独身者の老後資金はいくら必要?内訳・金額の目安と資金の準備方法
公開日:2025/09/09

独身のまま老後を迎えることを考えたとき、「いくら老後資金が必要なのか」と不安に感じる方も少なくありません。
独身者の老後資金に必要な金額は一律ではなく、ライフスタイルや収入・支出の状況によって大きく異なります。だからこそ、早めにライフプランを立て、貯蓄や資産運用などの準備を進めておくことが重要です。
この記事では、独身者が老後に必要とされる資金の目安や、その考え方、具体的な備え方についてわかりやすく解説します。将来に向けた準備として、ぜひ参考にしてみてください。
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元銀行員。若年層から高年層まで幅広い資産運用の提案を行う。メディアを通じて、より多くのお客さまに金融の知識を伝えたい気持ちが強くなり、退職を決意。
現在は、編集者として金融機関を中心にウェブコンテンツの編集・執筆業務に従事している。
- ※りそなグループが監修しています
独身者が準備すべき
老後資金の目安は
どれくらい?
老後資金を考えるうえで、よく話題にのぼるのが「老後2,000万円問題」です。ただし、この金額は高齢夫婦世帯をモデルにした試算であり、独身者には必ずしも当てはまりません。
まずは「老後2,000万円問題」とは何かを簡単に確認したうえで、独身者の場合に実際どれくらいの生活費が必要になるのかを見ていきましょう。あわせて、独身者の平均的な貯蓄額もご紹介しますので、ご自身の備えを考える際の参考にしてみてください。
老後2,000万円問題とは?
「老後2,000万円問題」とは、「高齢夫婦無職世帯では毎月約5万5,000円の赤字が発生し、老後30年間で約2,000万円が不足する」と試算された問題のことです。
2019年に作成された金融庁の報告書に記載されており、一時期話題となりました。
出典:金融庁「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」」
この不足分は、貯蓄や資産運用で補う必要があるとされていますが、試算の前提は夫婦世帯です。独身世帯とは背景が異なるため、独身者も2,000万円が必要になるとは限りません。生活費や貯蓄状況などにより、老後資金は一人ひとり異なる点に注意が必要です。
独身者の老後の平均生活費
では、独身者は老後、どの程度の生活費が必要なのでしょうか。
総務省「家計調査報告」によると、65歳以上の高齢単身無職世帯では、月の可処分所得が11万4,663円であるのに対し、消費支出は約14万5,430円となっています。
出典:総務省「家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要」
このため、月に約3万円の赤字が生じ、老後20年間で約720万円、30年間で約1,080万円不足する計算です。
なお、支出のうち10.5%が教育娯楽費、11%が交際費となっており、節約をしようと思えばできるかもしれません。しかし、生活のなかで大切なものは個々に異なります。ご自身の生活イメージをもとに資金計画を立てることが重要です。
独身者の平均貯蓄額
「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」では、単身世帯の60代・70代の金融資産保有額(保有なし世帯を含む)について以下の結果が示されています。
年代 | 平均値 | 中央値 |
---|---|---|
60代 | 1,679万円 | 350万円 |
70代 | 1,634万円 | 475万円 |
平均値と中央値には大きな差があり、金融資産を多く持つ一部の層が平均値を引き上げている状況です。実際には500万円未満の世帯も多く、老後資金の準備において、格差が大きいことがわかります。
独身の老後資金で
生活費以外に準備すべき
主な費用3つ
老後の生活には、日々の生活費に加えて、介護や住まいに関する費用も必要になります。旅行が趣味であれば、その分の旅費も見込んでおくと安心です。また、健康状態によっては医療費がかさむ可能性もあります。
ここでは、主な生活費以外に想定される支出として、「介護費用」「住宅関連費用」「葬儀費用」の3つを紹介します。それぞれの費用がどの程度かかるのか、あらかじめ把握しておきましょう。
介護費用
独身で老後資金を考える際は、介護が必要になる可能性も考えておくと安心です。
生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」によると、介護の初期費用は平均47万円、月額費用は9万円、介護期間は平均55ヵ月(4年7ヵ月)となっています。これらを合計すると、おおよそ540万円程度かかる計算です。
住宅関連費用
老後も賃貸住宅に住む場合は、家賃の支払いが続くことを考えておきましょう。
一方、持ち家であっても老朽化によるリフォーム費用が発生する可能性もあります。バリアフリー化など住みやすい環境づくりのために費用がかかる場合もあるでしょう。毎年の固定資産税も支払わなければなりません。
老人ホームなどの施設へ入居する場合には、入居一時金や月額費用が生じます。
住まいにかかわる費用は独身の老後資金計画において大きな要素となるため、どのような場所で、どのように暮らしたいのかを考え、早めに準備を進めておくことが大切です。
葬儀関連費用
葬儀費用は内容や規模で変わりますが、家族葬は50万~100万円、一般葬は150万円以上になる場合もあります。
さらに、お墓の購入費用も必要です。鎌倉新書「第16回 お墓の消費者全国実態調査(2025年)」によると、一般墓の平均購入費用は約156万円となっています。
独身の場合に
必要な老後資金を
シミュレーション

これまでの内容を踏まえ、独身者の65歳以降に必要となる老後資金を具体的な数値で試算してみましょう。
男女の収入や生活費の違いは考慮せず、毎月の不足分は3万円、介護費用550万円、住宅のリフォーム費用500万円、葬儀・お墓の購入費用を250万円として計算します。
平均寿命は男性81.09歳、女性87.14歳なので、老後資金は以下のとおりです。
- 男性の場合:約1,880万円
- 女性の場合:約2,100万円
あくまでも一つの目安になりますが、独身の老後資金準備の参考にしてください。
独身者が今からできる
老後資金の準備方法

独身者の老後資金準備は、早めに取り組むと将来の安心につながります。老後は収入が公的年金だけになるケースも多いため、計画的な備えが大切です。
ここでは、今からできる老後資金の準備方法を具体的に解説します。
老後の収支を把握し、
ライフプランを考える
老後資金の準備では、まず老後の収支を把握することが重要です。
老後の主な収入源は公的年金となるのが一般的なため、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で年金の見込み額を確認することからはじめましょう。もし不足が見込まれる場合は、自助努力で備える必要があります。
公的年金は、原則65歳から受取れますが、必要に応じて繰下げるのも選択肢の一つです。繰下げ受給では、1ヵ月遅らせると年金額が0.7%増額されます。75歳まで繰下げると84%増額され、増額率は一生涯変わりません。
加えて、勤務先の退職金制度の有無や金額を把握しておくと、老後資金の見通しが立てやすくなります。
早めに貯蓄を開始する
資産運用をする
老後資金を効率的に増やすためには、資産運用も検討してみてください。ただし、商品によっては元本保証ではないため、必ず利益が出るとは限らない点には注意が必要です。
ここでは、具体的な資産運用の方法として以下3つを解説します。
- NISAやiDeCoで投資信託を積み立てる
- 個人年金保険
- 外貨預金
それぞれ詳しく見ていきましょう。
NISAやiDeCoで
投資信託を積み立てる
毎月一定額ずつ投資信託を購入し、老後資金を準備するのも一つの方法です。
投資信託は、投資家から集めた資金をプロが株式や債券などで運用し、その成果を分配する仕組みで、初心者でも少額からはじめることができます。通常、投資信託の売却益や分配金には約20%の税金がかかりますが、NISAやiDeCoを活用すれば税金がかかりません。
NISAは売却益・配当金・分配金が非課税となる制度であり、2024年からは年間投資枠が拡充され、非課税で保有できる期間も無期限化されました。
iDeCoは自分で掛金を拠出し、選んだ商品で運用しながら老後に備える私的年金制度で、原則60歳以降に年金または一時金として受取り可能です。
どちらも税制優遇があり効率的に老後資金の準備ができる制度ですので、ぜひ活用を検討してみてください。
りそなのNISAやiDeCoでは、長期の積み立てに適した低コストの投資信託で資産運用が可能です。
「つみたてボックス」アプリでは、NISA口座の開設や投資信託の購入が簡単にできるだけでなく、目的や状況などに応じておすすめのコースもご提案します。
個人年金保険
外貨預金
まとめ
独身者に必要な老後資金は、老後の収支やライフスタイルによって一人ひとり異なります。まずは老後の収支を把握しながら、自分がどのように過ごしたいのかを考え、ライフプランを立てることからはじめてみましょう。
もし資金が不足しそうであれば、先取り貯金や資産運用も一つの方法です。自身のライフプランに合わせた資金計画を立て、コツコツと準備を進めていくと、老後に慌てないで済みます。
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本記事は2025年9月9日時点の情報に基づいて作成しておりますが、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。