【2024年改正を解説】iDeCoの掛金上限額や申込み方法はどう変わる?
公開日:2022/11/29
更新日:2024/11/26

老後資金を準備するために設けられたiDeCo(イデコ)。
iDeCoは、自ら拠出した掛金を積立て、自分で選択した金融商品で運用しながら資産を形成する私的年金制度の一つです。
2024年12月施行の改正により、会社員や公務員の掛金拠出限度額が一部引上げられるほか、「事業主の証明書」が廃止されることで申込みをよりスムーズに行えるようになりました。
今回は、iDeCoの2024年12月施行の改正における主な変更点やメリットについて解説します。
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元銀行員。若年層から高年層まで幅広い資産運用の提案を行なう。メディアを通じて、より多くのお客様に金融の知識を伝えたい気持ちが強くなり、退職を決意。
現在は、編集者として金融機関を中心にウェブコンテンツの編集・執筆業務に従事している。
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2024年改正 iDeCoがより使いやすく
国民年金基金連合会の発表によると、2024年7月時点におけるiDeCoの当月新規加入者数は3万4,777人で、既加入者を含めた加入者数は339万9,611人です。
iDeCoは、これまで社会情勢に応じて何度か改正が行われており、2024年12月にも新たな改正が実施され、さらにメリットのある制度となることが見込まれています。
今回の改正は、第2号被保険者(会社員や公務員)としてiDeCoに加入している方が対象です。具体的には、確定給付企業年金をはじめとする他制度に加入している場合、2025年1月の引落しから、掛金の上限額が月額1万2,000円から2万円へと引上げられます。
また、個人口座から掛金の引落をされる方は、これまで加入時などに提出が必要だった「事業主の証明書」が廃止され、申込みの手続きをよりスムーズに行えるようになりました。
なお、掛金の上限額を変更するための条件については後述します。
iDeCo制度のおさらい

ここで一度、iDeCo制度の概要を振り返っておきましょう。
公的年金ではなく私的年金制度
iDeCoは「個人型確定拠出年金」の愛称で、公的年金(国民年金や厚生年金)に加えて一定額の掛金を積立てて(確定拠出)、自分自身で運用し、60歳以降に受取る年金制度です。
公的年金と異なり、加入が任意であり、申込みや掛金の拠出、運用までのすべてを加入者自身で行います。
iDeCoでは、掛金とその運用益の合計額を、老後に年金として受取ることが可能です。そのため、公的年金とiDeCoを組み合わせれば、老後の生活資金をより充実させる効果が期待できます。
iDeCoは、月々最低5,000円から拠出限度額(職業等により異なる)まで掛金を積立てることができ、金額は1,000円単位で自由に設定が可能です。掛金は原則毎月払いですが、所定の手続きをすれば1年払いや半年払いなど、まとめて払うこともできます。
積立てた資産は、60歳以降に一時金か年金(分割)、または一時金と年金の併用により受取ります。受取る金額は自分で選択した運用商品の運用成果によって変わるので、自分の運用方針(安定性を重視、積極的に運用など)を決めた上で商品を選ぶことが大切です。
掛金の金額や運用商品は途中で変更が可能なため、結婚・転職といったライフプランの変化にも柔軟に対応できます。ただし、原則60歳まで解約・引出しはできません。
iDeCoは税制上のメリットが大きい
iDeCoにおける最大のメリットは、税制優遇があることだといえます。
iDeCoに拠出した掛金は全額所得控除の対象となるため、課税所得金額の減少により、所得税や住民税の軽減が可能です。
一般的に、金融商品で運用益が出た場合、運用益に対して20.315%の源泉分離課税が課されますが、iDeCoの運用益は課税されることなく再投資されます。そのため、一般的な投資に比べて税負担が少なく、効率的な資産形成が期待できるでしょう。
また、iDeCoは受取時に税制優遇があることも特徴です。iDeCoの運用益を一時金として受取る際には「退職所得控除」、年金形式で受取る際には「公的年金等控除」が適用されます。
このような税制上のメリットにより、iDeCoは老後資金を効率的に準備する手段として注目されているのです。
- ※所得税・住民税の軽減効果は、ご本人の課税所得・掛金額により異なります。第3号被保険者など課税所得がゼロの方の場合、所得税・住民税の軽減効果はありませんので、ご注意ください。
改正ポイント①申込み書類が少なくなる

会社員や公務員がiDeCoに加入する際や転職時には、これまで勤務先の人事部などが作成した「事業主の証明書」を提出する必要がありました。しかし、2024年12月からは「事業主の証明書」の提出が原則不要となり、iDeCoの申込みの手続きが簡素化されます。
ただし、掛金の払込方法として「事業主払込」を選択する場合は、引き続き「事業主の証明書」の添付が必要です。
iDeCoに加入する際は、取扱いのある金融機関への申請を行わなければなりませんが、現在一部の金融機関では、オンラインで加入手続きを行えます。オンライン申込みが可能な金融機関を利用すれば、窓口に出向く手間が省けるため、よりスムーズに手続きを行うことが可能です。
改正ポイント②DB等利用者の掛金上限額が引上げに
掛金上限額の変更は、勤務先で企業型確定拠出年金(DC)や確定給付企業年金(DB)等、ほかの企業年金制度(※)に加入している会社員や公務員が対象です。
2025年1月の引落し分より、条件付きで月額1万2,000円から2万円に引上げられるため、将来に向けてより多くの資産を形成しやすくなります。
なお、加入者の掛金上限額は引上げられますが、各月の企業型確定拠出年金(DC)の掛金額や、確定給付企業年金(DB)等の掛金相当額と合算して、上限の5万5,000円を超えることはできません。
そのため、企業型確定拠出年金(DC)の事業主掛金や、確定給付企業年金(DB)等の他制度掛金相当額によっては、iDeCoの拠出限度額が減少する、または拠出できないおそれがある点に注意が必要です。

具体的な拠出可能額は個々の状況によって異なるため、詳細は勤務先に確認することをおすすめします。
また、確定給付企業年金(DB)等、ほかの制度に加入している場合、iDeCo掛金の拠出方法は毎月定額のみ可能となります。すでにiDeCoに加入し、掛金が年単位拠出になっている場合は、毎月定額拠出への変更手続きを行う必要があります。
なお、2024年12月の改正により、iDeCoの掛金額が増える一方で負担する口座管理手数料は変わりません。コストの影響が相対的に下がることで、運用パフォーマンスの向上が期待できると言えます。
- ※DB等の他制度とは、確定給付企業年金(DB)、厚生年金基金、私立学校教職員共済制度、石炭鉱業年金基金、公務員の退職等年金給付(共済)をいいます。
まとめ
2024年12月の改正により、iDeCoの掛金上限額が引上げられることで、iDeCoへの加入を検討する方もいるでしょう。
iDeCoは国が推奨する私的年金制度の一つで、公的年金を補完し、老後の経済的基盤を強化する役割を期待されています。掛金が全額所得控除の対象となるほか、受取時に退職所得控除や公的年金等控除が適用されるなど、税制面で多くのメリットがあることが特徴です。
iDeCoは長期的な視点での資産形成を目的とするため、早期に始めれば複利効果により、さらに豊かな老後生活に向けて準備できるでしょう。将来に備えて定期的な積立を考えている方は、早めにスタートすることをおすすめします。
- ※当記事は2024年10月5日現在の税制・関係法令などに基づき記載しております。今後、税務の取扱いなどが変わる場合もございますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。