退職給付信託
1.退職給付信託とは
退職給付信託とは、企業が保有する有価証券等を退職給付に充てるために信託し、信託銀行がその有価証券等を当該企業の従業員および退職者等のために管理・運用する信託です。
なお、一定の要件(※)を充たすことにより、退職給付会計基準における「退職給付に充てるために積み立てられた資産(年金資産)」となります。
※要件のうち主なものは以下の通りです。
- 1.退職給付に充てられることが退職金規程等により確認できること。
- 2.信託財産を退職給付に充てることに限定した他益信託であること。
- 3.事業主から法的に分離されており、事業主への返還及び受益者に対する詐害行為が禁止されていること。
- 4.信託財産の管理・運用・処分については受託者が信託契約に基づいて行うこと。
2.退職給付信託の効果
- 1.退職給付会計上の積立不足を補う有効な対応策となります。
- 2.事業主は信託した株式の議決権を引続き行使することができます。
- 3.拠出資産にかかる時価変動の影響を緩和できます。
(拠出資産の時価変動による損益は退職給付会計上、数理計算上の差異として複数年度にわたり償却されます) - 4.受益者にとって、新たな退職給付用の資産が増加します。
3.対象となる資産
(1)時価の算定が客観的かつ容易であり、(2)換金性の高い資産であること。
⇒一般的には上場有価証券、店頭公開株等が該当します。なお、金銭も拠出可能です。
4.その他留意点
- 1.原則として、拠出資産の一部解約・入替えはできません。
- 2.退職給付信託設定時に拠出資産及び年金資産の時価合計額が退職給付債務を超えるような場合、退職給付信託全額が年金資産として認められないことがあります。