養子縁組とは、血縁の親子関係のない者同士を法律上の親子関係にすることです。また、養子縁組には、「特別養子」という制度もありますが、ご質問の主旨からして「普通養子」についてのご質問かと思われます。普通養子は縁組後、養子と実の親、実の親族との関係には何ら影響はありません。養子は実親との関係が切れず、養子の立場からみれば、実の親子と同じ二重の親子関係となる縁組のことを言います。したがって相続上では養親の相続人にもなりますし、実の親の相続人にもなります。
養子縁組を結ぶことによるメリット
@ 相続税
養子縁組をする事により、法定相続人の数が増え、相続税計算上次の控除額が拡大します。
a. 遺産に係る基礎控除額(5000万円+1000万円×法定相続人の数)
b. 生命保険金額の非課税金額(500万円×法定相続人の数)
c. 死亡退職手当金の非課税金額(500万円×法定相続人の数)
そして相続税の計算は法定相続人が仮に法定相続分を取得したものとして、相続税の税率を乗じ、その後合算して相続税の総額を計算します。相続税は超過累進税率であるため、法定相続分の割合が下がる場合には、相続税の減少に繋がります(ただし孫を養子にしていた場合は孫の相続税が2割加算されます)。
A 登録免許税
相続、または遺贈(遺言により法定相続人以外の第三者に財産を与えること)などにより不動産(土地や建物等)の移転登記等を受ける者は登録免許税を納める義務があります。この登録免許税は取得原因によりその適用税率が異なります。相続人以外の者が所有権の移転登記をする場合は、相続人として所有権の移転登記をする場合と比べて割高になります。そこで、孫と縁組後の相続の際、相続人として移転登記をすれば登録免許税は軽減されます。
B 不動産取得税
不動産の取得に対し、当該不動産の所在都道府県において、当該不動産の取得者に課税されます。しかし相続による不動産の取得は形式的な所有権の移転であり、不動産取得税を課税しないこととされています。相続人でない孫へ不動産を遺贈する場合には、孫に対して不動産取得税が課税されることになりますが、孫との養子縁組の後、その孫に対し不動産を相続させる場合、不動産取得税は課税されません。
ここまでは養子縁組をすることによる税法上のメリットに着目してきましたが、デメリットも合わせ検討する必要があることはいうまでもありません。
養子縁組を結ぶことによるデメリット
@ 養子の名字がかわる場合がある。
養子縁組を行うと民法上「養子は養親の氏を称する」ことになっています。つまり養子縁組をして、孫を養子にした場合、その孫は養親である祖母の氏に改姓しなければならなくなります。孫の名字が現在異なっている場合は、縁組後名字が変わることでどのような問題が生じるか、検討する必要があります。
A その他の相続人に理解が得られず「いさかい」の原因になったり、「争族」になる場合がある。
養子縁組を結ぶことにより、養子には実子と同様の権利が生じることになります。本ケースにおいては長男、次男や長女と同じく相続権や遺留分の権利が発生します。そのため事前に、利害関係が生じるご家族とも十分協議し理解を得ておく必要があると考えられます。
最後に、手続上は縁組のみでなく、離縁も可能ですが、双方の合意が必要など、当事者間の精神上の問題になることもあります。
養子縁組は節税上の観点に目を奪われることなく、慎重に検討したいものです。
実際の養子縁組判断につきましては、専門家やご家族とも十分にご相談頂ければ幸いです。
(2010年1月現在)
|