LCCM住宅とは?認定基準や補助金をわかりやすく解説!

2022/09/28最終更新

LCCM住宅とは?認定基準や補助金をわかりやすく解説!

「LCCM住宅」という言葉を、最近知ったという方も多いかもしれません。

LCCM住宅は、住宅性能の基準の一つで、高気密・高断熱設計などにより作られた建物のことを言います。

LCCM住宅にすると、夏は涼しく、冬は暖かくなり、光熱費が抑えやすくなるという特徴があります。

今回は、LCCM住宅の概要を分かりやすくまとめ、LCCM住宅の認定基準や補助金、メリットや注意点をご紹介します。

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東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強をはじめる。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はジャザサイズ。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。

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LCCM住宅の基礎知識

まずは、LCCM住宅の概要と社会的背景について説明します。

ライフ・サイクル・カーボン・マイナス住宅のこと

ライフ・サイクル・カーボン・マイナス住宅のこと

LCCM住宅とは、ライフ・サイクル・カーボン・マイナス住宅の略称です。住宅の性能を評価する基準の一つであり、政府もLCCM住宅の普及を後押ししています。

LCCM住宅では、建設・運用・廃棄時のCO2排出量を最小限に抑えます。さらに、太陽光発電などの再生可能エネルギーの活用や省エネ設備・設計により、住宅の建築から廃棄までのライフサイクルを通じて、CO2の収支をマイナスにできるのです。

また、LCCM住宅では「軸組み(柱・基礎・壁など骨組みにあたる部分)」に国産材を使った木造住宅を推奨しています。

長年、日本の木材自給率は低水準であることが問題視されてきましたが、2020年には48年ぶりに木材自給率40%を超えるまで回復しました。

しかしながら、現状としては半分以上が海外からの輸入材に頼っています。海外から木材の輸入をすると、トラックや船で長距離を運ぶ必要があり、必然的にCO2の排出量が増えてしまいます。

一方、国産材を活用するLCCM住宅ならば、木材の運搬距離が短くなり建築段階でのCO2排出量の削減が可能です。実際、国産材を使った住宅では、欧州材に比べてCO2排出量が1/5程度に抑えられるといわれています。

LCCM住宅とZEHの違い

LCCM住宅と同じく環境に配慮した住宅としてZEH(ゼッチ/ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)があります。ZEHは太陽光発電などでエネルギーを創り、高い断熱性能や高効率の設備を用いて年間のエネルギー消費をゼロ以下にする住宅です。

ZEHが暮らしのエネルギーに着目しているのに対し、LCCM住宅では建築や廃棄も含めた住宅のライフサイクル全体での、CO2の収支マイナスを目指している点に違いがあります。LCCM住宅は、ZEHを超える、環境に配慮した高基準の住宅といえるでしょう。

ZEH(ゼッチ)とは?ZEH住宅のメリット・デメリットや補助金制度も詳しく解説

LCCM住宅の普及が促進される
理由

LCCM住宅の普及が促進される背景には、地球温暖化という大きな課題があります。

地球温暖化を防止するには、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出削減が必要不可欠です。政府も、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に取り組んでいます。

実は、日本の温室効果ガスは約60%が家庭での消費から排出されているといわれており、目標の達成には私たち一人ひとりのライフスタイルの転換が欠かせません。

建築・運用・廃棄までトータルで、CO2排出をゼロにできるLCCM住宅の普及は、豊かな暮らしを守りながら、地球規模での脱炭素社会の実現へとつながります。

LCCM住宅の3つの特徴

では、LCCM住宅の特徴を具体的に見ていきましょう。

1光熱費を抑えられる

LCCM住宅では居住中のエネルギー消費量を最小限にするため、光熱費が抑えられます。

LCCM住宅は太陽光パネルなどを活用した家発電だけではなく、高気密・高断熱設計により一般的な住宅に比べてUA値が下がるため、冷暖房の消費量を削減できます。

UA値とは外皮平均熱貫流率、つまり住宅の断熱性能や気密性能を測る値です。住宅の中から外へ、屋根や壁、床を通じてどれだけの熱量が逃げているのかわかる数値で、LCCM住宅では地域ごとの基準を満たすことが条件となっています。

一つの住宅に数十年住み続けることを考えると、毎月支払う光熱費が抑えられるのは家計にとって大きなメリットになるでしょう。

2快適に暮らせる

高気密・高断熱のLCCM住宅では、夏は涼しく冬は暖かい快適な暮らしが実現可能です。室内が暮らしやすい気温に保たれることで体へのストレスが軽減され、住む人の健康維持にも役立ちます。

実際に断熱性能の高い住宅は、居室とお風呂場・脱衣所などとの温度差が減り、ヒートショックの予防効果が期待できます。居室の平均気温が高いと、高血圧性疾患や脳血管疾患、肺炎のリスクも減るという研究結果もあるほど、住まいの環境と健康は密接に関わっているのです。

3社会貢献につながる

LCCM住宅には私たちの生活に密接したメリット以外にも、日本の森林や林業を守るという社会貢献につながる側面もあります。

日本では、戦後の住宅供給の増加にともなって植林が進められていましたが、50年以上経った今も木々が十分に活用されず乱立した状態です。

本来、森林にはCO2を吸収するという重要な役割がありますが、樹木のCO2吸収量はピークを過ぎると減少していくため、乱立した状態では光合成もうまく進みません。

しかし、LCCM住宅で国産材を使えば適齢期を迎えた木々が伐採され、新たな植林のサイクルを生み出せます。伐採した木材は燃やさない限りCO2を排出しないため、住宅資材として使用すればCO2の排出を最小限に抑えられるのです。

国産材の使用は低迷している国内の林業を活性化させ、地方での新たな雇用創出にもつながるでしょう。

LCCM住宅の施工例

LCCM住宅の施工例

出典:国土交通省 国土技術政策総合研究所ホームページ(住宅研究部住宅情報システム研究官 桑沢 保夫「LCCM住宅の概要」)
(2022年8月15日に利用)

実際のLCCM住宅とはどのようなものなのでしょうか。ここでは、2011年に茨城県つくば市内に建設された、LCCM住宅デモンストレーション棟を例に見てみましょう。

国産材などのCO2の発生が
少ない材料

(例)国産材を使用した木造住宅、基礎に高炉セメントコンクリートを活用

木造住宅は、鉄骨造やRC造に比べて建築時のCO2排出量を1/3から1/4程度に抑えられます。さらに国産材を使用することで、輸送時のCO2排出量も削減可能です。

また、デモンストレーション棟では基礎のボリュームを最小限にし、CO2排出量が少ない高炉セメントを使っています。

省エネに特化した設計や設備

(例)高断熱仕様:高性能断熱材、高気密サッシなど
高効率設備:高効率エアコン、高効率照明(LEDなど)、高効率給湯器、燃料電池など

LCCM住宅では断熱性や気密性を高め、暮らしのなかでの冷暖房を使用する量を軽減しています。さらに高効率な設備を導入することで、エネルギーの消費量を最小限に抑える仕組みです。

自然エネルギーの活用

(例)太陽光発電システム、太陽光給湯集熱パネルの設置、光や風を取り込む工夫(換気塔や大開口窓の設置)

自然エネルギーを最大限活用する点も、LCCM住宅のポイントです。太陽光を活用しエネルギーを創るだけではなく、窓を大きく設けて自然光や風を取り入れるなど、エネルギーを極力使わずに快適に暮らす工夫が施されています。

LCCM住宅における2つの認定基準

LCCM住宅の認定は一般財団法人住宅・建築SDGs推進センターが行っています。

  • 対象建築物:新築もしくは竣工後3年以内の一戸建て専用住宅
  • 申請者:建築主、設計者、施工者、販売者など
  • 認定料:3万3,000円/戸(税込)

認定条件として、次の2つの方法で認定基準を満たす必要があります。

  • LCCM適合判定ルート
    日本サステナブル建築協会が開発したLCCM適合判定ツールにて「適合」である
  • CASBEE認証ルート
    「CASBEE」(建築環境総合性能評価システム)にて環境効率ランクがSまたはAであり、ライフサイクルCO2ランクが緑☆☆☆☆☆(5つ星)である

認定ルートは上記のように2つありますが、いずれの場合も建設から居住、修繕や解体まで建築物のライフサイクルを通じてCO2の排出量が少なく、環境負荷が軽減できる住宅かが基準になります。

LCCM住宅に適用できる補助金は?
いつから使える?

LCCM住宅に適用できる補助金は?いつから使える?

ここでは、LCCM住宅が使える補助金制度を見ていきましょう。2022年8月現在、国土交通省が行っている「LCCM住宅設備推進事業」があります。

補助要件

補助を受けるには、新築の住居専用戸建て住宅で以下のような要件を満たすことが必要です。

  • 強化外皮基準を満たすもの
  • 再生可能エネルギーを除き、一次エネルギー消費量が現行の省エネ基準値から25%削減されているもの
  • ライフサイクルCO2の評価結果が0以下となるもの など

LCCM住宅には、壁や窓など住宅の表面からの熱損失量以下であること、つまり外皮基準が設定されており、ZEHと同様の強化外皮基準をクリアしなければなりません。

なお、一時エネルギーとは石油や石炭、天然ガスなどを指します。ZEHの基準は削減量20%以上であるのに対し、LCCM住宅で補助を受けるにはそれを超える25%の削減が必要です。

補助費用

  • 補助限度額 140万円/戸

ただし、以下の2つの費用を合計した額の1/2までが上限です。

  • 設計費
    環境効率や省エネルギー性能について、認証や認定の所得にかかった費用を指します。LCCM住宅認定は補助の対象ですが、確認申請や構造計算、長期優良住宅の認定などにかかる費用は含まれません。
  • 建築工事などにおける補助対象工事のかかり増し費用
    外皮断熱工事や開口部断熱工事、設備機器工事、耐震強化工事が含まれます。かかり増し費用とは、一般設備に比べてLCCM住宅にすることでかかった費用の、差額分のことです。

LCCM住宅を選ぶ際の
3つの注意点

LCCM住宅を選ぶ際の3つの注意点

LCCM住宅を選ぶ際は、次の3つのポイントに注意しましょう。

1建築会社やハウスメーカーを選ぶ必要がある

LCCM住宅という概念は10年以上前から存在していますが、一部の大手ハウスメーカーが2022年にLCCM住宅の発売を開始したばかりです。現状、すべての建築会社やハウスメーカーがLCCM住宅に対応できるわけではありません。

建築会社やハウスメーカーを選ぶ際は、国産材を積極的に使っているか、断熱性能や気密性能が十分かなど、LCCM住宅の要件を満たせるか確認することが重要です。特に、構造に使われる木材は簡単には変更できないケースもあるでしょう。

LCCM住宅を選択したくても、身近に建築できる会社が見つからない可能性もあります。とはいえ、LCCM住宅の開発を進めている建築会社やハウスメーカーもあるため、まずは対応できるのか問い合わせることをおすすめします。

2間取りや住宅の形状が制限される可能性がある

LCCM住宅ではCO2排出量の削減を第一に考えた、省エネ・創エネ重視の住宅です。

CO2排出量の収支をゼロにするには、多くの太陽光パネルが必要になります。場合によっては、太陽光パネルの設置量を確保するために、屋根の形状や間取りが制限される可能性もあります。

LCCM住宅にする場合、ご自身の希望するデザインや間取りが実現可能なのか、建築会社と相談しながら慎重に検討する必要があるでしょう。

3コストがかかる

LCCM住宅にするためには、太陽光パネルや高断熱サッシなどの設備を整える必要があります。一般的な住宅を建てるよりもコストがかかる点は、LCCM住宅のデメリットともいえるでしょう。

とはいえ、LCCM住宅には毎月の光熱費が抑えられる、補助金が受けられるなどのメリットもあります。初期費用に目が向きがちですが、長期的な視点も持ちながら判断することをおすすめします。

まとめ

LCCM住宅は、住宅の建築から運用、廃棄までトータルでのCO2排出量をゼロにする住宅です。光熱費が抑えられるだけではなく、環境面への負荷が軽減される、日本の森林保護に貢献できるなど、個人にも社会全体にもメリットの大きい次世代の住宅といえます。

りそなグループでは、太陽光発電を設置した住宅やZEH、長期優良住宅を優遇するプランがあります。環境に配慮されたLCCM住宅であれば、金利特別プランやポイントキャンペーンが適用できる可能性も高いでしょう。

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りそな銀行・埼玉りそな銀行
関西みらい銀行

本記事は2022年9月28日時点の情報に基づいて作成しておりますが、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。

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