【期限別に解説】遺産相続手続きの流れと手続き内容を知ろう
公開日:2022/06/23
身近な方の相続の発生に備え、遺産相続に必要な手続きの内容や流れ、手続きごとの期限などを知っておきたいという方は多いかもしれません。
遺産相続の手続きには、期限が決められているものが多くあります。問題なく手続きを済ませるには、知識の習得とともに、信頼できる専門家や金融機関のサービスを知っておくことが大切です。
この記事では、遺産相続における手続きの流れや、期限別の手続きについて詳しく解説します。
- 私が書きました
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大手監査法人勤務の後、会計コンサルティング会社を経て、税理士として独立。中小企業、個人事業主を会計、税務の面から支援している。独立後10年間で法人税申告実績約400件、個人所得税申告実績約600件、相続税申告実績約50件。セミナー、研修会講師年間約10件。
- ※りそなグループが監修しています
遺産相続の全体の流れと
手続き
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まずは、遺産相続の手続きの概要を把握しておきましょう。下記の表は、相続発生から1年以内に必要な遺産相続手続の流れを、期限別にまとめたものです。
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期限 | 手続きの内容 | 主な手続き場所 |
---|---|---|
7日・14日以内 |
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3ヵ月・4ヵ月以内 |
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期限はないが早めに着手した方が良いこと |
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10ヵ月・1年以内 |
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遺産相続の手続き
【7日・14日以内】
相続が発生してから「7日以内」と「14日以内」の手続きについて、それぞれ解説します。
死亡日または相続開始を知った日から7日以内
死亡診断書を受け取る
被相続人が死亡した事実を法律的・医学的に証明するために、死亡診断書を交付してもらいます。被相続人が何らかの疾病のために通院や入院をしていて、その疾病が原因で死亡した場合、死亡診断書を発行するのは担当の医師です。
突然死や不明死、事故死などの場合は、警察による検死が必要となり、検死の終了後に死体検案書が交付されます。
死亡診断書や死体検案書は、生命保険や公的年金など、その後の手続きで必要になる場合があるため、最低でも5枚以上のコピーを取って保管しておきましょう。
死亡届の提出
死亡届は、一般的に死亡診断書と一緒に医師から渡されます。必要事項を記入後、死亡診断書と併せて、以下の市区町村役場へ提出してください。
- 死亡者の死亡地
- 死亡者の本籍地
- 届出人の所在地の市役所、区役所、町村役場
火葬許可申請書の提出
火葬許可申請書は、遺体を火葬するために必要な「火葬許可証」を受け取るための書類です。市区町村役場などの窓口に設置されているため、死亡診断書や死亡届を提出する際に一緒に提出しましょう。
火葬許可申請書が受理されたあとに発行される「火葬許可証」は、火葬の際に火葬場の管理事務所に提出してください。
死亡届や火葬許可申請書の提出は、葬儀会社の協力が得られる場合もありますので、確認してみてください。
死亡日または相続開始を知った日から14日以内
世帯主の変更届の提出
世帯主が亡くなり、残された世帯員が2人以上いるときは、「世帯主変更届」を市区町村役場へ提出します。
世帯員が1人だけになった場合や、残された家族が15歳未満の子どもと親権者のみの場合のように、次の世帯主が明白であるときは提出の必要がありません。
国民年金・厚生年金の受給停止の手続き
生前に、被相続人が国民年金や厚生年金を受給していた場合、年金相談センターまたは年金事務所に「年金受給権者死亡届」を提出します。国民年金の手続きの期限は14日以内ですが、厚生年金は10日以内のため注意してください。
被相続人が日本年金機構にマイナンバーの登録をしていた場合は、「年金受給権者死亡届」の手続きを省略できます。
国民健康保険・介護保険の資格喪失の手続き
国民健康保険や後期高齢者医療保険の資格喪失手続きも、14日以内に行わなければなりません。被相続人が介護保険被保険者証を所有していたときは、「介護保険資格喪失届」を市区町村役場へ提出するとともに、介護保険被保険者証の返却が必要です。
遺産相続の手続き
【3ヵ月・4ヵ月】
次に「3ヵ月以内」と「4ヵ月以内」に必要な手続きについて見ていきましょう。
死亡日または相続開始を知った日から3ヵ月以内
相続放棄、単純承認、限定承認の決定
遺産相続には以下の3つの方法があります。
- 相続放棄:一切の相続権利を放棄する
- 単純承認:プラスの財産とマイナスの財産をともに受け継ぐ
- 限定承認:プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を受け継ぐ
相続放棄と限定承認の決定は、死亡日または相続の開始を知った日から3ヵ月以内に行う必要があり、両者とも家庭裁判所で手続きをします。
限定承認においては相続人全員の合意が必要です。期限に間に合わせるためにも、相続財産の調査や話し合いを早めに行うように心がけましょう。
なお、相続発生後、被相続人の預貯金などの財産を解約して相続人自身のために使用した場合は、単純承認とみなされるため注意してください。
死亡日または相続開始を知った日の翌日から4ヵ月以内
準確定申告
被相続人が個人事業主などで、生前に確定申告をしていた場合、被相続人の準確定申告を行います。準確定申告とは、亡くなった年の1月1日から死亡日までにかかる、所得税の申告のことです。
通常の確定申告の期限は3月15日のため、3月15日前に亡くなった場合は、前年の確定申告を済ませているかどうかも併せて確認しましょう。
遺産相続の手続き
【早めに着手】
遺産相続の手続の中には、期限は定められていないものの、スムーズに進めるためにできるだけ早く着手したほうがよいこともあります。
期限はないが早めに着手したほうがよい手続き
相続人や相続財産の確定
遺産相続では、相続人の確定や相続財産がどれくらいあるのかを調査しておかなければなりません。
民法において、被相続人の財産を相続できる人を「法定相続人」といいます。法定相続人の調査や確定をするには、被相続人が出生してから死亡するまでの、すべての戸籍謄本が必要です。
被相続人に子どもがいない場合は、被相続人の両親、さらには祖父母の戸籍が必要なケースもあります。また、兄弟姉妹や甥姪が相続人となる場合は、調査に多少時間がかかるかもしれません。
相続財産の対象になるものには、現金・預貯金・不動産・株式などがあります。保証債務・借入金・ローンなどのマイナス財産も、相続財産に含まれることを覚えておきましょう。
遺産分割協議と協議内容を記載した遺産分割協議書の作成
法定相続人と相続財産が確定すれば、遺産分割協議・遺産分割協議書の作成を行います。遺産分割協議とは、遺言がない場合や、遺言以外の内容で遺産を分割する際に、「誰が何をどれだけ相続するのか」を決める話し合いのことです。なお、遺産分割協議は相続人全員で行います。
内容がまとまったら、遺産分割協議書を作成しましょう。
相続財産の名義変更や換金など
遺産分割協議が終了したら、相続人は不動産や預貯金などの名義変更や、相続財産の換金などを行う必要があります。
遺産相続の手続き
【10ヵ月・1年以内】
最後に「10ヵ月以内」と「1年以内」に必要な手続きを解説します。
死亡日または相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内
相続税の申告
相続税の申告期限は、死亡日または相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内と定められています。相続税の申告には、相続人や相続財産の確定、各相続人の納税金額の算出が必要です。
そのため、前述の「早めに着手したほうが良いこと」を済ませておくとともに、納税資金が確保されているかどうかを確認しておいてください。とはいえ、相続税の納税額が決定したとしても、相続財産のうち特に不動産が多くを占めるなど、納税資金の確保が難しい場合は、延納や物納制度の利用も検討できます。
相続税の申告が必要とされる場合でも、特例の適用により相続税がかからないケースを見ていきましょう。
<ケース1>配偶者の税額の軽減
配偶者の税額の軽減とは、配偶者の相続財産が「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれかの多い金額までは、相続税がかからない特例です。
例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人のケースでは、配偶者の法定相続分は2分の1となります。このとき、相続財産が1億円と仮定すると、配偶者の税額の軽減の特例により、配偶者が1億円を相続したとしても相続税を払う必要がなくなるのです。
<ケース2>相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
被相続人の自宅の土地や事業用の土地、貸していた土地を相続する場合、土地の利用区分によって相続税評価額を限度面積において50%または80%が減額されます。
例えば、親と同居していた子どもが、親の相続によって自宅の土地を相続するとします。このとき、小規模宅地等の特例を利用すれば、330平方メートルまでは土地の相続税評価額を80%減額することが可能です。
このようなケースでは、子どもは相続税の申告期限まで建物に住み、かつ、相続税の申告期限まで建物を所有することが求められます。
なお、相続税の申告・延納・物納・相続税の特例などの利用は、相続人である納税者が自ら判断し、手続きを行わなければなりません。相続税に関する手続きが難しいと感じたら、専門家に相談することをおすすめします。
死亡日または相続開始を知った日から1年以内
遺留分侵害額の請求
遺留分侵害額の請求の期限は、死亡日または相続開始を知った日から1年以内です。遺留分侵害額の請求とは、法律上で法定相続人が最低限取得できる、一定割合の相続財産を主張する権利を指します。
被相続人の遺言によって、すべての相続財産が法定相続人である配偶者や子どもではなく、他人へ移るとしましょう。つまり、遺言に従うと配偶者と子どもは、相続財産を一切受け取ることはできません。
このような場合、配偶者や子どもは遺留分を侵害している人に対し、最低限取得できる一定割合の相続財産について遺留分侵害額の請求ができます。
遺留分侵害額の請求権は、遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったとき、または相続開始から1年で時効を迎えます。加えて、相続開始から10年経過すると、遺留分侵害額の請求権は消滅するため注意が必要です。なお、兄弟姉妹に遺留分はありません。
まとめ
遺産相続の手続きをそのままにしておくと、相続税の申告期限に間に合わず、加算税や延滞税が発生するなどのリスクがあります。遺産相続の手続きをスムーズに進めるためには、必要な手続きとその期限を把握しておくことが重要です。
また、税金のことだけでなく不動産の名義変更なども忘れないようにしましょう。
なお、遺産相続の手続きを自分で進めるのが難しい場合は、信頼できる専門家や金融機関に相談してみましょう。
りそなの「遺産整理業務(相続手続代行サービス)」は、遺産相続に必要な手続きのサポートをするサービスです。相続人の確定・財産調査や収集・相続財産の名義変更や換金処分などのお手伝いをし、必要な方には、司法書士や税理士などの専門家をご紹介します。また、相続税の納付代行も可能です。
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本記事は2022年6月23日時点の情報に基づいて作成しておりますが、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。