どうする?定年後の住宅ローン
2022/01/28最終更新
一般的に住宅ローンは定年までに完済できるように組むのが理想的とされています。しかし、マイホームの取得時期が遅い場合や、退職金での完済を見込んで長めの返済期間を設定した場合など、定年後も住宅ローンが残っているケースがあります。
近年では定年後に再雇用で働く人も増えていますが、収入は減ることが多いため、月々の住宅ローン返済が負担に感じられることも。完全リタイアして年金生活に入ればなおさらでしょう。
一方、退職金で住宅ローンを完済すれば、月々の返済はなくなりますが、手元の資金が減ることに不安を感じるという方も多いのではないでしょうか。
このように何かと悩ましい定年後の住宅ローンについて考えます。
- 私が書きました
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- 主なキャリア
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大手生命保険会社、証券会社勤務を経て、2019年りそな銀行入社。
- ※りそなグループが監修しています
「退職金で繰り上げ返済」が正解とは限らない
定年後に残った住宅ローンについて、退職金で繰り上げ返済することが正解と考えられていた時代もありました。しかし、近年では社会経済情勢の変化もあって「退職金で繰り上げ返済」が常に正解とは限りません。以下のような点を踏まえたうえで、あえて繰り上げ返済しないという選択肢もありそうです。
退職金の減少
定年退職金の平均的な水準は残念ながら減少傾向にあります。退職金の平均水準については、厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、勤続20年以上かつ45歳以上の大卒者の定年退職金の平均は、1997年の2,871万円をピークに2017年には1,788万円と約1,000万円も減少しています。
過去には退職金で住宅ローンを繰り上げ返済してもセカンドライフの備えとして心配のない金額の退職金を受け取れた時代があったのかもしれません。しかし、現在では退職金で繰り上げ返済をすると残った金額ではセカンドライフの備えとして心許ないという方も多いのではないでしょうか。
住宅ローン金利の低下
繰り上げ返済の最大のメリットは、将来支払うはずだった金利分の節約です。しかし、近年では住宅ローン金利の低下により、高金利時代に比べて繰り上げ返済のメリットは小さくなっています。低くなった住宅ローン金利よりも高い利回りで退職金を運用することができれば、繰り上げ返済しない方が合理的といえます。
団体信用生命保険の消滅
住宅ローンの多くは団体信用生命保険がついており、借り手が万一の場合には、以後の返済が免除される仕組みとなっています。住宅ローンを繰り上げ返済するとこうした保険機能も消滅する点には留意が必要です。
繰り上げ返済をせずに毎月の返済額を減らすには?
退職金で住宅ローンの全部または一部繰り上げ返済を行えば、毎月の返済額をなくしたり、減らすことは可能ですが、一方で手元の資金が減ってしまいます。つまり、「あちら立てれればこちらが立たず」の関係です。
ここでは、繰り上げ返済をせずに毎月の返済額を減らす方法を解説します。
方法① 低金利のローンに借換え
高金利時代のローンがそのまま残っている場合には、現在の低金利ローンに借換えることによって、返済額を軽減することができます。
借換えには諸費用もかかるため、目安としてローン残高が1,000万円以上、返済期間が10年以上、借換え前後の金利差が1%以上ある場合に、メリットがあるといわれています。
ただし、これはあくまで目安ですので、この条件を満たさなくても借換えメリットが得られる場合もあります。借換えを検討する際には、金融機関の窓口で試算をしてももらうとよいでしょう。窓口に出向かなくてもネットで試算できる場合もあります。
方法② リバースモーゲージ型住宅ローンに借換え
近年の不動産価格上昇で自宅の資産価値が高まっているケースなどでは、リバースモーゲージ型住宅ローンと呼ばれるタイプの住宅ローンに借換えることで、ローンの返済負担を軽減する方法もあります。
リバースモーゲージ型住宅ローンとは、自宅を担保とした住宅ローンで、毎月の支払いは利息のみ、債務者(借り手)の死亡時に元金を一括で返済するタイプのローンです。夫婦で連帯債務者になれば、例えば夫死亡後、妻が死亡するまで自宅に住み続けることができます。債務者の死亡後は、相続人が自宅を売却して一括返済する必要がありますが、売却代金で返済できない場合でも残額は請求されない仕組みなので安心です。
子どもがすでに自宅を保有している等の理由で、自宅を残す必要がないご夫婦などには有力な選択肢といえそうです。
また、リバースモーゲージ型住宅ローンには通常の住宅ローンと違って年齢制限の上限がないことも特徴です(下限は金融機関により50歳以上など)。
まとめ
退職金で住宅ローンの全部または一部を繰り上げ返済すれば、毎月の返済額を減らすことは可能ですが、一方で手元の資金が減ってしまう不安が残ります。繰り上げ返済の最大のメリットは、将来支払うはずだった金利分の節約ですが、近年住宅ローン金利は低下しています。繰り上げ返済により節約できる金利があまり多くないのであれば、繰り上げ返済しないという選択肢も考えられます。
繰り上げ返済をせずに毎月の返済額を減らす方法として、過去の高金利ローンを低金利ローンに借換える、リバースモーゲージ型住宅ローンに借換えて金利のみ返済する、といった方法があります。
こうした住宅ローンの借換えに関する試算等をご希望の場合は、「住宅ローン残高全国No.1」のりそなグループまでお気軽にご相談ください。
本記事は2022年1月28日の情報に基づいて作成しておりますが、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。
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