相続税の基礎控除とは?各種控除と税額算出方法をわかりやすく解説
2022/06/23最終更新
親族などに遺産を相続させる際や将来的に受け取る予定がある際、相続税が発生するか否か知りたいという方は多いかもしれません。また、相続税で気になるポイントの一つが、相続財産が基礎控除額に収まるのかという点です。
基礎控除額はすべての人に適用されますが、法定相続人の数によって額は変動するため、概要や計算方法について把握することが大切です。
この記事では、相続税の基礎控除の概要と、5つのステップで実行できる相続税の計算方法を解説します。併せて、基礎控除以外の4つの控除枠についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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大手監査法人勤務の後、会計コンサルティング会社を経て、税理士として独立。中小企業、個人事業主を会計、税務の面から支援している。独立後10年間で法人税申告実績約400件、個人所得税申告実績約600件、相続税申告実績約50件。セミナー、研修会講師年間約10件。
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相続税の「基礎控除」に関する基本知識
まずは、相続税における基礎控除の概要と算出方法について、それぞれ解説します。
「相続遺産の総額から一定額控除できる金額」のこと
そもそも相続税とは、「相続した財産の額から、負債や葬式費用を差し引いた後の額」が、基礎控除額を上回っている場合に発生する税金のことです。
相続税の基礎控除は、相続税の計算で用いられる非課税枠を指し、課税対象となる相続財産額から一定額を引くことで、相続税を減額できます。
つまり、課税対象となる相続財産の額が、基礎控除によってゼロになれば相続税は発生しません。
基礎控除の算出方法
基礎控除額を算出する際は、以下の計算式を利用します。
- 基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
基礎控除の計算で大きなポイントとなるのは、法定相続人の数です。例えば、法定相続人の数が変われば、基礎控除額が以下のように変わります。
- 法定相続人が2人の場合:3,000万円+(600万円×2)=4,200万円
- 法定相続人が4人の場合:3,000万円+(600万円×4)=5,400万円
つまり、法定相続人の数が増えるほど、基礎控除として差し引ける額は大きくなるのです。
基礎控除を計算する際は、ぜひ以下の「基礎控除シミュレーション」もご活用ください。
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基礎控除を理解するうえで重要な「法定相続人」
法定相続人の概要を知る前に、遺産の分け方のルールについて把握しておきましょう。
- 【大前提となる遺産の分け方のルール】
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- 1.遺言書がある場合は、遺言書のとおりに遺産を分ける。
- 2.遺言書がない場合は、遺産分割協議(法定相続人全員による話し合い)で遺産の分け方を決める。
遺産分割協議で全員が納得すれば、法定相続分の割合に従わなくても問題ありません。
「民法によって相続する権利がある人」のこと
法定相続人とは、民法によって「相続する権利がある人」と定められている人を指します。例えば、被相続人(相続される故人のこと)に配偶者がいた場合、配偶者は常に法定相続人に該当します。
また、配偶者以外の相続順位は以下のとおりです。
- 第1順位:子ども(亡くなっている場合は孫)
- 第2順位:第1順位がいない場合、父母(亡くなっている場合は祖父母)
- 第3順位:第1順位も第2順位もいない場合、兄弟姉妹(亡くなっている場合は甥姪)
上記のように、相続順位は被相続人との関係によって決まることが特徴です。また、子どもの法定相続人が亡くなっている場合、孫が代襲相続するケースがあります。父母が亡くなっている場合は祖父母が相続するケースがあります。
代襲相続とは、本来の相続順位である法定相続人(子ども)の代わりに、孫が相続することです。
基礎控除額を算出するときの法定相続人の数え方
法定相続人の数え方は、基礎控除額を算出するときに重要なポイントです。例えば、相続を放棄した相続人も、法定相続人の数には含まれるため、基礎控除額の計算式に組み込めます。
また、法定相続人として含めることが可能な養子の人数は、実子の有無によって変わります。例えば、実子がいるケースでは1人、実子がいないケースでは2人まで、法定相続人として養子を含めることが可能です。
ただし、相続人が相続欠格や相続廃除に当てはまる場合は、法定相続人に含まれません。相続欠格になる事由としては、遺言書の偽造・変造や、被相続人や自分以外の相続人を殺害したケースなどが該当します。
一方、相続廃除とは、被相続人に対する不貞行為や虐待などの理由によって、推定相続人を廃除できる手続きのことです。生前の申し立て、もしくは遺言によって相続人の廃除ができます。
【5ステップ】
相続税の計算方法
ここからは、相続税の計算方法を5つのステップで解説します。
ステップ1:
課税価格を算出する
まずは、相続税計算のもとになる課税価格を算出します。課税価格とは、プラスの財産からマイナスの財産を引いた額のことで、それぞれの財産のおもな例は以下のとおりです。
- プラスの財産:預貯金や土地、建物など、金銭に見積もり可能なすべての財産
- マイナスの財産:借入金や未払金などの債務、納める予定の税金
マイナスの財産には、相続人が負担した被相続人の葬儀費用も含まれます。なお、生命保険金や死亡退職金がある場合、「みなし相続財産」の対象となる点には注意しましょう。
みなし相続財産は、それぞれ非課税となる金額(500万円×法定相続人の数)を控除したうえで、課税価格に加算します。
ステップ2:
課税遺産総額を算出する
課税価格を算出後、実際に課税される課税遺産総額について計算します。その際、必要となるのが基礎控除額(算出方法は先述のとおり)です。
課税価格の合計額から、基礎控除額を差し引くと、課税遺産総額を算出できます。例えば、課税価格が9,000万円で法定相続人が合計4人の場合、課税遺産総額は3,600万円です。
- 課税価格9,000万円-基礎控除額5,400万円=課税遺産総額3,600万円
このとき、課税価格の合計から基礎控除を差し引いた際の値がゼロの場合は、相続税が課されません。
ステップ3:
法定相続分をもとに総相続税額を算出する
次に、課税遺産総額を法定相続分で按分し、法定相続人それぞれの仮の課税遺産額を求めます。その後、各人の課税遺産額に対して、「相続税の速算表」を適用したうえで、それぞれの相続税額を仮に算出します。
例えば、配偶者に按分された課税遺産額が4,000万円の場合、「相続税の速算表」に基づいた税率は20%、控除額は200万円です。この条件で計算を行うと、相続税額は600万円です。
- 課税遺産額4,000万円×税率20%-控除額200万円=相続税額600万円
上記のように、各人の仮の相続税額を計算したうえで合算すると、総相続税額(相続人全員分の合計額)を求められます。
ステップ4:
相続税の総額を実際の相続分で按分する
続いて、相続税の総額を実際の相続分で按分していきます。その際、配偶者および1親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含む)以外の人が相続する場合は、相続税額の2割に相当する金額が加算されるため注意しましょう。
なお、遺産分割協議で決まらない場合も、法定相続分で分けたという体裁で、相続税の申告期限までに納税する必要があります。この場合、相続税を控除できる各種の特例を適用できず、納税額が増えるケースもありますが、後日の修正申告は可能です。
また、遺産分割協議が調ったとしても、納税資金を準備するための時間が取れない可能性もあるため注意が必要です。
ステップ5:
各種税額控除・加算を行う
条件に合致すれば、配偶者控除や未成年控除などの各種控除を、各人の相続税額に適用できます。ただし、先述したとおり、配偶者や1親等の血族以外が相続する際は、2割に相当する金額の加算が必要です。
ちなみに、2親等である孫が相続する場合は、代襲相続の有無によって2割加算の対象となるか否かが異なります。
例えば、被相続人の子どもが亡くなっており、孫が代襲相続する場合は2割加算の対象から外れます。しかし、代襲相続でなく孫が相続する場合は、2割加算の対象です。
基礎控除以外の
4つの控除枠
相続税を控除する方法は、基礎控除以外におもに4つあります。以下で、それぞれの特徴を見ていきましょう。
配偶者の税額軽減
被相続人の配偶者が相続する場合、「課税価格1億6,000万円」もしくは「法定相続分に相当する額」までは相続税が課されません。配偶者の法定相続分とは、民法で定められた、相続割合の目安です。
例えば、配偶者と子どもが相続する場合、配偶者の法定相続分は2分の1と規定されています。つまり、課税価格が1億6,000万円を超えていた場合であっても、配偶者の法定相続分を超えていない限り、相続税額はゼロになるのです。
ただし、税額軽減の制度で相続税額がゼロになる場合でも、相続税の申告は必要となるため注意しましょう。相続税を申告する際は、「被相続人が亡くなった日または相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内」に、被相続人の住所を管轄している税務署に申告書を提出します。
未成年控除
相続人が未成年の場合、以下の計算式に基づいて相続税を控除できます。
- 控除額=(18歳※1-相続開始時の年齢※2)×10万円
- ※12022年3月31日以前の相続の場合は20歳。
- ※2相続開始時の年齢に1年未満の期間があるときは、切り捨てます。
例えば、相続開始時点で15歳9か月の未成年者が相続する場合、15歳として計算するため控除額は30万円です。
- (18歳-15歳)×10万円=控除額30万円
また、未成年者の相続税額から未成年控除の全額を引けなかった場合、扶養義務者の相続税額から残りの額を差し引くことが可能です。
障害者控除
相続人が85歳未満の障害者の場合、以下の計算式に基づいて相続税を控除できます。
- 控除額=(85歳-相続開始時の年齢※)×10万円
- ※相続開始時の年齢に1年未満の期間があるときは、切り捨てます。
ただし、上記は一般的な障害者が対象の計算式であり、特別障害者の場合は1年につき20万円の控除額です。また、未成年控除のケースと同じく、相続税額から引けなかった障害者控除の一部の額は、扶養義務者の相続税額から差し引けます。
暦年課税分の贈与税額控除
生前贈与加算の対象となった人が贈与税を課された場合、その贈与税額を相続税から控除できます。生前贈与加算とは、相続開始前3年以内に、暦年課税に係る贈与を受けた財産がある場合、贈与時の価額を相続税の課税価格に加算することです。
暦年課税分の贈与税では、死亡した年の贈与財産や、110万円の基礎控除額以下の贈与財産も、加算対象となる点に注意が必要です。
まとめ
相続税の基礎控除を正しく適用することで、相続税額を減らすことが可能です。今回は相続税の基礎控除に関する概要を解説しましたが、実際に相続税を計算するには手順が複雑で、専門的な知識が不可欠です。
「相続税がかかるか知りたい」「相続税がかかるとしたら、いくらなのか知りたい」などの悩みを抱えている方は、税理士をはじめとした専門家への相談をおすすめします。
金融機関のなかには、相続税の簡易的な試算を無料でしてくれるうえ、ケースに合わせた対策の相談に乗ってくれるところもあります。まずは、そのような機会を活用したうえで、必要に応じて専門家への相談を検討するのがおすすめです。
相続財産を売却して納税に充てるという場合も、時間が足りずに慌てて売却しなければならない可能性があります。目標とする売却額に近づけるためには、事前にしっかりと計画を立てて準備しておくことが大切です。
相続について悩んでいるという方は、りそなで相談してみてはいかがでしょうか。円満な相続を実現するには、税金の把握だけでなく、誰にどの財産を引き継ぐかについて考えて遺言を作成することも重要です。
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相続に関するお悩みを抱えているという方は、ぜひ一度、りそなまでお気軽にご相談ください。
自分の基礎控除はいくら?
簡単10秒診断!
次の世代への引継ぎをしっかり準備
本記事は2022年6月23日時点の情報に基づいて作成しておりますが、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。