おひとりさまの遺産相続とは?トラブルを防止する生前対策を徹底解説!

おひとりさまの遺産相続とは?トラブルを防止する生前対策を徹底解説!

近年、未婚率の上昇や少子高齢化の進行で、「おひとりさま世帯」が増えています。ひとりゆえに、自分が財産を残した場合、どうなるのか気になるという方もいるでしょう。

例えば、せっかく財産を残しても自分が残したい相手にわたらないということもあるかもしれません。また、親せきなどによるトラブルも考えられます。

おひとりさまが生涯、自分らしい生活を続けつつも、もしもの時のために相応の準備しておくことでトラブルを避けることができます。

今回は、おひとりさまの相続対策について知っておきたいことと準備方法を解説します。

私が書きました
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ねこのて合同会社 代表。大手メーカーで経理、中小企業の役員として勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとして独立。金融機関での経歴がないからこそ、お客様にとってのメリットを最大化するプランを提案することができることを強みとする。保険だけ、投資だけに片寄ることなく、今の生活も将来の生活も可能性に満ちたものにするようアドバイスすることを心がける。

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相続における「おひとりさま」とは

相続におけるおひとりさまは、具体的には以下のような状態を指します。

  • 配偶者がいない(未婚独身、死別、離別)
  • 直系尊属(そんぞく)がいない
  • 直系卑属(ひぞく)がいない

おひとりさまが、自分にもしものことがあった場合に財産をどうするか、法定相続人はいるのか、いない場合は特別縁故者など財産を相続するものがいるのかなど、さまざまな問題があります。

ちなみに配偶者とは法律上の婚姻関係にある者であり、事実婚は、現在の法律では配偶者とはみなされません。

また、直系尊属とは自分よりも前の世代で、直通する系統の親族、父母・祖父母などをいいます。直系卑属とは自分よりも後の世代で、直通する系統の親族、子・孫などのことを指します。

相続における「おひとりさま」とは

おひとりさまの遺産を相続できる人は?

もし、おひとりさまが相続の準備を何もしていない場合、財産はどうなるのでしょうか。遺言書が残されていない場合は、民法に定められた方法で相続されます。

法定相続人がいる場合

民法では、遺言で指定されていない場合、法定相続分で遺産分割するとされています。亡くなった方の配偶者は常に相続人となり、「子(直系卑属)」「父母や祖父母など(直系尊属)」「兄弟姉妹」の順序で配偶者と共に相続人になります。

つまり、おひとりさまの場合、配偶者・子(直系卑属)・直系尊属がいないため、兄弟姉妹が相続することになります。兄弟姉妹が複数人の場合は、その人数で分割されます。

なお、兄弟姉妹も亡くなっている場合でも、兄弟姉妹の子(甥や姪)がいる場合は、甥・姪が代襲相続します。

「代襲相続」とは、本来相続人となるはずだった人がすでに死亡していた場合、「代わりにその人の子や孫が相続権を得る」という制度です。

また、兄弟姉妹の相続権を代襲相続する場合は、甥・姪までの1代だけで、兄弟姉妹の孫には代襲相続されません。

法定相続人がいない場合

法定相続人がいない場合は、原則として被相続人(本記事の場合は「おひとりさま」)の財産は「国庫」に帰属します。つまり、国のものとなるのです。

ただし、遺言書で指定していれば故人の遺志を尊重した遺産相続ができます。また、同一生計の内縁の配偶者(事実婚)など一定の条件を満たした「特別縁故者」が財産分与の申し立てをすることも可能です。

おひとりさまの相続で発生しがちなトラブル例

相続では、遺族が財産分与の取り分をめぐって争いになるケースも少なくありません。しかし、おひとりさまの場合、一般的な相続とは異なるトラブルが起きやすくなります。

ここでは、よくあるトラブル例を2つ紹介します。

財産状況の把握が困難であった例

相続ではじめに取りかかるのが「被相続人の財産の把握」です。おひとりさまでは、「どのような財産を持っているか」を生前に伝えられる相手がいないため、財産状況が把握しきれないケースがあります。

例えば、現金・宝飾品・居住用不動産などは、身近に目に見える形で存在するため、特定しやすいでしょう。銀行や証券会社などの口座も、以前は通帳や郵便物で把握しやすい傾向でした。しかし、近年は、ネットバンクが増えたことやペーパーレスで通帳がないというケースもあり、特定が困難になっています。

なお、被相続人に債務があり、債権者から申し出があった場合には、相続財産から債権者への分配が優先されます。

万が一のときに手続きする人がいない例

おひとりさま以外でも、結婚・離婚・引越し・転職などを機に、親族と疎遠になってしまうこともあるでしょう。

また、親族と疎遠にはなっていなくても、おひとりさまが高齢の場合、親族や関係者も高齢で、認知症になっているかもしれません。

そのため、おひとりさまに万が一のことがあっても、すぐに相続の手続きができなかったり、そもそも手続きをする人がいなかったりする可能性があります。これは、万が一のことがあったときに限らず、老後に病気になった場合も同様です。

生前にできるおひとりさまの相続対策【4選】

おひとりさまの場合は、トラブルを避けるためにもできるだけ生前に相続対策を講じておくことが重要です。ここでは、主な4つの対策について解説します。

法定相続人の確認

まずは、自分の財産を相続する人がいるかどうかを確認しましょう。具体的には、法定相続人の所在と安否を日ごろから確認したり、自分が生まれてから現在までの戸籍謄本を取得したりしましょう。

また、自分で法定相続人が分からない場合は、専門家に相談するというようなことが必要となってきます。

財産目録の作成

万が一の場合でも自分の財産をすぐに把握してもらえるよう、財産目録を作成しましょう。その際、通帳などがなくても分かるようにまとめます。

例えば、金融機関であれば「金融機関名・支店名・口座の種類・名義人・口座番号」などを記載します。

遺言書作成と受遺者の指名

「法定相続人がいない」「法定相続人がいても、それ以外の人にも財産を残したい」といった場合は、遺言書を作成しましょう。遺言書を作成するのとあわせて、遺言執行者も見つけておくと安心です。

遺言執行者がいることで、確実に自分の遺志に沿った財産分割をしてもらうことができます。金融機関が行っている「遺言信託」をすれば、金融機関を遺言執行者に指名することも可能です。

相談先を見つけておく

最後に、信頼できる相談相手を見つけておきましょう。友人でも知人でもかまいませんが、できれば「資産の管理・運用や相続に詳しいプロ」が望ましいです。

まとめ

おひとりさまの遺産相続では、主に兄弟姉妹や甥・姪が法定相続人となります。それ以外の親族や関係者に財産を残したい場合は、遺言書が必要です。

遺言書がない場合は、自分が亡くなった後、お世話になった団体や自治体などへ遺贈するなど、希望通りの財産分割は難しくなります。

りそなでは、遺言信託サービスを行っており、遺言執行までをサポートしています。もちろん、それまでの老後生活を支えるために、高齢者住宅の紹介や任意後見などをしてくれる専門家の紹介など、相談できる体制を整えています。

万が一のことは、いつ訪れるか分かりません。元気に動くことができるうちに遺産相続の準備をしておきましょう。

本記事は2021年4月6日の情報に基づいて作成しておりますが、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。

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