相続の具体的な流れと手続きをスムーズにする5つの方法を解説

相続をする際「どのような流れで進むのか、どのような手続きをすればいいのかわからない」という方も、いらっしゃると思います。家族や近親者が亡くなった際は、死亡届の提出や葬儀の段取りだけでなく、「遺言書の確認」「相続財産や相続人の調査」「遺産分割や相続税の支払い」など相続に関する相続人同士の協議や手続きが必要です。今回は相続手続きの流れと、いつかくるかもしれない相続の日のために、今からできることを紹介します。

私が書きました
主なキャリア

銀行に20年以上勤務し、融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。在籍中に1級ファイナンシャル・プランニング技能士及び特定社会保険労務士を取得し、退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は労働基準監督署で企業の労務相談や個人の労働相談を受けつつ、セミナー講師など幅広く活動中。

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相続手続きの流れ~具体的にやるべきことを紹介

相続が発生したときに何をするべきか。具体的にやるべきことを見ていきましょう。

被相続人が亡くなってから7日以内

死亡診断書・死体検案書の取得

死亡診断書と死体検案書は、同じ1枚の用紙です。書式は同一ですが、取得先が死因によって異なります。

死亡診断書は、自然死や明確な死因があり、病院や自宅で死亡したときに医師が作成して発行するものです。

死体検案書は、不慮の事故や原因不明の死、突然死、病院以外で死亡したときに、検死をした医師や警察の監察医が作成して発行します。

死亡診断書の発行費用は、医療保険制度が適用されないため、病院によって異なりますが、3千円~1万円くらいが費用の相場です。死体検案書は、検案代や納体袋の費用がかかるため、3万~10万円と死亡診断書より高額になる傾向にあります。

死亡届と火埋葬許可申請書の提出

死亡確認日から7日以内に、死亡届と火埋葬許可申請書を市区町村役場に提出し、火埋葬許可証をもらいます(※葬儀社が手続きを代行してくれることもあります)。

火埋葬許可証は、火葬する際に火葬場に提出する書類です。火埋葬許可証が交付されたら、葬儀業者に渡しましょう。

死亡届は、全国共通の1枚の書式が使用され、左側が死亡届、右側が死亡診断書(死体検案書)となっており、原本は市区町村役場へ提出します。

死亡届は、他の手続きに必要なこともあるため、5~10枚程度コピーを取っておくことがおすすめです(金融機関の手続きにあたり、死亡診断書原本の確認が必要な場合もあります)。

また、提出の際に必要となる届出人の印鑑も準備しておきましょう。その後の「世帯主の変更」「不動産名義の変更(相続人の実印)」「預金口座名義」の変更などで必要となる場合があります。

被相続人が亡くなってから10日~14日以内

世帯主の変更届を提出(世帯主が亡くなった場合)

世帯主が亡くなった場合、14日以内に市区町村役場へ世帯主変更届を提出します。亡くなった世帯主がひとり暮らしだった場合は、届出は不要です。

世帯主変更届を提出するのは「亡くなった人が3人以上の世帯の世帯主」であった場合です。そのため、例えば以下のような場合、世帯主は自動的に変更されるため手続きの必要はありません。

  • 残された家族が15歳以上で1人だけの場合
  • 妻と15歳未満の子どもだけのように次の世帯主が明確な場合

届出をする人は、同一世帯の方やこれから同じ世帯となる方となりますが、同一世帯員以外の家族や知人が届出をする場合には、委任状が必要です。

世帯主変更届は、手続きをスムーズに終わらせるためにも死亡届と同時に提出するのがよいでしょう。届出の際には、届出人の印鑑や写真付き身分証明書(写真がない場合には2点以上の身分証明書)が必要です。

市区町村によっては、国民健康保険証・後期高齢者医療被保険者証・介護保険被保険者証・介護保険資格者証(加入者のみ)などが必要となるケースもあります。そのため、事前にお住まいの市区町村役場に問合せるようにしましょう。

年金受給停止手続きと年金受給権者死亡届の提出

亡くなった方が年金を受給していた場合、住所地管轄の年金事務所で年金の受給停止手続きを行います。厚生年金の受給停止手続きは死亡後10日以内です。国民年金の受給停止手続きは死亡後14日以内です。年金受給停止手続きが遅れると年金が振り込まれ、返金の手続きが必要になります。年金事務所へ足を運べない場合は、管轄の年金事務所へ電話で連絡をしてください。郵送でも手続きは可能です。まずは管轄の年金事務所に連絡してみましょう。

未支給年金請求の手続き・遺族厚生年金請求の手続き

未支給の年金を受取る手続きも行いましょう。年金は、亡くなった月まで支給されます。つまり、どんなケースでも、1ヵ月分は未支給年金が発生することになります。生存時分の年金は、過去2ヵ月分が偶数月15日に本人の口座に振込まれます(例えば、8月15日に振込まれる年金は6月と7月の2ヵ月分です)。

亡くなった月の年金は、一緒に生活をしていた遺族が受取ることが一般的。未支給年金や遺族年金が受取れる場合には、遺族年金の手続きについても相談するようにしましょう。

健康保険証の返却

亡くなった方が国民健康保険に加入していた場合は、亡くなった日から14日以内に国民健康保険証を交付した自治体へ返却します。また、亡くなった方が75歳以上の場合は後期高齢者医療被保険者証の返却が必要です。国民健康保険資格喪失届は、死亡届を提出していれば不要な場合もあります。

亡くなった方が健康保険に加入していた場合は、亡くなった日から5日以内に健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を在籍していた会社経由で年金事務所に提出しなければなりません。健康保険証や、70歳以上75歳未満の場合には高齢受給者証も返却をします。健康保険組合の場合も会社で手続きをします。

残された家族が健康保険の扶養に入っていた場合は、保険証が使用できなくなります。そのため、「国民健康保険に加入する」「別の健康保険に入る」などの検討が必要です。

介護保険資格喪失届の提出と介護保険被保険者証の返却

亡くなった方が介護保険の被保険者であった場合、「介護保険資格取得・異動・喪失届」を市区町村役場に提出し、介護保険被保険者証を返却します。

介護保険被保険者証を持っているのは、65歳以上の方(第1号被保険者)と医療保険制度に加入している要介護・要支援認定を受けていた40歳以上65歳未満の方(第2号被保険者)です。介護保険負担限度額認定証の交付を受けている場合も返却が必要になります。

亡くなった方が65歳以上の場合、介護保険の被保険者の喪失日は、死亡日の翌日です。介護保険料は、資格喪失月の前月分まで納付する必要があります。

すでに、納付している保険料額との過不足額を清算して超過分があった場合は、相続人に還付され、未納分があった場合は相続人が納付します。

健康保険・国民健康保険の埋葬料・埋葬費の手続き

被保険者が亡くなったときは、健康保険の場合は埋葬を行う方に、埋葬料または埋葬費、国民健康保険の場合は葬儀を行った喪主または施主に対して葬祭費が支給されます。金額は自治体や組合などによって異なるため確認しましょう。

金融機関へ連絡 生命保険の請求

金融機関に口座名義人の死亡をすみやかに連絡しましょう。その後の口座の入出金の手続きは煩雑になる場合があります。生命保険に加入していた場合、受取人が生命保険会社に連絡をして保険金受取りの手続きをします。

役所での手続きは、マイナンバーカードの登録や死亡届の提出で省略できる場合があります。詳しくは、亡くなった方の住所地を管轄する市区町村や年金事務所に問合わせるようにしましょう。

被相続人が亡くなってから3ヵ月以内

遺言書の調査及び検認

遺言書がある場合は遺言書の内容に従って遺産を分割することになるため、まず遺言書の有無を確認します。公正証書遺言や、2020年7月開始の法務局が保管する自筆証書遺言を除き、遺言書は開封前に亡くなった方の住所地を管轄する家庭裁判所で検認を受けてください。検認とは、遺言の存在や内容を相続人へ知らせるとともに、偽造・変造を防止するための手続きです。遺言書がない場合には、相続人全員が話し合って遺産分割協議を行います。

相続人の確定

被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍(戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍など)を確認し、相続人を確定します。金融機関などでも原本が必要です。戸籍謄本などは複数用意しておくと並行して手続きをする場合に重宝します。なお、戸籍謄本は相続人が原本還付を希望すれば返却してもらえます。忘れずに伝えるようにしましょう。

個人の財産調査

相続財産には、預金や不動産などの資産だけでなく、借金や保証債務などの負債も含まれます。特に、亡くなった方が他人や会社の連帯保証人になっていたケースであれば、確認しましょう。

遺産分割協議開始

遺言書がなかったときには、相続人全員で話し合い、遺産の分割方法を決定します。相続財産の確定や評価は、遺産分割協議の前に必ず済ませておくことが必要です。

遺産分割協議は、法定相続人全員の合意で成立します。そのため、1人でも相続人が欠けていたり、合意が得られなかったりする場合は遺産分割協議が進みません。

また、相続人の中に以下のような人がいる場合は、成年後見人などを家庭裁判所で選任してもらい解決することも可能です。

  • 判断能力が欠如している方がいる場合:成年後見人など
  • 行方不明の方がいる場合:不在者財産管理人
  • 未成年者がおり、その親権者自身も相続人であるなどの場合:特別代理人

さらに、「意見が合わずどうしても話がまとまらない」といった場合には、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てて、話し合いを進める方法もあります。

相続人との間でトラブルに発展する恐れがある場合には、遺産相続トラブルの解決が得意な弁護士に相談することも検討しましょう。

準確定申告の作成

亡くなった方が生存時に生じた所得について確定申告することを準確定申告と呼びます。

年の途中で亡くなった方がいる場合、相続人が1月1日から死亡した日までの所得と税額を計算し、相続の開始があったことを知った日から4ヵ月以内に申告と納税をしなければなりません。

亡くなった方が以下のような場合には、準確定申告が必要となる場合が多いので注意しましょう。判断に迷うときは、税務署などで相談するか、税理士など専門家に確認するとよいでしょう。

  • 生前に事業収入や不動産収入があった
  • 不動産などを売却した
  • 給与の収入が2,000万円以上あった
  • 2つ以上の勤務先から給与を受取っていた
  • 生命保険など保険の満期金や一時金を受取っていた

生前の収入状況を調べて、必要な場合には必ず準確定申告をしましょう。また、準確定申告が不要な場合でも、準確定申告することにより、源泉徴収されている税金が還付されることもあります。

相続放棄・限定承認

亡くなった方に多額の負債があり、負債を相続したくない場合、相続人は相続放棄や限定承認の申立てを裁判所へ行うことができます。相続放棄とは、資産や負債などの権利や義務を一切引継がないことです。限定承認とは、相続した遺産の中から債権者に負債を返済し、残金があれば受取る手続き、つまり相続人が相続した財産の限度内で亡くなった方の債務の負担を引継ぐことです。遺産よりも負債が上回る場合、不足分を返済する必要はありません。相続放棄は相続人単独、限定承認は相続人全員で行います。

相続放棄と限定承認の手続きの期限は、相続があったことを知った日から3ヵ月以内となります。それまでに手続きをしないと単純承認(資産も負債も引継ぐこと)をしたことになり、亡くなった方に負債があった場合は返済の義務が生じるため注意しましょう。

被相続人が亡くなってから10ヵ月以内

遺産分割協議書の作成

遺産分割方法が決まったら遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には相続人全員の署名、捺印をします。名義変更などでも利用しますので、実印で押印し、印鑑証明書も用意しておくとよいでしょう。

遺産分割協議書は、「どの財産を誰がどれだけ相続するのか」を書き記すものです。決まった書式はありませんが、下記の項目が必要となります。

  • 被相続人の住所や氏名、死亡日
  • 相続人全員が合意している旨の内容
  • 相続財産の詳細
  • 相続人全員の氏名と住所、実印の押印

手書きで作成しても問題ありませんが、相続人1人につき1枚所有するため、パソコンで作成し印刷、複製するのが一般的です。
ただし、後々トラブルに発展しないためには、相続人の氏名住所欄は自署してもらったほうが安心でしょう。不安な場合は行政書士など専門家に依頼することもできます。

遺産分割協議書をもとに預金の払戻しや不動産の名義の変更を行いますが、相続税の申告や自動車・株式の名義変更の際も遺産分割協議書が必要となります。

相続税申告・納付

相続財産が基礎控除額以下であれば相続税を申告する必要はありません。基礎控除を超える場合は相続税申告と納付手続きが必要になります。相続の開始を知った日の翌日から10ヵ月以内に相続税申告と納税を行います。

相続税の対象の財産には、相続開始前3年以内に被相続人から相続人が贈与を受けた財産や、みなし相続資産として生命保険金なども入ります。

また、名義は被相続人のものでなくても、実質的に被相続人が管理していた預貯金等も相続財産とみなされることもあります。

一方で小規模宅地の評価減など自宅の評価が減額になる仕組みや、生命保険金の非課税枠など有利な制度もあります。

なかなか一般の方々には正確な申告が難しいと思われますので、相続税がかかるかよくわからないときや、相続税の申告が必要なときは早めに税理士等専門家に相談するとよいでしょう。

なお、相続税の申告が必要な場合に、無申告のままにしておくとその後ペナルティが課されることがありますので注意が必要です。

相続手続きのために、今からできる5つのこと~銀行へ相談、遺言書作成など

いつかくるかもしれない相続の日ために、今からできることを紹介します。

相続に関する無料の事前相談をする

基本事項を確認しておくことは大切です。専門家に相続人の状況を伝えて、相続に伴う手続きの方法や必要な書類、「トラブルにならないためにどうすべきか」などを相談し、理解を深めましょう。まずは無料相談などの場を利用するのもおすすめです。

財産目録を作っておく

銀行預金、不動産、有価証券、ゴルフ会員権、自動車、貴金属など、自分の財産の状況を確認し、目録を作ることからはじめましょう。保険会社や証券会社など、どこでどのような契約をしているかを整理し、契約の内容を相続人が見てもわかるようにしておくことが大切です。

法定相続人を確認しておく

財産が誰にどれくらいの割合で分割されるかは、民法で定められています。法定相続人とは、民法で定められた相続の権利者のことです。あらかじめ確認しておくことで、遺言書をスムーズに作成できるでしょう。

また、財産を分割しやすいようにしておくのも効果的です。現金化できるものは現金化し、不動産なども残すべきものと売却するべきものを選んでおくことが大切です。場合によっては専門家に依頼して、どれくらいの価値があるかを調査することも検討するとよいでしょう。

遺言書を作る

遺言書には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。自分1人で作成ができる「自筆証書遺言」は費用がかからない一方で、記載事項が守られていない場合は、法的に無効となってしまうケースも少なくありません。また、遺言書を用意しても、相続人が見つけられなかったということも起こりえます。そのため、心配な方は公正証書遺言で作成しておくと安心です。

銀行の遺言信託や資産承継信託も含め、相続税の支払い資金の確保や遺産分割対策は、事前準備が大切です。民法の改正など相続は内容が複雑なため、相談しやすい専門家を見つけておくとよいでしょう。例えば、銀行の遺言信託を利用すれば、遺言書作成の専門家のサポートが受けられるだけでなく、保管や異動・変更の照会、執行までを銀行が行ってくれるため、安心です。

資産承継信託を利用する

りそなには、判断能力の低下や怪我・病気などで自身のお金の管理が難しくなったときに備えることができる「資産承継信託」があります。

資産継承信託は、医療費や介護に関する費用などをあらかじめ決められた範囲内で、指定した家族が煩雑な手続きをせずに本人に代わって引出すことができる、元本保証の預金保険制度対象となる商品です。

キャッシュカードはなく、引出しは窓口に限定されるため、振込め詐欺の防止に役立ちます。また、医療や介護に関する費用を家族が立替えなくて済むなどもメリットです。

事前に資産の受取人を指定しておけば、相続を開始したときに煩雑な相続手続きをすることなく、資産を家族に引継ぐことができます。お金に関する不安を取り除くことができる「資産継承信託」なら、大切な資産を守りつつ次世代へつなげることができるでしょう。

まとめ

相続手続きは専門的な知識が必要なだけでなく、期限が設けられています。手続きを忘れていると後々トラブルになることがあります。残される家族のために、相続が発生する前に財産目録を作り、事前に準備しておくことが大切です。

りそなの資産承継信託「マイトラストマイトラストマイトラストマイトラスト」「ハートトラストハートトラストハートトラストハートトラスト」なら、資産の管理や銀行手続きの代行、スムーズな資産の譲渡が可能です。詳しい情報はホームページまたは店舗でご案内しております。ぜひご検討ください。

本記事は2020年3月時点の情報に基づいて作成しておりますが、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。

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