年金未納リスク「どうせなくなるから払わない」のデメリット

2023/06/09最終更新

年金未納リスク「どうせなくなるから払わない」のデメリット

老後の生活を支える年金制度に関して、様々なニュースが飛び交っています。「本当にもらえるの?もらえる金額が少なくなるのでは?」という不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。年金制度を正しく知って、老後も安心して生活するための資金準備について考えてみませんか。ここでは、今さら聞けない年金制度や年金の増やし方、保険料を払わなかった時のデメリットについてお伝えいたします。

年金の仕組み

年金制度は、長い期間にわたって財政のバランスがとれるように運営していかなければなりません。どのように年金制度を運営していくかによって、2つの財政方式があります。「賦課方式」と「積立方式」です。賦課方式とは、加入者の保険料を、その時の高齢者給付に充てる「仕送り」のような方式です。積立方式は、将来自分に給付される年金を積み立てていく方式です。日本の年金制度は、賦課方式が採用されています。

それぞれにメリット・デメリットがあります。賦課方式では、年金受給者と加入者世代の比率によって保険料が決まるため、年金受給者が増えれば保険料が増えたり、年金の削減が必要となることがデメリットですが、インフレや給与水準の変化に対応しやすい、つまり、経済変動の影響を受けにくいというメリットがあります。積立方式はその逆で、少子高齢化などの人口変動の影響は受けにくいのですが、インフレによる価値の目減りや、運用環境の悪化によって自分の年金額が左右されてしまうというデメリットがあります。

年金は本当にもらえるの?どのくらい?

年金はどれくらいもらえるのでしょうか。今後の見通しを知るために、財政検証(2019年)を見てみましょう。年金制度の財政検証とは、厚生労働省が5年ごとに行うもので、公的年金の給付水準や年金の財源について調査し、年金制度の今後の見通しを投影するものです。

財政検証によると、夫婦2人がもらえる金額は22万円、現役時代の手取り平均収入35.7万円に対する割合は61.7%でした。(2019年度。夫が厚生年金+基礎年金、妻が基礎年金のみの場合)現役時代の収入に対する年金額の比率を「所得代替率」といい、公的年金の給付水準を示す指標となっていますが、将来は50%程度まで低下する見通しです。

年金未納リスク「どうせなくなるから払わない」は危険

ここまで見て、「将来もらえる年金が少なくなるなら、保険料を納めたくない」「保険料を払わず、自分で積み立てたい」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。厚生年金に加入していない自営業やパート・アルバイトの方は、自分で国民年金を納付するため、保険料を納付せず、「未納」となっている方もいます。会社員の方(第2号被保険者)が転退職等で、第1号被保険者になった場合は、速やかに国民年金への変更手続きを行いましょう。

しかし、国民年金保険料を払わないと、失うのは将来の年金だけではありません。年金には「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」という3つの保障があり、万が一の時にも年金がもらえるのですが、受給するためには「保険料納付要件」を満たしている必要があります。

受給要件に、初診日(遺族年金の場合は死亡日)の属する月の前々月まで「直近の1年間に保険料の滞納がないこと」「被保険者期間の3分の2、保険料納付済期間や免除期間があること」とあるため、保険料を納めていないと万が一の時に困ってしまうかもしれません。初診日(死亡日)において被保険者であることも要件です。

厚生労働省「厚生年金保険・国民年金保険事事業の概況(2020年)」によると、障害年金、遺族年金の受給者数と受給額は、障害基礎年金が204万人で月々約7万2,000円、遺族基礎年金は9万人で月々約8万4,000円です。障害年金や遺族年金がもらえることを考えると、保険料は払っておくべきでしょう。

まだ間に合う?年金の受給額を増やす方法

老齢基礎年金を受給できるのは、「加入期間が10年以上」ある人です。つまり、保険料を9年間支払っていたとしても、将来年金は1円ももらえません。ただし、加入期間には保険料を納めた月だけでなく、「免除」や「猶予」の期間を含めることができます。

免除とは、本人・世帯主・配偶者の所得が少なく、経済的に保険料を納めることが困難な場合などに申請することで、保険料が免除される制度です。免除される金額は、全額、4分の3、半額、4分の1の4段階があります。免除期間があっても将来の老齢年金額には反映され、障害年金や遺族年金の納付要件も満たします。

猶予制度は、申請によって保険料を納付する必要はないことは免除制度と同じですが、将来の年金額に反映されない点や、所得の判定が本人・配偶者となっている点が異なります。また、猶予制度が利用できるのは50歳未満と限定されている点も免除制度とは異なります。

保険料の支払いが難しい場合は、未納(何も手続きをしない)のまま放置せず、免除や猶予の申請をしておきましょう。免除や猶予を受けていたとしても、10年以内であれば保険料を「追納」することで、年金額を増やすこともできます。

免除や猶予期間を含めても加入期間が10年に満たない場合や、納付月数が40年未満で年金が満額支給されない場合は、60~65歳(条件を満たせば70歳)の間に追加で保険料を納めて年金額を増やすことができます。これを「任意加入制度」といいます。

その他、第1号被保険者(自営業者など)の年金を増やす方法としては、毎月の国民年金保険料に400円を上乗せして払うことで、将来の年金を増やせる「付加年金」があります。

もらう年金を「繰り下げ受給」する方法もあります。繰り下げ受給とは年金を受け取る年齢を遅らせることで、65歳から受け取るのではなく、66歳以降に1ヵ月単位で受給開始時期を選択できる制度です。最長75歳まで繰り下げることができます。

年金の増額率は、「65歳に達した月から繰り下げ月の前月までの月数×0.7%」です。たとえば70歳まで繰り下げた場合は、42%、75歳まで繰り下げると84%も増えます。

ただし、寿命によっては受取る年金の総額が結果的に少なくなってしまう可能性があるので、受取開始までの生活費を確保できているか、健康状態に不安はないかなどを考慮して受取時期を検討しましょう。

老後対策で考えたい他の方法

老後の生活を豊かにするために、今からできることは2つあります。

1つは、老後資金の準備をご自身で準備するこことです。第1号被保険者(自営業者など)の国民年金に上乗せする公的な年金制度として、国民年金基金とiDeCoがあります。どちらも税制優遇を受けながら老後の資産を積み立てられる制度です。二つの制度をバランスよく組み 合わせて活用しましょう!

  • 国民年金基金
    確定給付型(将来の受給額があらかじめ確定しています。)

    1. 1終身年金が基本ですので、生涯にわたって受け取ることができます。
    2. 2掛金は全額、所得控除の対象です。
    3. 3受取時は公的年金等控除の対象です。
  • iDeCo
    確定拠出型(毎月一定額の掛金を拠出、受給額は運用実績によって異なります。)

    1. 1掛金は全額、所得控除の対象です。
    2. 2自分で運用できます。運用益は非課税です。
    3. 3受取時は退職所得控除もしくは公的年金等控除の対象です。

もう1つは老後の収入を確保すること、つまり老後も働き続けることです。老後の働き方は、雇用される働き方だけでなく、独立する道もあります。現役世代ほど生活費は必要ないはずなので、趣味に使える程度の収入を得て、ゆとりある暮らしを手にするものいいでしょう。

年金だけでは老後に満足のいく暮らしはできないかもしれませんが、なくてはならないものです。保険料はきちんと納めて、プラスアルファで自分自身でも資産形成や老後対策をし、老後貧困にならないように今から準備をしておきましょう。

  • 当記事は2023年6月9日現在の税制・関係法令などに基づき記載しております。今後、税務の取扱いなどが変わる場合もございますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

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