庭裁判所「申立てにかかる費用・後見人等の報酬について」

成年後見人制度以外の”お金の管理”に使える制度・仕組み

資金管理においては、成年後見人制度のほかにも利用できる制度があります。

日常生活自立支援事業のサポートを受ける

社会福祉協議会の日常生活自立支援事業のサポートを受けることも可能です。「日常的金銭管理サービス」として週1~2回、預金を引出してもらい自宅で受け取れるサービスがあります。

また、「書類等預かりサービス」では年金証書や通帳、権利書、実印などを預けることが可能です。ただし、サービス利用には条件があり、また有料です。詳しくは、お住まいの市町村へ問い合わせてみましょう。

資産承継信託を利用する

資産承継信託とは、万一に備えて資金を銀行などに預け入れ、あらかじめ設定した条件のもと本人や家族がお金を引出せるようにしておくサービスです。本人の意思を尊重しながら家族が主導となり資産を守れるメリットがあります。

遺言書・エンディングノートを作成する

遺言書やエンディングノートを作り、資金管理方法を決めておく方法も有効です。エンディングノートには法的効力はありませんが、認知症になったときなどに備え生前の資金管理方法に対する希望を自由に記載できます。

一方、遺言書は法的拘束力がありますが、書式が決まっており、また資産承継についても死後のことしか書けません。

認知症になった家族のために日頃からできること

上述したような制度以外で認知症の家族をサポートするには、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、認知症になった家族のために、日常生活のなかでできるお金の管理のポイントについて解説します。

買い物に同行する

財布からのお金の出し入れ自体は本人が行うとしても、家族が買い物に同行することで出費の軽減が期待できます。例えば、不要な商品に手を伸ばした際に「まだ家に買い置きしたものがある」「こっちの商品のほうが安いよ」など、さりげなく伝えてあげれば、不要な物や高額な買い物を抑制できるでしょう。

買い物だけでなく、銀行預金などお金を引出す際にも同行できれば、資産の無駄遣いを避けることもできます。遠方に住んでいて家族が同行できない場合は、介護事業者などによる買い物付き添い代行サービスの利用を検討してみてください。

資産の状況をチェックして記録する

本人が所有している資産全体を把握しておき、定期的にお金の増減状況をチェックすることも大事なポイントです。盗難や紛失がないかのチェックであることを伝えて、本人と一緒に確認したり記録したりするように提案すると、資産全体の把握がしやすくなります。

認知症の進行具合によっては、資産を分散して管理することも重要です。例えば、生活用の口座と貯蓄用の資産分散を行う、通帳・印鑑・キャッシュカードを別々に管理する、クレジットカードを解約するなども検討してみてください。

お金の管理に関する相談はどこにすればいい?

認知症の本人に代わって、家族がお金を管理できるようになれば安心です。しかし、管理する家族にとっては管理の仕方がわからず、負担を感じる人もいるかもしれません。そのような場合には、お金の専門家に相談してみることがおすすめです。

具体的な相談先としては、FP(ファイナンシャルプランナー)や銀行窓口があります。FPは、家計管理から資産運用、目的に応じた金融商品選びなど、お金全般に関する相談に乗ってもらえる専門家です。一方、銀行窓口は目的に応じた金融商品・サービスを実際に提案してくれます。

お金の管理方法は多岐にわたるため、誰がどのように管理したいのかなど、あらかじめ家族で話し合ってから相談することがおすすめです。

まとめ

認知症高齢者を金銭トラブルから守る方法には、成年後見人制度や日常生活自立支援事業、資産承継信託などがあります。各制度やサービスのメリット・デメリットをしっかりと押さえたうえで、自分の家族に最適なものの利用を検討してみましょう。りそなの資産承継信託「マイトラストマイトラストマイトラストマイトラスト」「ハートトラストハートトラストハートトラストハートトラスト」なら、ご自身や大切なご家族の万一に備えて、最適な資産管理や銀行手続きの代行、資産の譲渡が可能です。加齢による判断能力低下など、将来に不安を抱いた際、事前に家族間でお金の管理の話し合いをしておきましょう。

詳しい情報はHPまたは店舗で案内しています。ぜひ検討してみてください。

本記事は2023年3月1日時点の情報に基づいて作成しておりますが、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。

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