シニア向け住宅の種類とは?特徴や自分に合った施設の選び方
公開日:2021/04/06
更新日:2025/05/27

「遠方で高齢の両親が2人で生活している」「父親が他界し、高齢の母親が1人で生活している」といったケースでは「今は元気でもいずれは・・・」と不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
そうした場合に有力な選択肢となるのが、シニア向け住宅です。
「シニア向け住宅」には、公的施設と民間施設の2大カテゴリーがあり、施設ごとに入居条件や費用が異なります。健康状態や経済状況など、個々のニーズに合わせた選択が必要です。
いざという時に困らないよう、元気なうちから施設探しを進めることが安心への第一歩となります。
本記事では、多彩なシニア向け住宅の基本知識を解説するとともに、施設選びのポイントを詳しくご紹介します。これから入居を検討される方も、ぜひ参考にしてください。
- 私が書きました
-
- 主なキャリア
-
元銀行員。若年層から高年層まで幅広い資産運用の提案を行なう。メディアを通じて、より多くのお客様に金融の知識を伝えたい気持ちが強くなり、退職を決意。
現在は、編集者として金融機関を中心にウェブコンテンツの編集・執筆業務に従事している。
- ※りそなグループが監修しています
シニア向け住宅には
公的施設と民間施設がある

- ※本表は、シニア向け住宅の分類を一般的に示したものであり、各施設の具体的な条件やサービス内容は一律ではありません。
詳細については、入居予定の施設にご確認ください。 - ※本表は、(株)長谷工シニアウェルデザイン作成資料をもとに、りそな銀行が作成したものです。
公的なシニア向け住宅には、特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、軽費老人ホーム、介護医療院などがあります。
公的施設は介護保険制度の対象で、民間施設に比べて費用が安い傾向にあります。その一方で、入居希望者が多く待機期間が長い点や、利用条件が厳しい施設もある点には注意が必要です。
民間のシニア向け住宅には、介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、シニア向け分譲マンションなどがあります。
介護が必要な方のための「介護型」と、自立した生活を楽しむ「自立型」、などがあり、それぞれのニーズに応じた選択が可能です。施設によって提供されるサービスも多様で、施設選びの幅も広くなっています。ただし、多くの施設は充実したサービスや設備がある分、公的施設よりも費用が高くなる点に注意が必要です。
「要介護度が高くなった場合」も対応できるのが、介護付き有料老人ホームです。その他の民間施設は、基本的に自立している方~比較的要介護度が低い方までが対象となっており、要介護度が高くなった場合は、施設を移らなければならないこともあります。もちろん、要介護度が高くなった場合に施設を移ることを前提に、元気なうちは費用が安い施設を選択することも可能です。
シニア向け住宅は契約形態も異なります。一般的に、有料老人ホームは利用権方式、サービス付き高齢者向け住宅は賃貸借方式、シニア向け分譲マンションは所有権方式です。
以下、シニア向け住宅の種類ごとにその特徴を確認していきましょう。
公的なシニア向け住宅
主な公的なシニア向け住宅には、以下の4つがあります。それぞれ特徴をみていきましょう。
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- 軽費老人ホーム
- 介護医療院
特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホーム(特養)は、原則として要介護3以上の方が入居できる施設です。可能な限り在宅復帰することを念頭に置いていますが、終身利用も可能なため人気が高く、入居までの待機期間が長くなるケースが多くなっています。
提供されるサービスは、日常生活の介護(食事、入浴、排泄など)や健康管理、機能訓練などです。
施設を利用する際は、施設サービス費のほか、居住費や食費、日常生活費などがかかります。なお、費用負担は要介護度や収入、資産状況によって異なり、場合によっては民間と比べて割安とはいえない場合がある点には注意が必要です。
<こんな方におすすめ>
- 終身利用したい
- 要介護度が高い
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設(老健)は、在宅復帰を目指している要介護1以上の方が入居できる施設です。入居期間は原則として3~6ヵ月で、利用者はリハビリテーションや医療、介護などを受けられます。
介護老人保健施設では、医師や看護師などによる医療的ケアを受けられます。ケアの体制が整っている分、特別養護老人ホームよりも費用が高く設定されており、施設によっては費用が高額になる点に注意しましょう。
<こんな方におすすめ>
- 病状が安定し、自宅に戻るためのリハビリが必要
- 短期間の施設利用を考えている
軽費老人ホーム
軽費老人ホームは、家庭環境や住宅事情、経済状況などの理由により自宅で生活することが困難な高齢者を対象とした施設です。A型(食事付き)やB型(食事なし・自炊可能な人が対象)、ケアハウスというようにタイプごとにサービス内容が異なります。なお、対象者は原則として60歳以上の方です。
<こんな方におすすめ>
- 経済的に困難な状況にあるが、家族の支援が難しい
- 介護が必要になり、施設を移ることになっても差し支えない(一部施設は住み続けることも可能)
介護医療院
介護医療院は、長期にわたって療養の必要がある要介護1以上の方が入居できる施設です。病院に併設されているケースが多く、医療と介護の両方のサービスを受けることができます。
<こんな方におすすめ>
- 長期にわたって医療ケアを受けたい
- 終身利用したい
民間のシニア向け住宅
民間のシニア向け住宅には、以下の4つがあります。それぞれ特徴をみていきましょう。
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- シニア向け分譲マンション

横スクロールできます。
- ※本表は、民間のシニア向け住宅の分類を一般的に示したものであり、各施設の具体的な条件やサービス内容は一律ではありません。
詳細については、入居予定の施設にご確認ください。 - ※本表は、(株)長谷工シニアウェルデザイン作成資料をもとに、りそな銀行が作成したものです。
介護付き有料老人ホーム
ホームに常駐するスタッフがチームで包括的に介護サービスを提供するため、要介護度が高くなった場合にも対応できる点が特徴です。
要介護認定を受けた方が入居できる「介護専用型」、元気なうちから入居できる「入居時自立型」、自立している高齢者と介護が必要な高齢者の両方が入居できる「混合型」など、さまざまなタイプがあります。費用は高めですが、介護費用は介護度に応じて定額で、常駐スタッフによる手厚い介護が受けられます。同じ施設内で、元気な方向けの一般居室と介護が必要な方向けの介護専用居室に分かれている施設もあります。介護が必要になった場合でも、基本的に同じ施設内で移動が完結するため、柔軟な対応が可能です。
一般的な契約形態は利用権方式で、入居一時金が500~7,000万円程度、月々の料金は20~30万円程度となっています。利用権方式では施設を終身で利用する権利を購入する形になるため、その権利を相続することはできません。
<こんな方におすすめ>
- 自宅を売却して入居一時金に充てることを検討している
- 元気なうちから将来の介護に備えたい
- 途中で施設を移るのは面倒

住宅型有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームでは常駐するスタッフが介護サービスを提供するのに対して、住宅型有料老人ホームでは、介護サービスが必要になった場合に外部業者と契約します。このため、住宅型有料老人ホームは、自立している方や比較的要介護度の低い方を対象とした施設と位置付けられています。
一般的な契約形態は利用権方式で、入居一時金が300~5,000万円程度、月々の料金が15~20万円程度となっています。
<こんな方におすすめ>
- ある程度元気なうちから便利で見守りのある安心な暮らしがしたい
- 要介護度が上がり、場合によっては施設を移ることになっても差し支えない

サービス付き高齢者向け住宅
安否確認や生活相談等のサービスが付き、食事を提供するところもあります。介護サービスは外部業者を利用しますが、訪問介護事業所やデイサービスなどが併設されているところもあります。
費用としては、契約時に敷金として家賃の2~4ヵ月分(数十万~数百万円)、月々の生活費は、家賃・管理費・共益費・水道光熱費・食事代などで20~100万円程度です。
<こんな方におすすめ>
- 初期費用を安く抑えたい
- 要介護度が上がり、場合によっては施設を移ることになっても差し支えない

シニア向け分譲マンション
シニア向け分譲マンションとは、高齢者が安心して快適に暮らせるように設計された分譲マンションで、物件によってはシニア向けの娯楽施設が備えられていたり、コンシェルジュや食事提供などのサービスを利用できる場合もあります。介護サービスは外部業者を利用しますが、訪問介護事業所が併設され、日中看護師が常駐している物件もあります。
価格は数千万~数億円と幅があり、住宅ローンの利用も可能です。一般的な契約形態は所有権方式のため、売却、賃借、譲渡、相続ができます。月額の生活費は管理費・修繕積立金・水道光熱費・食事代等で10~30万円程度が目安です。
<こんな方におすすめ>
- 相続や売却、賃貸等を視野に入れて資産価値を重視したい
- 戸建て住宅を売却して分譲マンションに移りたい

シニア向け住宅を選ぶ際のポイント
シニア向け住宅を選ぶときは、以下の4つのポイントを押さえておく必要があります。
- 身体状況を考慮する
- 費用を確認する
- 複数の施設を比較する
- 必要なお金を把握し備える
身体状況を考慮する
介護度の度合いや認知症の有無などによって、入居できる施設は変わってきます。
ある程度は自立して生活できるのか、支援が必要か、介護が必要か、認知症への対応が必要かなど、まずは現在の身体状況や今後の身体状況を確認します。そのうえで、施設にどのようなサービスを求めるのか、どのような生活をしたいのかを考えて施設を選ぶのがおすすめです。
ただし、同じ種類の施設でも、施設によって受け入れの可否が異なる場合もあります。
費用を確認する
施設の利用には、居住費や食費、管理費、サービス費などの費用がかかります。
一般的に、公的な施設のほうが民間の施設より費用は低くなるため、費用を抑えたい場合は公的施設がおすすめです。ただし、介護度やサービス内容によっては、公的施設でも高額になる可能性があるため注意してください。
多くの場合、シニア向け住宅の利用は長期間にわたります。長期間の利用を考慮し、無理なく費用を支払えるかどうかを確認することが重要です。
複数の施設を比較する
シニア向け住宅には複数の種類があり、入居する人の状態によっては向き不向きがありますし、契約形態や費用が異なります。また、同じ種類の住宅でも費用や設備、サービスなども多様です。
シニア向け住宅への入居を検討する際は、インターネットや資料請求などによる情報収集を行うことはもとより、実際に複数の施設を見学するなどして比較検討することが重要になってきます。
とはいえ、候補があまりにも多く決めかねることもあるでしょう。金融機関のなかにはシニア向け住宅に関する情報提供を行っているところもありますので、相談してみてください。
必要なお金を把握し備える
介護が必要になっても、住み慣れた家で暮らしたいと考える方もいます。在宅介護でも、ヘルパーや訪問介護などの介護保険サービスを利用可能ですので、介護保険を活用しながら生活環境を整えていきましょう。
在宅介護時の介護費用は介護度によって変わります。要介護1~5のおおよその費用感は以下の表のとおりです。ただし、利用するサービスによって費用は大きく異なるため、表で示した金額はあくまで目安と考えてください。
在宅介護時の介護費用例
要介護度 | 月額費用例 |
---|---|
要介護1 | 1万7,000円 |
要介護2 | 2万3,000円 |
要介護3 | 7万8,000円 |
要介護4 | 9万2,000円 |
要介護5 | 10万9,000円 |
在宅介護を選択した場合でも、要介護度が3を超えると施設への入居を検討する方が増えてきます。入居するか否かの判断材料となる施設の費用例は、以下のとおりです。施設によって費用が大きく異なるため、準備できた資金に合わせて選んでください。
月々の料金 | 入居一時金 | |
---|---|---|
住宅型有料老人ホーム | 約15~20万円 | 約300~5,000万円 |
介護付き有料老人ホーム | 約20~30万円 | 約500~7,000万円 |
特別養護老人ホーム | 約7~25万円 | ‐ |
サービス付き高齢者向け住宅 | 一般住宅の家賃+管理費など(約3~9万円) ※別途、敷金や生活費がかかる |
‐ |
横スクロールできます。
また、資金を十分に準備していても、介護が必要になる、認知症になるなどの事態が発生したとき、本人が銀行に資金を引出しに行けなくなる可能性があります。家族がお金をいつでも引出せるよう、元気なうちに準備をしておくのも大切です。
りそなの信託商品ではそういった将来に備えるためのサービスもあります。サービスを利用すると、指定された家族が本人に代わって資金を引出すことが可能です。
まとめ
シニア向け住宅には、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの公的施設と、介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、シニア向け分譲マンションなどの民間施設があります。
民間のシニア向け住宅の中にはさまざまな種類がありますが、要介護度が比較的高くなっても安心なのが介護付き有料老人ホーム、そのほかは比較的要介護度が低い方またはお元気な方を対象としています。また、施設の種類によって契約方式が異なり、一般的には有料老人ホームは利用権方式、シニア向け分譲マンションは所有権方式、サービス付き高齢者向け住宅は賃貸借方式という違いがあり、費用のかかり方も異なります。
このようにシニア向け住宅には複数の種類があり、入居者の状態によって向き不向きがあります。また、契約形態や費用が異なります。更に、同じ種類の住宅でも費用や設備、サービスなども多様です。
シニア向け住宅を選ぶ際は、身体の状況や費用などをふまえ、複数の施設を比較しましょう。
りそなでは、シニア向け住宅に関する情報提供※を行っておりますので、お気軽にご相談ください。
- ※各銀行、お口座をお持ちの個人のお客さまのみ対象となっております。
- りそな銀行
- 埼玉りそな銀行
- 関西みらい銀行
- ※りそな銀行のみ
本記事は2025年5月27日の情報に基づいて作成しておりますが、将来の相場等や市場環境等または制度の改正等を保証する情報ではありません。