住宅ローンのペアローンとは?収入合算との違いとメリット・デメリット

公開日:2024/09/05

住宅ローンのペアローンとは?収入合算との違いとメリット・デメリット

共働きの夫婦の増加や女性の正規雇用増加、住宅価格の高騰などを背景に、住宅ローンを夫婦で借りるケースが増えてきています。

夫婦が住宅ローンを組む方法には、夫婦どちらかが単独でローンを組む「単独ローン」と、夫婦それぞれがローンを組む「ペアローン」、夫婦の収入を合算してローンを組む「収入合算」の3つがあります。

ペアローンは、単独ローンより借入金額を増やせる一方で、片方の収入が減った際に返済に苦しむ方もいます。住宅ローンを組む際は、メリット・デメリットを比較して自身に合ったローンを組むことが大切です。

本記事ではペアローンの概要とメリット・デメリット、収入合算との違い、住宅ローンの選び方について解説します。

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元銀行員。若年層から高年層まで幅広い資産運用の提案を行なう。メディアを通じて、より多くのお客様に金融の知識を伝えたい気持ちが強くなり、退職を決意。
現在は、編集者として金融機関を中心にウェブコンテンツの編集・執筆業務に従事している。

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ペアローンとは「1つの物件に対して夫婦それぞれが組む住宅ローン」

ペアローンは住宅ローンの一つです。1つの物件に対して夫婦2人でローンを組み、ローンの契約や審査、返済は個別に行います。夫婦それぞれが互いに債務者となり、相手の連帯保証人になるのが一般的です。

ペアローンを利用して購入した物件の所有権は夫婦の共有名義となり、持分はそれぞれの出資割合に応じて決定されます。

ペアローンと
収入合算の違い

収入合算はペアローンとよく比較されるローンの組み方です。収入合算の概要とペアローンとの違いを解説します。

収入合算とは?

収入合算はローン申込者(主たる債務者)の収入に、金融機関が定める一定の収入(50~100%)がある配偶者の収入を合算してローンを組む方法です。

合算した収入金額で住宅ローンを組むため、単独ローンより借入金額を増やせるメリットがあります。

収入合算の種類とメリット・デメリット

収入合算には連帯債務型と連帯保証型の2種類があります。それぞれの内容とメリット・デメリットをみていきましょう。

連帯債務型

連帯債務型は夫婦のどちらかが主たる債務者、もう一方が連帯債務者となる返済方法です。債務者と連帯債務者の両方に返済義務があるため、いずれかがローンを返済できなくなった場合、もう一方に2人分のローン返済義務が発生します。連帯債務型では、債務者と連帯債務者の両方に住宅ローン控除が適用可能です。

ただし、連帯債務型は取扱う金融機関が限られています。連帯債務型を選択しようと思っても、希望の金融機関では対応していない場合があるため注意が必要です。

通常、住宅ローン利用時は団体信用生命保険(団信)に加入します。団信に加入していると、契約者が死亡または高度障害になった場合に、保険の適用を受けてその後の住宅ローンを返済する必要がなくなります。しかし、一般的に連帯債務者は団信に加入できないため、連帯債務者に万が一のことがあっても債務者はローンを返済し続けなければなりません。

連帯保証型

連帯保証型は夫婦のどちらかが主たる債務者、もう一方が連帯保証人となる返済方法です。連帯保証人は常に主債務者と同様の返済義務を負っており、主たる債務者の返済が滞ったときは連帯保証人が主債務者に代わって返済します。

連帯保証型は連帯債務型と比べて取扱っている金融機関が多いのが特徴です。ただし、連帯保証人は住宅ローン控除が適用されず、一般的に団体信用生命保険への加入もできません。

ペアローンと
収入合算の違い

ペアローンと収入合算は借入人数や夫婦の住宅ローン控除の有無、団体信用生命保険の加入の有無などが異なります。単独ローン、ペアローン、収入合算の申込者や連帯保証人などの情報を表にまとめましたので参考にしてください。

単独ローン ペアローン 収入合算
連帯債務型 連帯保証型
借入可能額 債務者の収入に応じた金額 夫婦それぞれの収入に応じた金額 夫婦の収入を合わせた金額に応じた金額
ローン申込者 夫婦どちらか1人 夫婦両方(夫婦双方が互いに連帯保証人となる) 夫婦どちらか1人(もう1人は連帯債務者) 夫婦どちらか1人(もう1人は連帯保証人)
住宅ローン控除 債務者のみ利用可能 夫婦それぞれ利用可能 債務者・連帯債務者どちらも利用可能 債務者のみ利用可能
団体信用生命保険 債務者のみ加入 夫婦それぞれ加入 債務者のみ加入 債務者のみ加入
物件の名義 債務者の名義 夫婦の共有名義 夫婦の共有名義 債務者の名義

ペアローンの4つの
メリット

ペアローンの4つのメリット

ペアローンのメリットをみていきましょう。

単独の借入れより借入金額を増やせる

ペアローンは夫婦それぞれでローンを組むため、単独での借入れより借入金額を増やせる場合が多いです。一方の収入だけでは希望する金額を借りられない場合に、ペアローンは便利です。借入金額の増加により物件の選択肢も広がるでしょう。

ただし、借入金額を増やしすぎると返済が大きな負担となってしまいます。現在の収入や将来の収入、今後の生活の変化などをふまえて、無理のない範囲で借入金額を設定することが大切です。

夫婦それぞれ住宅ローン控除を利用できる

住宅ローン控除では、住宅ローンを借入れて住宅の新築などをすると、最大13年間、年末のローン残高の0.7%を所得税から控除できる場合があります。ペアローンは夫婦それぞれでローンを組むため、住宅ローン控除もそれぞれ利用可能です。

また、住宅の環境性能などによって住宅ローンの借入限度額と控除期間は異なります。返済の際に役立てるためにも、どの程度住宅ローン控除を利用できるか、シミュレーションしておきましょう。

夫婦それぞれ団体信用生命保険に加入できる

団体信用生命保険(団信)は住宅ローン利用者が死亡または高度障害になった場合に、保険会社が住宅ローンの残債を支払う保険です。ペアローンでは夫婦どちらも団体信用生命保険に加入できます。

ペアローンの支払い中に夫婦どちらかが死亡または高度障害になった場合、団体信用生命保険に加入していれば片方のローンは支払う必要がなくなります。

夫婦それぞれ返済条件を変えられる

ペアローンでは夫婦それぞれで借入金額や返済期間、金利タイプなどを設定できます。

具体的には、夫は固定金利で妻は変動金利にする、収入によって借入金額に差をつける、年齢によって借入期間を調整する、といったことが可能です。

夫婦の年齢差や今後の予定、金利上昇へのリスクへの対応などを考慮して、それぞれの返済条件を選択しましょう。

ペアローンの4つの
デメリット

続いて、ペアローンのデメリットを解説します。

諸費用が増える可能性がある

ペアローンでは住宅ローンを2つ組む必要があるため、契約にかかる諸費用が増える場合があります。諸費用には保証料や融資手数料、登記費用、印紙税などが挙げられ、単独ローンを組んだ場合の金額は一般的に物件価格の5~10%程度です。

ただし、借入金額に対してかかる保証料や融資手数料の金額は、借入金額が変わらなければ単独ローンと変わりません。また、電子契約の場合、印紙税の負担は不要です。

贈与税が発生する場合がある

以下のようなケースでは、夫婦間で贈与があったものとみなされ、贈与税が発生する可能性があります。

  • 住宅ローンの負担割合と登記している所有割合が異なる場合
  • ペアローンの借換えや繰上返済をした場合

贈与税は年間110万円以上を贈与した場合に課されます。上記のようなケースが発生しそうな場合は、贈与税がかかるかどうか確認しておきましょう。

単独ローンよりも収入減少が起こる可能性が高い

産休や退職などにより、どちらか一方の収入がローン契約時より大きく下がってしまった場合、もう一方が2人分の返済を負担しなければならなくなります。

単独ローンでは主債務者1人分の収入減少リスクに備える必要がありますが、ペアローンでは主債務者2人分の収入減少リスクに備えなければなりません。借入れる人が2人いる分、ペアローンは単独ローンより収入が減少するイベントが起こりやすいのが欠点です。

仮に収入がゼロになった場合、所得税がなくなるため住宅ローン控除も受けられません。収入が減っても返済に困らないよう、借入金額と返済額のバランスをシミュレーションしておきましょう。

死亡時や離婚時にリスクがある

団体信用生命保険は死亡または高度障害を負った人のローンのみが対象です。そのため、一方が死亡した場合、残されたもう1人は単独でローンの返済を行わなければなりません。

なお、りそなが2024年10月から取扱いを開始する「がん特約付きペアローン型団体信用生命保険」なら死亡時などのリスクを減らせます。死亡・高度障害になった場合やがんと診断された場合、本人のローンだけでなく、もう一方のローンの返済も不要になるのです。

また、ペアローンで取得した不動産は夫婦の共有名義となり、離婚時にローンの残債があった場合、ローンの責任はそのまま残りそれぞれ返済しなければなりません。

さらに、共有名義の物件には、共有者の同意がなければ売却ができないなどの制約があります。制約をなくすためにはローンの一本化や共有状態の解消などの対応も必要です。

どれを選ぶべき?単独ローン・ペアローン・収入合算

どれを選ぶべき?単独ローン・ペアローン・収入合算

単独ローン・ペアローン・収入合算について解説しましたが、どのような基準をもとに借入方法を選択すればよいのでしょうか。

夫婦どちらか一方が収入の大半を担っている場合や、住宅ローンの借入金額が少なく収入が減っても返済に困らない場合は「単独ローン」がおすすめです。

また、互いに一定以上の収入がある場合や借入金額を増やして物件の選択肢を増やしたい場合は、「ペアローン」や「収入合算」がよいでしょう。

住宅ローンの組み方に迷う場合は、金融機関や専門家へ相談してみましょう。現在の収入や将来の人生設計に合わせて最適な住宅ローンの組み方を提案してくれるでしょう。

まとめ

ペアローンは夫婦それぞれが住宅ローンを組む方法です。借入金額を増やせるほか、住宅ローン控除や団体信用生命保険に夫婦それぞれで加入できるというメリットがあります。

また、単独ローンや収入合算とも比較しながら、目的とする物件、現在の収入、将来の収入、人生設計などをふまえて最適なペアローンを選択しましょう。

りそなでは、がん特約付きペアローン型団体信用生命保険の取扱いを2024年10月より開始します。

ペアローンでは夫婦どちらかに団体信用生命保険の支払事由が発生した場合、一方の返済は免除されますが、もう一方はされませんでした。
りそなの団体信用生命保険なら支払いもペアとなり、2人のローン残高がゼロになる可能性があります。

ペアローンの返済リスクを下げたい方は、ぜひ加入を検討してみてください。

本記事は2024年9月5日時点の情報に基づいて作成しておりますが、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。

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