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Vol.95 相続分の修正変更【特別受益者の相続分】

Q

私は、父親から私立の医科大学卒業までの学費を出してもらい医師になりましたが、父親に相続が発生した場合、相続発生時の財産をベースに法定相続分までは財産取得を主張することができるでしょうか。

Aさん 32歳 男性

A

 Aさんは、相続に関する一般的な知識をお持ちのようですね。問題は相続発生前に、世間的には高額とされる私立の医科大学の学費の援助を受けたことが、その後の相続にどのような影響をあたえるかということです。Aさんの場合に当てはめると具体的にどのように影響があるのかを考えていきましょう。

特別受益の考え方

 まず、特別受益の考え方をご説明致します。相続人の中に、被相続人から遺贈や結婚や養子縁組のために贈与を受けた者、その他生計の資本として贈与を受けた者を特別受益者と呼びます。生計の資本としての贈与とは、生活を立てていく上での基礎として役立つような財産上の給付をいいます。
 こうした遺贈や生前贈与を考慮せずに法定相続分に従って遺産を分割したのでは相続人間の公平が図れなくなります。そこで、遺贈や生前贈与により取得した財産を相続財産の前渡しと考え、その相続財産に加えて(これを財産の「持戻し」といいます。)相続分を計算することによって、相続人間の公平を図ります。(民法903条1項より)
 通常、特別受益に該当するものと該当しないものについては、以下のような例です。

●特別受益に該当するもの

・結婚、養子縁組の持参金や支度金
・大学以上の学費
・不動産
・高額な金銭の贈与 等

●特別受益に該当しないもの

・挙式費用、結納金
・高校までの学費
・生命保険金
・少額な金銭の贈与 等

 一般的には、Aさんの医科大学の学費は、「生計の資本としての贈与」となります

学費について

 高等教育、留学等のために被相続人が支出した費用あるいは被相続人から贈与された金額が該当します。被相続人の生前の資産状況、社会的地位に照らし、相続人に高等教育を受けさせることが扶養の一部であると認められる場合には、特別受益に当たらないとされます。また、他の共同相続人との比較により共同相続人全員が同程度の教育を受けていた場合にも特別受益に当たりません。
 今回の場合、Aさんのみが医科大学の学費援助を父親より受けている場合は財産の前渡しとみなし、学費分を特別受益として持戻して計算しないといけません。しかし、最終的には、他の共同相続人の状況や父親の社会的地位等を考慮して判断することになります。もし、Aさんの父親が開業医で、他の相続人に父親が開業している医院を引継ぐ者がいなく、父親にAさんへ引継がせたいとの思いがある場合は、特別受益に該当しないものとされます。

持戻し免除について

 被相続人が遺留分(相続人に保証されている相続財産の一定の割合)に関する規定に反しない範囲内で遺贈又は贈与の持戻しをしなくてもよい旨の意思表示することが持戻し免除の意思表示といいます。(民法903条3項より)その方法は特別な方式を必要としません。明示・黙示の意思表示、生前贈与、遺言のいずれでもよいのです。持戻し免除の意思表示は、被相続人に対し特定の相続人に相続分のほかに特別の利益を与える権限を認めるものであり、共同相続人間の公平よりも、被相続人の意思を優先させるものです。被相続人が、わざわざ特定の相続人に贈与ないし遺贈をするのは当該相続人に利益を与える趣旨であることで十分です。父親からAさんへの学費援助が仮に特別受益に該当するとしても、こうした持戻しの免除により、父親の意思を優先させるものとして他の相続人の遺留分を侵害しない範囲で、特別受益の持戻しは必要ないものと考えられます。

生命保険金は特別受益となるか

 その他相続対策として活用される生命保険金も持戻しの対象となる場合がありますのでご説明します。
 被相続人の死亡を保険事故とする生命保険請求権は受取人と指定された者の固有の権利であり、相続財産に含まれないとされています。被相続人と保険会社との間の契約に基づき受取人が保険会社から受取るもので、民法の規定する特別受益に当たらないとも言われています。しかし、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が到底是認することができないほど著しいものであると(当該保険金の額が遺産総額と比べて、とても大きいなど)評価すべき特段の事情がある場合には、特別受益に準じて持戻しの対象となります。

最後に

 ひとえに、特別受益に該当するかどうかは、被相続人の贈与の動機、資産背景や社会的地位、受益者と他の相続人との公平性、他の相続人が受けた贈与の内容など個別具体的・総合的に勘案して判断されるものです。詳細は法律・税務の専門家にご相談ください。

(注意事項)

税務の詳細につきましては、所轄の税務署や税理士等の専門家にご相談ください。

(2016年8月現在)

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今回の回答者
りそな銀行ファイナンシャルプランナー 杉田 圭太郎氏
1991年入社。営業店勤務を経て、大阪本社勤務。1級FP技能士。
 
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