自転車事故にあったら損害賠償金はいくら?実際にあった3つの事例

公開日:2024/08/27

自転車事故にあったら損害賠償金はいくら?実際にあった3つの事例

万が一、自転車事故の加害者になった場合は、どれくらいの損害賠償金を請求されるのでしょうか。損害賠償金は、事故の状況や双方の過失割合などによって異なります。しかし、過去には数千万円~1億円近くの損害賠償金の支払いを命じられた事例があるため、注意が必要です。

そこで本記事では、自転車事故における過去の損害賠償金の事例や、事故の加害者になった場合にやるべきことについて紹介します。併せて、自転車保険に未加入だった場合の問題点についても解説しますので参考にしてください。

私が書きました
主なキャリア

生命保険会社にて15年勤務したあと、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。

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自転車事故の加害者には2つの責任がある

自転車事故の加害者となった場合、「刑事上」「民事上」の2つの責任が発生する可能性があります。まずは、この2つの責任について理解しておきましょう。

刑事上の責任

自転車事故においての刑事上の責任とは、自転車を運転する人が交通法規を違反して事故を引き起こし、その結果として他人に重大な被害を与えた場合に刑事罰を受ける責任のことです。例えば、重大な過失により他人を死傷させてしまった場合は「重過失致死傷罪」に問われます。

民事上の損害賠償責任

民事上の損害賠償責任とは、自転車事故によって被害者に与えた精神的・財産的損害を賠償する責任のことです。例えば、自転車を運転している人が事故を起こし、他人に対して身体的な損害や物的な損害を与えた場合、その損害を賠償する責任を指します。

自転車事故の賠償金に含まれるおもな内容

自転車事故で被害者に損害を与えた場合、一般的に賠償金や慰謝料の支払いが必要になります。賠償金のおもな内容を確認しておきましょう。

損害賠償金

自転車事故の被害者が請求できる一般的な損害賠償金には、おもに以下のようなものがあります。実際に請求できる項目は、被害者のケガや後遺症などの状況により異なりますが、それぞれの内容を理解しておくことが大切です。

  • 治療費:事故で負ったケガの治療にかかった費用
  • 入院費:事故で入院が必要となった場合の入院に要した費用
  • 入通院慰謝料:入院や通院が必要なケガを負わされた精神的苦痛に対する賠償
  • 後遺障害慰謝料:事故で後遺症を負わされた精神的苦痛に対する賠償
  • 死亡慰謝料:事故で被害者を失った遺族の精神的苦痛に対する賠償
  • 休業損害:事故による休業で減収となった分の賠償
  • 逸失利益:事故による後遺症または死亡がなければ、本来得られていたはずの将来の収入に対する賠償

慰謝料

賠償金のなかでも慰謝料は、実損の程度や金額が見えにくい精神的苦痛に対する賠償です。交通事故の慰謝料を算定する基準として、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つがあります。

  • 自賠責基準:国が定める最低限の金額を算定する基準
  • 任意保険基準:任意保険会社が独自に定める基準。保険会社によって異なる
  • 弁護士基準:過去の判例に基づき金額を算定する基準

これら3つのうち、一般的には自賠責基準が最も低く、弁護士基準が最も高額となる傾向です。慰謝料の金額は、どの算定基準を用いて算定するかによって大きく変わります。なお、どの算定基準が適用されるかは、事故後の示談交渉をする場面になって保険会社や弁護士が介入するかどうかによって決まります。

自転車事故が起きたときの賠償額はどのくらい?3つの事例

自転車事故が起きたときの賠償額はどのくらい?3つの事例

まずは、自転車事故の損害賠償について過去の事例をいくつか紹介します。

9,500万円を超える賠償金命令が認められたことも

自転車事故では、歩行者や自転車同士でぶつかり第三者にケガをさせたり、モノにぶつかり財物を壊したりするケースがあります。第三者や他者の財物に損害を与えた場合、事故の大きさによって高額な賠償金を払わなければならないこともあります。

過去には、数千万円~1億円近い賠償金支払いの判例が下った例もありました。

小学生が自転車事故の加害者となり、9,521万円の支払いを命じられた事例

“男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。(神戸地方裁判所、平成25(2013)年7月4日判決)”

男子高校生が自転車事故の加害者となり、9,330万円の支払いを命じられた事例

“男子高校生が夜間、イヤホンで音楽を聞きながら無灯火で自転車を運転中に、パトカーの追跡を受けて逃走し、職務質問中の警察官(25歳)と衝突。警察官は、頭蓋骨骨折等で約2か月後に死亡した。(高松高等裁判所、令和2(2020)年7月22日判決)”

ペットボトルを片手に自転車走行中の男性が加害者となり、6,779万円の支払いを命じられた事例

“男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成15(2003)年9月30日判決)”

引用:自転車事故と保険(一般社団法人 日本損害保険協会のサイトへリンクします)

損害賠償金の額は事故の大きさや過失割合によって決まる

高額賠償金の例を紹介しましたが、実際には事故や損害の状況、双方の過失割合などによって損害賠償金額が決まります。交通事故では、双方に一定の過失がある場合も多くあります。

被害者にも過失が認められる場合、賠償責任の公平を図るために、被害者の過失分を加害者の負担すべき損害賠償額から差し引きます。

これを過失相殺といい、過失割合がある場合は事故の加害者一方が100%責任を負うわけではありません。

道路交通法上、自転車は車両の一種(軽車両)です。道路交通法に定められている優先関係、遵守事項などが適用され、不注意やルール違反などがあれば過失割合が高くなることもあります。

また、過去の事例を見ても被害者が死亡した場合や、重い後遺症が残った場合など、甚大な損害を受けるような場合は、賠償金が大きくなります。

未成年が加害者だった場合は保護者が責任を負う場合も

被害者に対する賠償責任は、加害者が未成年であっても免れることはできません。ただし、未成年者の場合、責任能力や資力の面で賠償責任を負うことが難しい場合があります。

民法第712条では、「未成年者など責任能力を有していない場合、他人に損害を加えた行為について賠償の責任を負わない」といった規定があります。

しかし、民法第714条では「責任無能力者が責任を負わない場合、親など責任無能力者を監督する法定の監督義務者が賠償責任を負う」と規定されています。責任能力の有無は、年齢や環境、生育度・行為の種類などの視点で判断されます。

一般的に責任能力が認められる目安はおおむね12歳頃からです。ただし、責任能力があっても親が賠償責任を負う場合もあります。

自転車事故の加害者になったときにやるべきこと

自転車事故を起こした場合、パニックになり冷静な対応ができない場合も考えられます。万が一、加害者になってしまった場合に何をするべきか、あらかじめ確認しておきましょう。

現場の安全を確保し、救命措置を取る

負傷者がいる場合は、ケガの手当が最優先です。すぐに救急車を呼び、救命措置を取りましょう。この際、路肩など安全な場所に自転車を移動させ、2次被害の予防に努めることが大切です。

続いて、警察にも通報します。道路交通法では、警察への報告義務が定められており、仮に自転車での小さい事故でも警察への届けが必要です。

通報や救命措置をしなければ、報告義務・救援義務違反です。なお、警察への報告は交通事故証明書をもらうためにも必要です。

被害者と連絡先を交換し、現場写真を撮っておく

被害者と連絡先を交換します。これは、後日被害者に損害を与えたことの謝罪やお見舞いをしたり、今後の交渉連絡をしたりするために必要です。

氏名・住所・電話番号など、連絡先は必ず交換するようにしましょう。また、現場の状況をスマートフォンなどで撮影し、写真に残しておくと現場状況があとで確認しやすくなります。万が一被害者から過大な賠償を求められても、証拠があれば反論しやすくなります。

加入している保険会社へ連絡を

自転車保険に加入している場合には、ただちに保険会社へ連絡し事故の状況を報告しましょう。一般的に、保険金を請求する際は、警察から発行される交通事故証明書が必要です。

なお、「自転車保険」という名称ではなくても、自動車保険や火災保険、傷害保険などに「個人賠償責任補償特約」や「日常生活賠償特約」が付加されている場合もあります。

ご自身や家族が加入している保険内容を再確認してみましょう。「保険に加入していない」「自転車事故による賠償責任補償が付加されていない」といった場合、賠償金は実費負担が必要です。

被害者と示談交渉

被害者への賠償金に関して示談交渉を行ないます。保険(賠償責任補償特約を含む)に加入している場合には、保険会社が示談交渉してくれるケースが多い傾向です。

ただし、保険会社が交渉代行してくれるのは民事責任についてのみです。保険に加入していない場合には、加害者自らが直接被害者と示談交渉しなければなりません。

示談交渉がまとまらない場合は、訴訟に進展する可能性もあります。なお、保険に加入していた場合でも、示談代行サービスが付帯していない場合には、加害者自ら、もしくは弁護士に依頼して示談交渉を進めます。保険に加入している方も、改めて補償およびサービス内容を確認しておきましょう。

自転車保険に未加入の場合の損害賠償はどうなる?2つの問題点

自転車保険に加入していない場合、大きく2つの問題が考えられます。以下で2つの問題点について解説します。

示談交渉が難しくなる

任意保険に加入している場合、一般的には示談交渉を保険会社が代行してくれます。しかし、任意保険未加入の場合は自分で直接被害者と示談交渉を行うことや弁護士へ示談交渉を依頼することが必要です。

示談交渉には、法律や賠償責任に関する専門的な知識が求められます。しかし、保険会社や弁護士が関与していれば適正な損害賠償金の見積もりや交渉を任せることができるので安心です。

加害者が自分で交渉が必要となる場合で、法律や賠償に関する専門知識が不足していると示談交渉が難航する可能性があります。また、双方が感情的になることも考えられるでしょう。場合によっては、交渉が長引き、スムーズに進まない可能性が高くなります。

損害賠償金は自己負担

自転車保険未加入の場合は、損害賠償金の支払いを保険に頼ることができないため、すべて自費で支払わなければなりません。

損害賠償金の額は、事故の状況や相手被害者、算定基準によって異なることは先にお伝えしたとおりです。しかし、いくつかの前例を紹介したように重大な事故では数百万円~数千万円の損害賠償金が発生することも珍しくありません。

裁判で支払いを命じられた損害賠償金を自分で支払うことが困難な場合は、給与や財産が差し押さえられる可能性があります。「被害者に誠意を尽くしたくてもできなくなる」「加害者自身の生活にも影響してしまう」といった可能性などがあることを理解しておきましょう。

自転車事故の賠償金が支払えない場合どうする?

自転車事故の賠償金が支払えない場合どうする?

示談や裁判の結果、確定した賠償金額によっては支払えない場合もあるかもしれません。そのような場合、加害者および賠償責任者としてどのような対応をすればいいのでしょうか。

被害者に相談する

まずは、払えないとわかった時点で被害者に相談しましょう。必ずしも、こちらの要求を受け入れてくれるとは限りません。しかし、誠心誠意の対応を心がけ、「払う気はあるけど払えない状況」を真剣に伝えてみましょう。分割による支払いを認めてもらえるケースもあるようです。

とにかく資金を集める

損害賠償金として支払えるだけの現金・預金がない場合には、できる限り資金を集める必要があります。例えば、保有している資産の売却や、銀行や知人からお金を借りるといった方法が考えられます。ただし、知人から借りる場合、金銭トラブルに発展する可能性もあるため、注意が必要です。

たとえ、親しい間柄でも金銭の貸し借りをする際には、客観的な証拠となる借用書を作り、決められた返済スケジュールを守らなければなりません。万が一、返済が滞る際には早めに連絡するなどの心がけも大切です。

自己破産する場合も

どうしても資金が集められない場合には、最終判断として自己破産を選ばざるを得ないケースもあるかもしれません。

ただし、自己破産をすると、財産を差し押さえられたりするなど、後々の生活にさまざまなデメリットがあります。
そのため、自己破産はあくまでも最終手段です。安易な選択は避けるようにしましょう。

例えば、故意または重大な過失により人の生命または身体を害してしまった損害賠償責任は自己破産したからといって支払い義務は免除されません。

重過失で発生した賠償金は一生かけて償うことになってしまうのです。

事故に備えて自転車保険へ加入を

事故に備えて自転車保険へ加入を

近年では、自転車事故による高額賠償金の事例が増えており、全国の自治体では自転車保険への加入を義務付ける方向に進んでいます。

2023年4月1日現在、32都府県において、地方公共団体の条例により自転車損害賠償責任保険等への加入が義務化されています。また、10道県においては努力義務とする条例が制定されています。現在努力義務の自治体および義務化されていない自治体に関しても、今後加入や更新を義務とする可能性が高いです。

注意点は、義務化地域に住んでいる住民でなく、その地域を自転車で運転している人に対して加入が義務付けられている点です。義務化地域で保険に加入していないまま自転車を運転すると、条例違反となり通勤や通学で自転車を利用できなくなることもあるため、気をつけましょう。

自治体によっては、「賠償額が1億円以上であること」「示談交渉が付いていること」など、一定の基準を設け、その基準を満たす「自転車保険」への加入を推奨しているところもあります。
まずは、ご自身の自治体のホームページなどで加入義務について確認してみてください。

自転車保険に加入することで、高額な損害賠償金のリスクを軽減できるほか、自分自身の治療費や入院費などの補償も可能です。加入が義務化されていない自治体でも、賠償額が1億円近くにもなる事故を起こしてしまう可能性があることを理解し、必ず自転車保険へ加入するようにしましょう。

まとめ

自転車走行中の事故で、思いがけず加害者になってしまう可能性は、誰にでもあります。損害賠償金額は、「事故時の状況」「損害状況」「双方の過失割合」などにより決められますが、なかには数千万円から1億円近くの高額賠償金を支払うことになった事例も少なくありません。

自転車を利用する際は、交通ルールやマナーを守って安全に気を配り、また万が一の備えとして必ず自転車保険に加入してください。自転車保険に加入する際に気をつけたいのが、現在加入している保険との重複です。補償内容が重複していると、保険料の負担が増えてしまうので、この機会に保険の見直しも行なうことをおすすめします。

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本記事は2024年8月27日の情報に基づいて作成しておりますが、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。

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