金融機関21社、環境・社会課題解決を目指す「インパクト志向金融宣言」に署名
2021年11月29日
インパクト志向金融宣言
署名金融機関一同
本日、下記の金融機関21社(以下、「署名機関」)は、「インパクト志向金融宣言」(以下、「宣言」)に署名しました。宣言においては、民間金融機関が組織の目的として、投融資先の生み出す環境・社会への変化(以下、「インパクト」)をとらえて環境・社会課題を解決するという考え方(インパクト志向)を持つことを前提に、創出されるインパクトを測定・マネジメント(以下、「インパクト測定・マネジメント(IMM)」)を実施したうえでの投融資判断を推進するために、署名機関が互いに連携して活動していきます。
環境・社会課題が山積する現在、政府・自治体・国際機関による公的資金への依存は限界に達しつつあり、課題解決には民間の投融資資金を適切に活用することが不可欠です。このような状況のもとで、署名機関は、様々な課題解決に向けて金融が本来持っている潜在力を最大限に発揮するために、金融機関がその存在意義として明確なインパクト志向をもつことと、個々の投融資活動においてインパクトの可視化とその最大化に向けたマネジメントが重要であると考えました。一方、日本におけるこれらの取り組みはまだ始まったばかりであり、より大きな活動として成果を生み出すためには、まずはインパクト志向をもつ金融機関がその取り組みや課題を共有したうえで、この活動の水準を質量ともに引き上げていくことが大事であり、並行して、海外での先進的な取り組みや主な国際的な団体・イニシアティブとも連携し、かつ日本からも対外発信していく必要があると考えています。
署名機関21社は、各機関においてインパクト志向の投融資およびインパクト測定・マネジメント(IMM)を実施するだけでなく、署名機関が定期的に集まり、ベストプラクティスや推進上の課題を共有しながら議論を行い、日本の金融業界がインパクト志向の投融資を自律的・持続的に発展させることができるよう努める方針です。
<署名機関一覧>(五十音順)
アセットマネジメントOne株式会社 | 東京都千代田区 | 取締役社長 菅野 暁 |
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ANRI株式会社 | 東京都渋谷区 | 代表取締役 佐俣 アンリ |
株式会社環境エネルギー投資 | 東京都品川区 | 代表取締役社長 河村 修一郎 |
株式会社キャピタルメディカベンチャーズ | 東京都港区 | 代表取締役 青木 武士 |
京都信用金庫 | 京都府京都市 | 理事長 榊田 隆之 |
グローバル・ブレイン株式会社 | 東京都渋谷区 | 代表取締役社長 百合本 安彦 |
株式会社静岡銀行 | 静岡県静岡市 | 取締役頭取 柴田 久 |
株式会社新生銀行 | 東京都中央区 | 代表取締役社長 工藤 英之 |
第一勧業信用組合 | 東京都新宿区 | 理事長 野村 勉 |
第一生命保険株式会社 | 東京都千代田区 | 代表取締役社長 稲垣 精二 |
但馬信用金庫 | 兵庫県豊岡市 | 理事長 森垣 裕孝 |
日本ベンチャーキャピタル株式会社 | 東京都千代田区 | 代表取締役社長 多賀谷 実 |
Beyond Next Ventures 株式会社 | 東京都中央区 | 代表取締役社長 伊藤 毅 |
フューチャーベンチャーキャピタル株式会社 | 京都府京都市 | 代表取締役社長 松本 直人 |
プラスソーシャルインベストメント株式会社 | 京都府京都市 | 代表取締役社長 野池 雅人 |
三井住友トラスト・ホールディングス株式会社 | 東京都千代田区 | 取締役執行役社長 高倉透 |
株式会社三菱UFJ銀行 | 東京都千代田区 | 取締役頭取執行役員 半沢 淳一 |
三菱UFJ信託銀行株式会社 | 東京都千代田区 | 取締役社長 長島 巌 |
リアルテックホールディングス株式会社 | 東京都墨田区 | 代表取締役 永田 暁彦 |
株式会社りそなホールディングス | 東京都江東区 | 取締役兼代表執行役社長 南 昌宏 |
立命館ソーシャルインパクトファンド投資事業有限責任組合 | 京都府京都市 | 野池 雅人 |
<賛同機関一覧>(五十音順)
国内
独立行政法人国際協力機構 | 理事長 北岡 伸一 |
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一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ | 代表理事 今田 克司 |
一般財団法人社会変革推進財団 | 理事長 大野修一 |
GSG国内諮問委員会 | 委員長 小宮山 宏 |
株式会社日本取引所グループ | 取締役兼代表執行役グループCEO 清田 瞭 |
海外
Global Impact Investing Network | CEO Amit Bouri |
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Global Steering Group for Impact Investing | CEO Cliff Prior |
りそなホールディングス 取締役兼代表執行役社長 南 昌宏のコメント
インパクト志向は、投融資先企業が持つ社会課題を解決するという志に共感し、金融機関が企業のイノベーション、グッドビジネスを伴走型で支援する取り組み。インパクト志向の普及に向け、まずは当社自身が「あるべき社会、ありたい姿」を社会に伝えていくこと、投融資先企業との対話を通じて自らが実例に学び、これまで以上に対話を深堀、進化させること、投融資先の事業活動と社会インパクト創出の因果関係を明らかにし、社会課題解決に向けた取り組みが企業の持続可能性を高めうるものであることを理解し、企業とともに協働していくこと、そしてインパクト志向を通じて、当社はよりよい豊かな社会の実現に向けて取り組んでいくことを約束したいと考えています。
参考資料「インパクト志向金融宣言」
前文
深刻化する地球温暖化問題、達成が危ぶまれる持続可能な開発目標(SDGs)、コロナ感染危機によってあぶり出されたデジタル化・医療制度改革の遅れなど、内外の環境・社会課題は山積となっている。こうした課題の解決に向けて、政府・自治体・国際機関による公的資金に依存した対応には明らかな限界があり、民間資金による投融資が不可欠である。このためには、金融機関が企業活動のもたらす環境・社会への変化(以下「インパクト」という)に着目し、投融資先である企業の生み出すネガティブインパクトを削減することおよびポジティブなインパクトを創出する双方の活動が求められている。
このため、環境・社会課題解決に取り組んでいる企業の活動のインパクトを可視化しながら、企業が生み出す追加性のあるインパクトが持続するように投融資による支援をすること、あるいは、革新的な技術開発やビジネスモデルを伴う事業にリスクマネーを供給することなどを通じて、積極的に課題解決を目指す企業へ民間の投融資資金を振り向けることが不可欠となっている。企業のこうした事業活動によってもたらされるインパクトは、当該事業の持続可能性を高め長期的な企業価値の向上にも資するものであって、収益力の向上とも両立しうる。但し、その両立や持続可能性を維持することは必ずしも簡単ではなく、その実現のためには企業側の堅牢で実効性の高いビジネスモデルの構築と、金融機関側の高い事業性評価能力、対話能力、商品組成能力が不可欠である。その意味で、かかる課題解決型事業の推進に向けた資金循環を作りだすためには、企業と金融機関による共創的な取り組みが不可欠である。
こうした我が国社会の要請に対応して、各金融機関は自らの存続にかかる持続可能性を問うたうえでその存在目的を再認識もしくは見直ししたうえで、経営者の意図として、その組織において包括的にインパクトをとらえて社会・環境課題解決に導くという考え方(以下「インパクト志向」という)を持つこと、もしくはこれまで以上に高めていくことが求められている。同時に、インパクトのある企業に民間資金を動員するためには、対象となる投融資が生み出すインパクトの測定・マネジメント(Impact Measurement and Management、以下「IMM」)を通じて創出されるインパクトに関する情報の適切な可視化とマネジメントを伴うインパクト志向の投融資を提供する必要がある。インパクト志向の投融資の実践において、IMMの在り方については、これを担う金融機関の属性や企業側の制約に応じて、適切かつ現実的に考える必要があり、今後はIMMの実践が不可欠である。また、インパクト志向の投融資は既に海外市場でより高い水準で実践されており、海外から既に多額の資金を取り入れている我が国としては、国際的に開発され進化をとげている原則・基準を準拠もしくは参照しながら、海外の推進機関・団体とも密接に連携・協力して、インパクト志向の投融資の推進活動を進める必要がある。
金融機関のインパクト志向の追求とIMMの実践に向けた取り組みは、我が国の金融業界が必要とする重要な変革作業であり、各金融機関の経営者のリーダーシップが不可欠である。金融機関が扱う資金の流れを可能な限りインパクト志向へと変革させ、環境・社会課題を自律的に解決しうる持続的な資金循環を生みだすことが必要であることから、自らの組織のみならず署名機関で横断的に以下の行動を実践する。
本文
- 1.金融機関が社会から期待されている役割を果たすためには、その経営においてインパクト志向を持つことの重要性を理解しており、インパクト志向の投融資※1を各参加金融機関において実践するように取り組んでいく。
- 2.金融機関がその投融資活動を通じて生み出すインパクトを可視化し、投資戦略や投資判断に活用しインパクト創出に向けた努力を継続することが必要であると考えており、IMM※2を伴う投融資活動や金融商品の提供を推進する。
- 3.以上の取り組みに関して、それぞれの組織の状況に応じて自らの計画を策定したうえで、実践されたベストプラクティスや推進上の課題を署名者間で共有・議論することを通じて、この活動が持続的に発展できるように運営していく。
- 4.IMMの質の向上やインパクト志向の投融資の量的拡大に向けて、署名金融機関のワーキングレベルで、意見・情報交換および必要な調査研究など、協調的な活動を行っていく。
- 5.本宣言に参加していない金融機関を含む我が国の金融業界全般にインパクト志向の金融機関経営の在り方やIMMの取り組みが波及していくように協調して活動を行う。
- 6.海外で取り組まれているインパクト志向の投融資やIMMの推進にかかるイニシアティブに意欲的に参加し、国際的なインパクト志向の投融資の推進に貢献するとともに、我が国からの発信を積極的に行っていく。
- 7.この活動を、我が国金融業界が、自律的にインパクト志向の投融資を持続的に発展させることができるようになるまで継続する。
- ※1ここで言う「インパクト志向の投融資」とは、GSG国内諮問委員会の定義する「インパクト投資」と同義である。融資・債券・上場株式・未公開株式などあらゆる金融形態を含む。
- ※2「インパクトの測定・マネジメント(IMM)」とは、金融機関がその投融資活動を通じて生み出すインパクトを測定して可視化するとともに、戦略の策定や投資先とのエンゲージメントを通じて創出されるインパクトを管理することを言う。