確定拠出年金で実践する「時間分散」投資~ドルコスト平均法とは

2022/11/29最終更新

確定拠出年金で実践する「時間分散」投資~ドルコスト平均法とは

確定拠出年金は、企業型(企業型DC)・個人型(iDeCo(イデコ))いずれも、老後に必要な資産を形成するための制度です。大切な老後の生活資金なので、資産運用はリスクを抑えながら堅実かつ効果的に行いたいですね。

価格変動リスクを抑えるのに有効とされる手法の1つに「ドルコスト平均法」があります。確定拠出年金で毎月一定額を積立てていけば、自然とドルコスト平均法を実践できます。

ドルコスト平均法とは

金融商品は日々価格(時価)が変動しています。利益を出すためには、安い時に買い、高い時に売ればよいのですが、そのタイミングを見極めるのはプロの投資家でも困難です。そこで、手持ちの資金で一度に金融商品を購入するのではなく、同値もしくは同数の商品を時期をすらして定期的に購入することで、リスクを減らす投資手法があります。

定量購入

通常、値動きする金融商品には「100株ずつ」「1万口ずつ」といった単位で購入します。定量購入は、毎月同じ日に「同じ株数」あるいは「同じ口数」で金融商品を買い付けるという手法です。例えば、基準価額が下表の通り推移している投資信託を、1~6月までの6ヵ月間毎月1万口ずつ購入した場合、6ヵ月後の保有口数は6万口、合計購入金額は6万4,500円となります。平均購入単価は1万750円です。

横スクロールできます。

定量購入 1万口あたりの基準価額 1月10日 2月10日 3月10日 4月10日 5月10日 6月10日 合計 平均購入単価
¥12,000 ¥10,000 ¥10,500 ¥9,000 ¥11,000 ¥12,000
購入金額 ¥12,000 ¥10,000 ¥10,500 ¥9,000 ¥11,000 ¥12,000 ¥64,500 ¥10,750
購入口数 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 60,000

毎月1万口分を、安値圏のときには安く、高値圏のときには高い金額で購入しています。

ドルコスト平均法(定額購入)

上記の定量購入に対して、毎月同じ日に「同じ金額」で金融商品を買い付ける方法を「ドルコスト平均法」といいます。先ほどと同じ基準価額で推移する投資信託を例にとると、毎月1万円ずつ購入していくと、6ヵ月後の保有口数は5万6,392口、合計購入金額は6万円となります。平均購入単価は1万640円です。

横スクロールできます。

定量購入 1万口あたりの基準価額 1月10日 2月10日 3月10日 4月10日 5月10日 6月10日 合計 平均購入単価
¥12,000 ¥10,000 ¥10,500 ¥9,000 ¥11,000 ¥12,000
購入金額 ¥10,000 ¥10,000 ¥10,000 ¥10,000 ¥10,000 ¥10,000 ¥60,000 ¥10,640
購入口数 8,333 10,000 9,524 11,111 9,091 8,333 56,392

この購入方法を「定額購入」ともいい、安値圏のときには多くの口数を購入し、高値圏のときには少ない口数を購入することにより、購入金額を平準化することができます。平均購入単価を比較すると、定量購入より定額購入(ドルコスト平均法)の方が低くなっています。

上記の例では平均購入単価の差額は110円で、わずかな差に感じるかもしれませんが、今回のシミュレーションは6ヵ月間の試算です。購入金額が大きかったり、または、10年単位等での長期的な投資をしたりする場合、この差は開いていきます。

ドルコスト平均法の
メリットとは

ドルコスト平均法のメリットは大きく3つあります。1つ目が平均購入単価を自動的に下げること、2つ目が購入のタイミングで悩む必要がないこと、3つ目が非合理的行動を防ぐことです。

平均購入単価を
自動的に引下げる

金融商品だけでなく、投資全般において利益を出すために必要なことは、「安く買って高く売る」です。しかし、将来基準価額がどう動くかは誰にもわかりません。先程例に出した投資信託の場合、6ヵ月間で一番安値となった4月10日に購入することがベストな選択ですが、過去を振り返るから「このときに買うべきだ」と言えるわけで、実際に4月10日が最安値だと判断して購入できる人はいません。また、投資信託は基準価額が毎日変動します。値動きを毎日見張って購入のタイミングを決断することも現実的ではありません。

「ドルコスト平均法」は値動きに関係なく、自動的に購入価格が調整され、相場判断を行わずに機械的に投資ができることが強みです。結果として、前述のシミュレーションの通り、一括で購入する場合よりも高値買いのリスクを抑えることができるのです。

購入のタイミングで悩む必要がない

投資をする際には、商品選択や購入のタイミング、売却のタイミングなどの「マイルール」を事前に作っておくことが重要です。
マイルールを作ることなく投資をはじめると、判断の軸がないために、購入や売却のタイミングで決断が鈍ります。自分なりに安値圏を読んでみても、それが本当に正しいかどうかは分かりませんし、また、金融商品を購入したのは良いものの、値動きが気になって相場に釘付けになってしまうこともあります。今売るべきか否か悩んでいるうちに、時にはせっかくの高値圏での売却タイミングを逃してしまうかもしれません。

ドルコスト平均法であれば、商品購入の度に悩む必要はありません。適宜見直しは必要ですが、あらかじめ商品と口数を設定しておけば自動的に購入されます。

非合理的な行動を防ぐ

投資や資産運用において、人はしばしば非合理的な行動を取ると言われています。安値圏で購入して高値圏で売却して利益を出すことを目的として投資をしているはずですが、人は購入した金融商品が安値圏に突入すると手放したくなり、市場で話題になったりして高騰してくると購入したくなる傾向があります。人間の心理はときに、利益を出すための行動と正反対のことをしがちなのです。ドルコスト平均法は心理状態に左右されず一定額を購入し続けるために有効な手法です。

ドルコスト平均法の
デメリット

ドルコスト平均法にもデメリットは存在します。どんなに平均購入単価が低かったとしても、売却時における価格が平均購入単価を下回っていれば、利益を出すことはできません。価格が変動する金融商品の場合、小刻みに価格が上下するのは致し方ないことですが、長期的に見たときには価格が上がっているような商品を選びたいですね。

過去のリターン実績や規模(投資信託でいう純資産総額)が目減りし続けていないか確認しましょう。また保有時のコストについて確認するとよいでしょう。また、早期償還(満期より早く資金が返されてしまい、当初予定通りの運用ができない)されないためには、設定されたばかりの投資信託は避けた方が無難です。設定から2~3年経過していて、純資産総額が減っておらず、収益を上げているような商品を選択するとリスクを軽減できます。

確定拠出年金でドルコスト平均法を実践しよう

確定拠出年金は、原則として毎月決まった金額の掛金を拠出していく制度です。原則1年に1回だけ掛金額を変更できます。また運用商品については、毎月購入する日にちが決まっているものがほとんどです。購入商品と購入金額を固定すると、必然的にドルコスト平均法を実現できます。

また、確定拠出年金は60歳以降に受取る年金制度ですから、スタートする年齢によっては何十年という長期投資になります。

積み立てを行っている間は、購入開始より価格が下落したとしても、慌てる必要はありません。何故なら、価格が下落しているときは安い価格で大量に購入できるチャンスからとも言えます。

確定拠出年金は「時間分散」「資産分散」で堅実に運用

ドルコスト平均法は、リスク分散の手法の1つで、時期をずらして投資するという「時間分散」です。

このほかにも、下記のような「分散」を行うことで、さらにリスクを抑えた運用をすることができます。

  • 国内と海外、新興国と先進国、欧州とアジアなど、異なった地域の投資先へ投資する「地域の分散」
  • 株式・債券・投資信託・保険など、投資する商品を分散する「商品の分散」
  • 円や数ヵ国の外貨に分散して投資する「通貨の分散」など

投資の世界においては、「卵は1つのカゴに盛るな」という格言があります。1つのカゴに全ての卵を入れてしまうと、カゴが壊れてしまった時にすべての卵がダメになってしまいます。一方、複数のカゴに分散すれば1つのカゴが壊れても他のカゴの卵は無事に手元に残ります。

この格言を投資に重ねると、自分の全て資産を1つの商品に投資するのではなく、複数の商品に投資することで大幅な資産減少を避けることができるということです。確定拠出年金の資産運用においては、老後のための減らすことができない資産であり、長期運用であるという特性からも、「時間分散」と「資産分散」を特に心がけましょう。

  • 当記事は2022年11月29日現在の税制・関係法令などに基づき記載しております。今後、税務の取扱いなどが変わる場合もございますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

iDeCoのお申込み

オンラインでかんたん!

相談しながら

  • Line
  • このページのURLをコピーする