退職金にかかる税金とは?所得税・住民税の計算方法、控除額などの基本的な内容を解説

退職金にかかる税金とは?所得税・住民税の計算方法、控除額などの基本的な内容を解説

退職金は長い老後生活に向けた大切な資産です。しかし、自分に合った退職金の受け取り方を知っておかないと税金が多くかかり、損をしてしまう可能性があります。

例えば、勤続年数25年・退職金支給額2,300万円の場合、通常であれば税額は131万2,672円ですが、退職金の受け取り方によって課税が変わるため、税金を抑えられる可能性があります。
税金が増えないようにするには、退職金に関わる税金の仕組みや計算方法をしっかりと理解することが必要です。

ここでは、退職金にかかる税金の計算方法や、受け取り方それぞれの特徴、確定申告による税金還付についてなど、退職金の税金で損をしないために知っておきたい注意点を解説します。

退職金にかかる税金は「所得税」と「住民税」

退職時に受け取る退職金には、「所得税」と「住民税」がかかります。所得税や住民税は、給料やボーナスからも引かれているため、課税の仕組みについてご存じの方も多いのではないでしょうか。

しかし、退職金と他の所得では、所得税や住民税のかかり方に異なる点もあります。あらためて、所得税と住民税の概要について確認しておきましょう。

所得税

所得税とは、個人の所得に対してかかる税金です。1年間(毎年1月1日~12月31日)の所得から所得控除を差し引いた金額に、一定の税率を適用して算出されます。

所得税の課税方法には、所得の種類により合算して所得税額を計算するもの(総合課税)、他の所得とは切り離して所得税額を計算するもの(分離課税)が存在します。

退職金は、「給与所得」や「事業所得」など10種類の所得のうちの「退職所得」に該当し、分離課税になります。退職金にかかる所得税の計算に用いる「退職所得控除」の金額は、勤続年数によって変わり、基本的に勤続年数が長くなるほど控除額が大きくなる仕組みです。

また、2037年までは所得税に加えて復興特別所得税も納める必要があります。復興特別所得税は2011年(平成23年)12月2日に東日本大震災復興のために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)が公布され、「復興特別法人税」とともに創設されたものです。

住民税

住民税は地方税の一つとして、1月1日現在の住所地のある都道府県と市区町村が課す税金です。一般的には「市区町村民税」と「道府県民税」をまとめて住民税と呼んでおり、「市区町村民税」と「道府県民税」の計算および徴収などの事務は市区町村がまとめて行っています。

住民税には、納税義務者が均等の額を負担する「均等割」と、前年の所得金額に応じて税額が決まる「所得割」があります。

しかし、退職金などの退職所得にかかる住民税は、分離課税といって、所得の生じた年に他の所得と区別して課されます。

また、住民税額の計算は勤務先が計算し、支給する退職金から差し引いて退職した年の1月1日に退職した人が住んでいた住所地の区市町村に納付するのが特徴です。

退職金における税金の計算方法

退職金における税金の計算方法

退職金は、「長年の勤労に対する報償的給与」という意味合いもあり、退職金を一時金として受け取る場合、税制上の優遇措置が設けられています。ここでは、退職金を一時金で受け取る場合にかかる所得税と住民税について、計算の手順を説明します。

「所得税」の計算方法

退職金にかかる「所得税および復興特別所得税」を計算するには、まず支給された退職金のうち課税対象となる金額(課税退職所得金額)がいくらになるか確認しましょう。

課税退職所得金額とは、退職金額から勤続年数に応じた退職所得控除額を差し引いた、残りの2分の1の金額です。計算式で表すと次のようになります。

  • 課税退職所得金額=(退職金の収入金額-退職所得控除額)×2分の1

この課税退職所得金額に所定の所得税率を乗じ、控除額を差し引いて算出された金額が所得税額です。計算式で表すと次のようになります。なお、ここで用いる所得税率および控除額は、税法で課税退職所得金額ごとに定められています。

  • (1)退職金の所得税額=課税退職所得金額×所得税率-控除額

次に、復興特別所得税を計算します。上の計算式で算出された所得税額(基準所得税額)に2.1%の税率を乗じて算出できます。

  • (2)復興特別所得税額=基準所得税額(1)×2.1%

(1)と(2)を足した金額が、「所得税および復興特別所得税額」として納付すべき金額です。課税退職所得金額を計算するときの「退職所得控除額」は、勤続年数が20年を境に計算式が異なります。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数
※合計が80万円に満たない場合は80万円
20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

出典:国税庁「退職金と税」

なお、勤続年数に1年未満の端数がある場合は端数を切り上げ年単位にします。例えば、「10年と1ヵ月」の場合、端数切り上げで「11年」です。

「住民税」の計算方法

「住民税」の計算は、課税退職所得金額に住民税率を乗じて計算します。住民税率は、課税退職所得金額に関わらず、一律10%(都道府県民税4%、市区町村税6%)で計算式は以下のとおりです。

  • 住民税=課税退職所得金額×住民税率10%

ちなみに、退職所得控除額および課税退職所得金額は所得税の場合と同じです。所得税の計算のところで算出した金額をそのまま用いることができます。

退職金の税金を実際に計算してみよう

ここでは、具体的な例で退職金にかかる税金額を実際に計算してみましょう。退職所得控除額の計算や所得税率が異なる2つのケースを紹介します。

  • パターン1:勤続年数10年1ヵ月・退職金支給額900万円の場合
  • パターン2:勤続年数25年・退職金支給額2,300万円の場合

【パターン1】勤続年数10年1ヵ月・退職金支給額900万円の場合

【パターン1】勤続年数10年1ヵ月・退職金支給額900万円の場合

まずは、勤続年数10年1ヵ月・退職金支給額900万円の場合の計算式を見ていきます。

所得税および復興特別所得税の計算

勤続年数は端数切り上げのため11年とし、退職所得控除額を計算します。勤続20年以下となるため、計算式は以下のとおりです。

  • 退職所得控除額:40万円×11年=440万円

次に、課税退職所得額を計算します。

  • 課税退職所得額:(退職金の収入金額900万円-退職所得控除額440万円)×2分の1=230万円

課税退職所得額が230万円の場合、税率は10%、控除額は9万7,500円です。

なお、所得税の税率および控除額の速算表は次のとおりです。

所得税の速算表

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円〜
194万9,000円
5% 0円
195万円〜
329万9,000円
10% 9万7,500円
330万円〜
694万9,000円
20% 42万7,500円
695万円〜
899万9,000円
23% 63万6,000円
900万円〜
1,799万9,000円
33% 153万6,000円
1,800万円〜
3,999万9,000円
40% 279万6,000円
4,000万円〜 45% 479万6,000円

出典:国税庁「退職金と税」

上記の税率などについては、国税庁ホームページで詳細を確認できます。

詳しくはこちら

課税退職所得額および税率、控除額が分かったあとは、所得税額を計算します。

  • 所得税額:課税退職所得額230万円×税率10%-控除額9万7,500円=13万2,500円

続いて、復興特別所得税の額を計算します。

  • 復興特別所得税額:基準所得税額13万2,500円×税率2.1%=2,782円(※)
    ※算出された額に1円未満の端数がある場合、端数は切り捨てます。

最後に、所得税額および復興特別所得税を合計します。

  • 所得税額13万円2,500円+復興特別所得税額2,782円=13万5,282円

このように、勤続年数10年1ヵ月・退職金支給額900万円の場合の所得税および復興特別所得税額は、13万5,282円となります。

住民税の計算

課税退職所得金額は、所得税の場合と同じく230万円です。これに、住民税率10%を乗じて住民税額を計算します。

  • 住民税額:課税退職所得金額230万円×住民税率10%=23万円

勤続年数10年1ヵ月・退職金支給額900万円の場合の住民税額は23万円です。
所得税・復興特別所得税・住民税のすべての税金を合計すると、税額は36万5,282円となり、退職金支給額900万円のうち、実質の手取り額は863万4,718円となります。

【パターン2】勤続年数25年・退職金支給額2,300万円の場合

【パターン2】勤続年数25年・退職金支給額2,300万円の場合

次は、勤続年数25年・退職金支給額2,300万円の場合の計算式を見ていきます。

所得税および復興特別所得税の計算

勤続年数は25年で20年を越えているため、退職所得控除額は以下のように計算します。

  • 退職所得控除額:800万円+70万円×(25年-20年)=1,150万円

次に、課税退職所得額を計算します。

  • 課税退職所得額:(退職金支給額2,300万円-退職所得控除額1,150万円)×2分の1=575万円

課税退職所得額が575万円の場合、税率20%・控除額42万7,500円です。課税退職所得額および税率、控除額が分かったあとは、所得税額を計算します。

  • 所得税額:課税退職所得額575万円×税率20%-控除額42万7,500円=72万2,500円

続いて、復興特別所得税の額を計算します。

  • 復興特別所得税額:基準所得税額72万2,500円×2.1%=1万5,172円(※)
    ※算出された額に1円未満の端数があるため、端数を切り捨てています。

所得税額および復興特別所得税を合計すると以下のとおりです。

  • 所得税額72万2,500円+復興特別所得税1万5,172円=73万7,672円

このように、勤続年数25年・退職金支給額2,300万円の場合の所得税および復興特別所得税額は、73万7,672円となります。

住民税の計算

課税退職所得金額は、所得税の場合と同じく575万円です。これに住民税率10%を乗じて住民税額を計算します。

  • 住民税額:課税退職所得金額575万円×住民税率10%=57万5,000円

勤続年数25年、退職金支給額2,300万円の場合の住民税額は57万5,000円です。所得税・復興特別所得税・住民税のすべての税金を合計すると、税額は131万2,672円となり、退職金支給額2,300万円のうち、実質の手取り額は2,168万7,328円となります。

退職金の受け取り方は「一時金」と「年金」がある

退職金の受け取り方は「一時金」と「年金」がある

退職金の受け取り方は、一時金として「一括」で受け取る方法だけでなく、年金として「分割」で受け取る方法もあります。実際には、企業によって一括と分割のいずれかを選択できたり、両方を組み合わせることができたりするなど、様々な受け取り方があるため注意しましょう。

また、退職金は受け取り方によっても課税金額の算出方法が変わってきます。それぞれの受け取り方の特徴を確認しましょう。

一時金として「一括」で受け取る場合

上述したように、退職金を一時金として「一括」で受け取る場合、退職所得・分離課税として取り扱われます。

「退職所得」となれば、税金の優遇措置を受けられます。勤続年数に応じた退職所得控除が適用され、課税対象となるのは退職所得控除を差し引いた残りの半分です。

また、「分離課税」は他の所得と合算せずに、単独で税額を算出する方法になります。基本的に所得税は課税対象額が大きくなるほど税率も上がる累進課税ですが、退職金は単独で税金税額を算出するため、税負担が軽くなるように配慮されています。

年金として「分割」で受け取る場合

退職金を年金として「分割」で受け取る場合、雑所得・総合課税として取り扱われます。

「雑所得」は、公的年金等、生命保険契約等に基づく年金、会社員が副業で得る所得などが該当します。分割形式で受け取る退職金は公的年金等に含まれます。

雑所得の金額は、原則として収入金額から必要経費を差し引いて計算しますが、公的年金等(退職金を含む)にかかる雑所得については、収入金額から公的年金等控除額を差し引いて計算します。

公的年金等控除額は、受給者の年齢や公的年金等の収入金額により異なります。
例えば、公的年金等にかかる雑所得以外の所得にかかる合計所得金額が1,000万円以下の場合、64歳までは最低60万円、65歳以上は最低110万円となっています。年間の受取額がこれらの金額以下であれば税金はかかりません。

しかし、「総合課税」のため、分割で受け取った退職金は他の所得と合算して課税されます。公的年金など、他の所得がある場合には、まとめて税額の算出が必要です。

「一時金」「年金」どちらで受け取ったほうが良いかは状況による

退職金の受け取り方を選択できる場合、一時金と年金のどちらが得になるのか、気になるところです。しかし、どちらが良いかは受け取り時の状況によっても変わってきます。かかる税金だけでなく、それぞれのメリット・デメリットを知り、総合的に判断することが大切です。

  • 一時金で受け取るメリット:住宅ローンの清算などができる

一時金で受け取ると、退職所得控除という非課税枠の適用がされる税金の優遇措置があるため、手元に大きなお金が残ります。

例えば、住宅ローンが残っている場合にはそのお金でローン残額を清算したり、住宅リフォームを行ったりすることもできるでしょう。

繰り上げ返済でローン残額を清算できれば、「利息負担がなくなる」「リタイア後にローンを払い続ける心配がなくなる」などのメリットも生まれます。

  • 一時金で受け取るデメリット:無駄遣いをする可能性がある

まとまった額のお金を手にすると、人によっては無駄遣いしてしまう可能性があります。大切な老後生活の資金を早く消費してしまわないよう、お金の管理には注意が必要です。

  • 分割で受け取るメリット:お金の使いすぎを防げる

定期的に一定額を受け取ることでお金の管理がしやすくなります。生活費にあてる意識が生まれ、使いすぎを防ぐことができるでしょう。

  • 分割で受け取るデメリット:課税対象期間が長い

分割の場合、1回あたりの受取額は一時金よりも少なくなるものの、受け取る期間は長くなります。その分、課税される期間も長期間です。

一時金のような税金面での優遇措置がなく、公的年金や他の所得によっては、トータルで課税額が大きくなる可能性もあります。

確定申告をすれば税金還付が受けられる場合もある

ここまで、退職金にかかる税金について説明してきました。退職金を受け取ったあと、「自分自身で確定申告をして税金を納付しなければならないのか」不安な方もいるかもしれません。

しかし、基本的に退職金の所得税および復興特別所得税は「源泉徴収」で行うため、原則として確定申告する必要はありません。

給与や賞与から所得税・復興特別所得税や住民税が徴収されているように、退職金もこれらの税金が差し引かれたうえ、支払われます。

ただし、退職金の支払いを受けるときまでに、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出することが必要です。

「退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)」とは、退職所得控除の適用を受けるために必要な書類で、退職金の支給日や勤続期間など所定の項目を記載します。

この申告書は、勤務先から渡される場合が多い傾向ですが、国税庁のホームページからダウンロードすることも可能です。

この申告書を行わない場合は、退職手当等の金額につき、一律20.42%の税率で所得税および復興特別所得税が源泉徴収されてしまいます。この場合には確定申告をすることで、納めすぎた税金を還付される可能性があります。

なお、「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合でも、確定申告をしたほうが良い場合もあります。

例えば、退職日が年の途中で年末調整を受けていない場合は、通常、毎月の給与から源泉徴収される税金は多めに引かれており、年末調整で差額が戻る可能性があります。

特に、退職年の給与が退職前年よりも少ない場合は多めに引かれている可能性があるため、確定申告してその分を取り戻すことができます。

また、退職後に支払う健康保険の任意継続保険料や国民健康保険料・介護保険料は「社会保険料控除」の適用を受けることが可能です。

民間の生命保険料、地震保険料などを払っている場合にも、要件を満たしていれば「生命保険料控除」や「地震保険料控除」が適用されます。

他にも、医療費控除やセルフメディケーション税制の適用を受けられるケースなどもあるため、このような場合には、還付金を受けるために確定申告を行うのが良いでしょう。

まとめ

退職金には、所得税や復興特別所得税、住民税がかかります。退職金の受け取り方には「一括」「分割」の2種類の方法があり、受け取り方によって課税が変わります。

税金が増えてしまわないように、退職金まわりの税金の仕組みや計算方法などをしっかりと理解しておきましょう。退職金は、老後生活を支える大切な役割を持っています。退職金を受け取る際は税金を抑え、その後もうまく長く管理していくことが重要です。

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本記事は2021年3月5日の情報に基づいて作成しておりますが、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。

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