キャッシュレス社会到来!メリット・デメリットを理解し賢く活用しよう

2018年4月、経済産業省は「キャッシュレス・ビジョン」を発表しました。モバイル決済においては、メガバンク間でも互いにQRコード(2次元バーコード)の規格を統一することで合意。また、銀行以外にもIT系・コンビニ系・通信系企業などが、次々にスマホを使ったモバイル決済事業に参入し、キャッシュレス社会の実現に向けた動きが活発化しています。

しかし、消費者のなかからキャッシュレス決済が「よくわからない」「デメリットがないか不安」といった声が多く聞かれます。すでにキャッシュレス社会という言葉は浸透しつつありますが、実際にはどのようなことをいうのでしょうか。また、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

今回は、キャッシュレス社会の実態とメリット・デメリット、そして、キャッシュレスサービスの種類などもあわせて紹介します。

キャッシュレス社会とは?現金離れが急速に進む日本の経済市場

キャッシュレスとは、支払い・受取りに紙幣・硬貨といった現金を使用せず、クレジットカードや電子マネー、口座振替などを利用して決済する方法のことです。このキャッシュレス化を浸透させたマーケット(社会)のことを、キャッシュレス社会と呼んでいます。

今後さらにキャッシュレス化が加速

最近、キャッシュレス化が進んでいくといわれていますが、実は仕入れや売上げといった企業間での取引では、ほとんど現金取引は発生していません。海外企業とのやりとりも主な決済方法は送金ですから、いわゆるキャッシュレスでおこなわれています。個人の買い物や支払いでも、クレジットカードや電子マネーを利用する人が増えています。また、訪日外国人の支払いの多くはクレジットカードなどでおこなわれており、すでにキャッシュレス社会となっているといえます。

このように、キャッシュレス化は多方面で浸透していますが、経済産業省が公表している「キャッシュレス・ビジョン」によると、それでも、日本のキャッシュレス決済比率は18.4%(2015年)と世界の先進諸国に比べて低い状況です。世界で一番キャッシュレス化が進んでいると言われている韓国では、全体の89.1%がキャッシュレス決済でおこなわれており、2015年時点で韓国人の約10人中9人はキャッシュレス決済をしている状況です。韓国に限らず、世界各国でキャッシュレス化が進んでおり、日本でも2025年までにキャッシュレス決済の比率を40%にまで高める目標を掲げ、官民ともにキャッシュレスに向けた動きを活発化させています。

  • 経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」

2019年はキャッシュレス元年に?

2019年10月の消費増税に伴う景気対策として、2019年10月~2020年6月までの9ヵ月間、ポイント還元制度の加盟店として登録されている店舗で支払いをする際に、キャッシュレス決済をすることで支払額に対して最大5%(一部の加盟店は2%)のポイント還元が受けられる制度により、キャッシュレス化を推し進めています。

2019年9月時点の登録状況を見ると、スーパーマーケット、ドラッグストア、飲食店、パン屋、美容室、眼鏡店、動物病院、ホテルなど、さまざまな業種の店舗がポイント還元制度に登録されています。これまで現金払いしかできないと思っていた店舗や施設でも、キャッシュレス決済導入の動きが進んでいるようです。

キャッシュレス化の動きがますます加速しつつある2019年は、「キャッシュレス元年」と呼ばれるのではないか、そう考える識者も多くいます。

実はすでに使っている?キャッシュレス決済に該当する支払い方法

現金の動きが見えないキャッシュレス決済に、不安を感じる人も多いでしょう。しかし、実は古くから多くの人がキャッシュレス決済を利用しています。たとえば、クレジットカードやSuica、PASMOなどの電車・バスの乗車時に使うICカード(電子マネー)はキャッシュレス決済の代表格ともいえる存在です。

少し古いところでは、テレフォンカード、商品券やQUOカードなどもキャッシュレス決済ですね。また、税金や各種料金の銀行口座引落などもキャッシュレスに該当します。

このように、ひとくちにキャッシュレスといってもさまざまな種類があるのです。「自分の口座からいつお金が出ていくか」というタイミングの違いで見ると、大きく下記の3種類に分けられます。

  1. 1.前払い:事前にチャージしたり、カードを買っておいたりするプリペイド形式(Suicaなどの電子マネー等)
  2. 2.即時払い:購入と同時に口座引落になり支払い完了(デビットカード等)
  3. 3.後払い:定められた指定日に口座引落で支払い(クレジットカード等)

2018年12月ごろから、上記の決済方法以外にもスマートフォンの専用アプリを使うコード読み取り型(QRコード)の決済方法が急速に普及しました。このスマホ決済も、各サービスによって前払い・即時払い・後払いに分かれます。

キャッシュレス化のメリット・デメリットとは?

それでは、キャッシュレス化のメリット・デメリットにはどのようなものがあるのか、それぞれ見ていきましょう。

キャッシュレス化のメリット

  1. 1.現金を使うことで生じる社会的なコストの削減

    紙幣や硬貨の製造、輸送、流通にかかるコストやATM設置コストなど、現金を社会に流通させるためにはさまざまなコストがかかっています。キャッシュレス化で現金の流通量が減れば、コスト削減につながるため、それに伴う人件費も節減できるでしょう。

  2. 2.スピーディーな決済の実現

    レジで紙幣や硬貨を取り出したり、おつりを待つ時間が省略されたり、スムーズかつスピーディーな決済が可能になります。

  3. 3.企業や店舗側の業務効率化

    閉店後の集計の際、現金を数えたり、銀行に入金したりといった現金管理業務が効率化されます。現金が少なくなれば、銀行の夜間金庫に預けに行く必要もなくなるかもしれません。

  4. 4.個人送金など新たなコミュニケーションの醸成

    飲み会での割り勘や社内でのお祝いなど個人間でのお金のやりとりも個人間で送金できるアプリを使用することで、新たなコミュニケーションが生まれるかもしれません。

  5. 5.ベンチャー市場を中心とした経済の活性化

    スマートフォンの決済アプリを中心に、次々と新たなキャッシュレスサービスが普及していくことで、ベンチャー市場を中心に経済の活性化が見込まれるでしょう。

  6. 6.インバウンド消費の高まり

    訪日観光客にとって、滞在期間中、日本円に両替した現金通貨だけで過ごさないといけない場合、買い物や食事にもセーブがかかってしまうものです。しかし、キャッシュレスが普及すれば安心して消費できるため、インバウンド消費が高まることが予想されます。

  7. 7.お金の流れの透明化による不正行為防止および治安向上

    クレジットカードや口座振替を見てもわかるように、キャッシュレス決済では使ったお金の流れがすべて記録されています。お金の流れがすべてわかるということは、不正行為の防止につながり、ひいては治安向上に役立ちます。

キャッシュレス化のデメリット

  1. 1.モバイル決済における個人情報提供問題

    モバイル決済では、プラットフォームとなる企業に支払いに関する情報が届きます。この個人情報を提供することに抵抗を感じる人も多いでしょう。

  2. 2.デジタル格差問題

    高齢者を中心にデジタルに不慣れな人もいます。社会のキャッシュレス化、つまりデジタル化してしまうと、対応できない人にとっては決済手段に困ることが予想されます。

  3. 3.QRコードを悪用した新たな詐欺の蔓延

    外国では、偽のQRコードを作成し本来のQRコードの上に貼付け、消費者が偽物と知らずにQRコード決済することで支払金をだまし取る詐欺が発生しています。日本でも同様の詐欺が起こらないとも限りません。

  4. 4.不正入手したSNSアカウントを使った決済アプリ悪用詐欺

    不正に入手したSNSアカウントを使った「なりすまし」詐欺や、病気と偽って治療費を集める募金詐欺などが外国で発生しています。これらは決済アプリを使って簡単に送金できることを悪用した詐欺です。

キャッシュレスにはさまざまなメリットがありますが、デメリットも多々あります。特に、詐欺などは身近に起こりうる犯罪です。デジタル化が進むことは便利である反面、危険を伴う側面もあるため、サービス提供企業の信頼度等も十分に理解したうえで、キャッシュレス決済を上手に利用していきましょう。

キャッシュレスサービスの使い分け

キャッシュレス決済は、便利なだけではなくATM手数料が節約できたりポイント還元を受けられたりと、お得な点があります。冒頭で3種のキャッシュレス決済方法を紹介しましたが、利用シーンに合わせてうまく使い分けましょう。

  1. 1.デビットカード

    デビットカードは購入と同時にご利用額が口座引落になり、支払いが完了する即時払いタイプのキャッシュレス決済です。口座残高以上は利用できないため、使いすぎる心配がありません。とはいえ、お金の動きが見えないことにキャッシュレスの不安を感じている人もいるのではないでしょうか。そんな人は普通預金口座残高を確認できるアプリがオススメです。いつでもどこでも口座残高や利用明細が確認できると、安心して利用できます。
    また、キャッシュカードと一体となっている場合は、ATMでの入出金利用はもちろん、国内外のVISA加盟店でデビットカードとしての支払いができるほか、海外旅行では、海外のATMから現地通貨を引出すことも可能です。

  2. 2.クレジットカード

    クレジットカードのほとんどは、利用額に応じてポイントが貯まるようになっています。デビットカードと比較すると、後払いであることから高額な買い物の際に利用する等、使い分けができます。
    また、クレジットカードには海外旅行傷害保険やショッピング保険などが付帯していることが多く、万が一の事態に備えることができます。

  3. 3.各種ペイアプリ

    PayPay(ペイペイ)やメルペイ、LINEペイなどの各種ペイアプリは、現金やカードを取り出すことなく、QRコード・バーコードを読み取って支払いができるモバイル決済機能付きのアプリです。銀行の口座を紐づける場合もあれば、デビットカード・クレジットカードを紐づけることができるものもあります。
    また、アプリ自体で「前払い」「即時払い」「後払い」という支払い方法が選べるものもあります。その時の状況に合わせてうまくコントロールしていきたいですね。

まとめ

政府は、2025年までに日本のキャッシュレス決済の比率を40%にまで高める目標を掲げ、官民ともにキャッシュレスに向けた動きを活発化しています。

キャッシュレス決済に不安を感じ抵抗のある人もいるかもしれません。しかし、すでにクレジットカードや交通系ICカードなど、さまざまなキャッシュレス決済は日常生活に浸透しています。キャッシュレス決済には前払い、即時払い、後払いの3種がありますから、それぞれの特徴を知り、自分に合うものを使い分けしていきましょう。

本記事は2019年9月時点の情報に基づいて作成しておりますが、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。

續 恵美子(つづき・えみこ)
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保有資格:
日本FP協会認定CFP(R)

生命保険会社にて15年勤務したあと、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。