住宅ローンの変動金利とは?固定金利との違いや今後の見通し
公開日:2024/12/20

住宅ローンの利用を検討する際、変動金利と固定金利の違いや、今後金利が上がるかどうか知りたい方は多いはずです。変動金利と固定金利は、仕組みが違うだけでなく、金利の決まり方なども異なります。
どちらも今後引上げられる可能性もあるため、それぞれの特徴を理解し、返済が終わるまでの長期的な視野で自分に合うほうを選ぶことが重要です。
今回は、住宅ローンの変動金利と固定金利の違いや、それぞれの金利タイプに向いている方、2024年12月時点の金利動向について解説します。
- 私が書きました
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- 主なキャリア
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生命保険会社にて15年勤務したあと、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。
- ※りそなグループが監修しています
住宅ローンの
変動金利とは?

変動金利とは住宅ローンの金利タイプの1つで、借入期間中に適用される金利が変動する可能性があるタイプです。以下で、変動金利の仕組みや知っておきたいルールなどについて説明します。
変動金利の仕組み
住宅ローンの変動金利を決める基準となるのは、一般的に「短期プライムレート」と呼ばれる金利です。この短期プライムレートは、金融機関が優良企業向けに短期(1年未満)で融資をする際に適用する最優遇金利のことで、多くの金融機関では住宅ローンの変動金利をこれに連動させ、半年ごとに見直しています。
変動金利の大きなメリットは、一般的にほかの金利タイプよりも金利が低めに設定されていることです。金利が低いことが、多くの人が住宅ローンで変動金利を選ぶ理由の一つとなっています。
返済方式は2つ
適用金利が見直しされるたびに、「毎月の返済額が変わるのか不安」と感じてしまう方もいるかもしれません。まずは住宅ローンの返済方式に以下の2つがあることを押さえておきましょう。
- 元利均等返済方式:毎月の返済額は一定で、返済が進むごとに元金と利息の内訳が変動する
- 元金均等返済方式:毎月の元金部分の返済額が一定で、それに利息を上乗せした金額を支払う
元利均等返済方式は基本的に毎月の返済額が変わりませんが、元金均等返済方式は借入当初ほど返済額が大きく、毎月の返済額はだんだんと減っていきます。なお元利均等返済方式のみを採用している金融機関もあります。返済方式を選択できるかはお借入れを検討している金融機関にてご確認ください。
5年ルール・125%ルール
について
- 5年ルール
- 125%ルール
どちらのルールも、毎月の返済額への大きな変化は避けられますが、元金および利息の返済義務が免除されるわけではありません。これらのルールによって生じた未返済分は後々に繰り延べられて、借入期間終了時に残っている分があると一括返済を求められることになるため、注意が必要です。なお、金融機関によっては、元利均等返済方式の場合でも「5年ルール」「125%ルール」を適用していないところもあります。
住宅ローンの変動金利・固定金利の違い
固定金利は、借入時から一定期間または全期間の金利が固定される金利タイプです。住宅ローンの固定金利は、一般的に「長期金利(10年国債利回り)」を基準として決められています。
固定金利タイプは、大きく分けると「固定金利期間選択型」と「全期間固定金利型」の2種類です。固定金利期間選択型は、5年・10年・15年などと特定の期間の金利が固定され、その期間が終了する際に変動金利にするか再度固定金利にするかを選べます。一方の全期間固定金利型では、借入時から完済まで金利が変わりません。
住宅ローンの変動金利と固定金利はどちらを選んだらいい?
変動金利と固定金利のどちらを選べばいいのか迷っている方もいるはずです。しかし、どちらの金利タイプもそれぞれにメリット・デメリットがあるため、どちらがいいとは一概に言えません。
完済までの長期的視点で、仮に金利が上昇しても無理なく返済を続けられるかを考慮し、自分にどちらの金利タイプが向いているかを考えてみてください。
変動金利が向いている方
以下に該当する方は、変動金利が向いているといえます。
- 借入金額が少ない方
- 返済期間が短い方
- 金利動向をこまめにチェックできる方
- 金銭的な余裕がある方
借入金額が少ない、あるいは返済期間が短い方の場合は、金利上昇による影響も小さくて済む可能性があります。また、金利動向をこまめにチェックでき、金利が上昇する局面で住宅ローンの借換えや繰上返済などの対応ができる方も変動金利向きです。
固定金利が向いている方
返済期間中に返済額を増やしたくない方は、固定金利が向いています。さらに、「固定金利期間選択型」と「全期間固定金利型」で細分化した特徴は下記のとおりです。
【固定金利期間選択型】
- 一定期間の返済額を固定したい方
- 固定期間終了後の返済計画を立てられる方
例えば、「教育費の支払いがあるうちは返済額を固定しておきたい」などという場合が該当します。固定金利期間中に、その後の繰上返済資金を準備ができる方や収入増の見込みがある方なども、向いているのは固定金利期間選択型です。
【全期間固定金利型】
- 金利の変動に左右されたくない方
- 金利動向をチェックするのが難しい方
完済するまで返済額を変えたくない方は、全期間固定金利型が向いています。
【2024年12月】住宅ローンの変動金利・固定金利の
今後はどうなる?

2024年3月、日本銀行が長らく続けていたマイナス金利政策を解除しました。その後、7月30~31日に行われた金融政策決定会合で政策金利を0.25%程度に引上げる追加利上げが決定されたのを受け、住宅ローン金利への影響も出始めています。
今後、住宅ローンの金利がどのように上がっていくのか気になる方もたくさんいるはずです。ここでは、変動金利と固定金利の最新の動向について説明します。
短期プライムレート・基準金利の引上げを9月に発表した銀行がいくつかある
大手銀行は、2024年9月2日から変動金利の基準となる短期プライムレートを0.15%引上げました。それに合わせて、住宅ローンの変動金利の見直しを発表しています。ほかの金融機関のなかにも、2024年9月または10月から短期プライムレートの引上げ、および住宅ローンの変動金利引上げを行うところが出始めました。
ネット銀行の場合は、短期プライムレートに連動させず、さまざまな市場金利に応じて変動金利を決めているところもありますが、2024年10月を待たずに変動金利を引上げているところもあります。
固定金利は上下を
繰り返している
大手銀行やネット銀行のなかには、2024年6月に固定金利を引上げたところがあります。しかし、同年9月には引下げられており、固定金利は上下を繰り返しているのが現状です。9月の固定金利引下げは、各行が住宅ローン固定金利の基準としている長期金利が、8月に低下したためと考えられます。
変動金利・固定金利が今後上昇していく可能性はある
これらの状況を見ると、変動金利と固定金利のどちらも今後上昇していく可能性は十分にあるといえます。状況によっては、利上げ幅がさらに大きくなる可能性もありますので、すでに変動金利の住宅ローンを利用している方や、これからの利用を検討されている方は状況を注視することが重要です。
ただし、前述したように変動金利には5年ルールや125%ルールを設けている金融機関もあります。これらのルールを適用している金融機関であれば、万が一金利が上がったとしても返済額が急激に増えることは避けられます。
変動金利が引上がった場合の住宅ローンへの影響
変動金利で適用される金利が引上がった場合、すでに変動金利の住宅ローンを利用している方、これから利用を検討されている方には、それぞれ以下のような影響が出ると考えられます。
すでに変動金利で住宅ローンの借入れをしている方
すでに変動金利で住宅ローンの借入れをしている場合は、2025年1月から金利引上げの影響を受ける可能性が高いといえます。
その理由は、たいていの金融機関が変動金利の見直し時期を4月1日と10月1日の年2回としており、4月の見直しで7~12月の金利、10月の見直しで翌年1~6月の金利が決まるからです。今回の短期プライムレート引上げは9月に行われたため、その影響は10月の見直しに反映されることになります。
前述のとおり、5年ルール・125%ルールが適用される変動金利の場合は、金利が上がっても一気に返済額が上がるわけではありません。しかし、元利均等返済方式の仕組みから利息分の割合が多くなり、元金の返済が進みにくくなる可能性はあります。
利息が増えることで、返済総額が増加するリスクがあることは理解しておいてください。
変動金利による住宅ローンの借入れを検討中の方
これから変動金利で住宅ローンの借入れをしたいと考えている方は、金利が引上がった状態での借入れとなる可能性があります。どの程度影響を受けるのかは、住宅ローンを契約する時期によって変わるため、その都度確認が必要です。
しかし、金利が上昇する局面を鑑みて、あえて金利を据置きまたは引下げて競争力を維持する金融機関が出てくる可能性も考えられます。そのため、複数の金融機関の金利をしっかりとチェックすることが大切です。
住宅ローンの変動金利の上昇に備えるには
変動金利の上昇によって毎月の返済が厳しくなる、あるいは老後資金などほかの必要資金が準備できなくなることは、できるだけ避けたいものです。ここでは、変動金利の上昇リスクに備える方法を紹介しますので、すでに変動金利を利用されている方も、これから利用を検討されている方もぜひ参考にしてください。
繰上返済をする
毎月の返済分とは別に、繰上返済をしてローン残高を減らすことも方法の1つです。繰上返済することで元金の減りが早くなる分、金利上昇の影響を受けにくくなります。なお、繰上返済の方法は以下の2つです。
- 返済期間短縮型:毎月の返済額を変えずに返済期間を短くする方法
- 返済額軽減型:返済期間を変えずに毎月の返済額を減らす方法
どちらを選んでもいいですが、返済期間短縮型を選ぶ場合は、短縮したために返済期間が10年未満となってしまい、住宅ローン控除の対象外にならないよう注意が必要です。また、金融機関や繰上返済の方法によっては手数料がかかる場合があるため、事前にきちんと確認しておきましょう。
借換えをする
返済中の住宅ローンよりも金利の低い住宅ローンへ借換える方法もあります。金利上昇への備えとしては、変動金利から固定金利の住宅ローンへの借換えを考えがちです。しかし、変動金利が上がりそうな局面では、固定金利もすでに上がっている可能性があります。
そのため、同じ変動金利同士でより条件のよい住宅ローンに借換えることも選択肢の1つです。5年ルールが適用されれば、金利が上昇した場合でも、毎月の返済額は5年間変わらないため、金利変動のリスクを抑えられます。ただし、借換えの際は事務手数料や登記関連費用などがかかるため、本当に借換えメリットがあるかを事前に確認してください。
ミックスローンにする
借換えや新規借入れの際にミックスローンを選ぶ方法もあります。ミックスローンとは、住宅ローンの異なる金利タイプを組み合わせて契約する住宅ローンです。例えば、「借入額のうち60%を変動金利、40%を固定金利で契約する」というように組み合わせることができます。
借入額の一部を固定金利にしておくことで、金利上昇リスクを分散できる点がメリットです。
変動金利型の住宅ローンを選ぶかは
ライフスタイルによっても変わる

ここまで変動金利を中心に、仕組みや特徴、金利上昇リスクへの備え方などについて説明してきました。しかし、変動金利と固定金利のどちらを選ぶかは、金利の数値や動向だけを見て決めないことも大切です。
基本的に、住宅ローンは20年、30年と長期間にわたって返済を続けるものであるため、その間のライフスタイルの変化やライフイベント資金などをふまえて検討する必要があります。例えば、子どもの教育費や老後資金の準備、子育てや介護で一時的に仕事をセーブするなど、家計収支の変動も考慮しなければなりません。
そのうえで、住宅ローンの返済が負担になりすぎず、将来の金利上昇リスクにも対応できるような組み方を考えることが大切です。自分や家族だけですべてを考えるのが難しい場合は、一度専門家に相談してみてください。
りそなでも、住宅ローンに関するご相談を受け付けています。
まとめ
住宅ローンの変動金利は、一般的に短期プライムレートを基準に決められており、ほかの金利タイプよりも金利が低い点がメリットです。
日本銀行の追加利上げの決定を受け、2024年10月以降は変動金利の上昇が考えられますが、あえて金利を据置きまたは引下げて競争力を維持する金融機関が出てくる可能性もあります。
変動金利と固定金利のどちらを選ぶかは、金利だけを見るのではなく、ライフスタイルの変化など複数の要素をふまえつつ検討することが大切です。
気になる物件の毎月の返済額は?
本記事は2024年12月20日の情報に基づいて作成しておりますが、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。